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2005年12月15日 (木)

A級戦犯合祀-政府、国会がなすべきこと

 10月の小泉首相靖国参拝後に放送されたNHKのハイビジョン特集「靖国問題 戦後60年の軌跡」の再放送がありました。問題を多角的に捉え、異なる立場の両方の声をとりあげた良い番組だったと思います。

 心を打たれたのはニューギニアでBC級戦犯の判決を受けて服役した経験を持ち、「名誉回復」を喜んでいいはずの飯田進さんが話す「(靖国に祀られる一部の人は)本当に殉国の英雄で、遺徳を顕彰される立場なのか」「飢えて死ぬ兵は軍の中枢、参謀を恨んで死んだのに『殉国の英霊』では責任がぼかされる」という重いことばでした。

 番組では、戦後60年の靖国神社についての経緯を背景も含め丁寧にたどりました。靖国神社の合祀は、昭和61年度まで旧厚生省が靖国神社の照会に答えるという形で「祭神名票」を送付し、靖国神社が合祀を決定するという段取りで行われていたそうです。

 このこと自体が憲法の政教分離の原則に違反しているのではないかという指摘はかねてより行われてきましたが、岸信介元首相(東条内閣の閣僚としてA級戦犯容疑者、安倍晋三官房長官の祖父)らの運動が実り、昭和34年から旧厚生省によるB・C級戦犯の祭神名票の送付が「平和条約第11条関係合祀予定者」として始まり、昭和41年2月についにA級戦犯を含む「祭神名票」が神社に送られたそうです。

 神社側は靖国神社国家護持運動における国民の反発を心配して合祀決定を先送りしていたものの、昭和49年に同法案が廃案となり、いよいよA級戦犯の合祀を決定し、運動の力点を「総理の公式参拝」に移しました。

 A級戦犯合祀を正当化する根拠は、ひとつには一般的に「合祀」判定の基準の一つに「軍の行動に積極的に協力する『公務死』である」ということがあり、独立回復後の昭和27年制定の軍人・軍属の戦死者遺族への国家補償を定めた「戦傷病者戦没者遺族等援護法」が昭和28年に改正された際に、連合国による裁判の刑死者なども補償の対象に加えた、つまりこれらの人々も公務死と認めたと解釈できることにあるとされています。国権の最高機関である国会が「刑死者も公務死」と認定し、国内法で戦死者と同じ扱いになったというわけです。

 このことを、いま我々はどう考えるべきでしょうか。援護法の対象となったことは合祀の基準の一つである必要条件を満たしたにすぎないのだと思います。それだけでは十分条件ではない。そもそも私は、この改正の趣旨はもともと「BC級戦犯と言ったって、いい加減な裁判でぬれぎぬだった人もいる。運が悪かっただけの刑死者の残された家族はかわいそうじゃないか」ということだったのではないかと思います。

 私は、この際国家として「東京裁判を否定するものではない」、「あの戦争で行った日本軍の行為の多くが侵略だったことを否定するものではない」という意思を明確にするために、「A級戦犯の刑死者はこの援護法の適用から外す」ことを内閣が決定して靖国神社にも通知することが良いと思います。通知なら、前もやっていたわけですし、前のが違憲でないなら、今度のもそうでしょう。あるいは以下の条文について「極東軍事裁判においてA級戦反として有罪判決を受けたものを除く」とする法改正を行うべきではないでしょうか。自民党、民主党の心ある人々、日本共産党や社会民主党には、そのような取り組みをぜひ求めたいと思います。

 それで靖国神社が態度を変えることはないかもしれませんが、日本政府として、あるいは国会として、最低限の筋を通すことにはなると思います。こういう問題は「極東裁判で東条英機以下が処刑されたのだから」「新憲法で軍隊もなくしてしまったんだから」ということで大目に見てこられたのかもしれませんが、「近隣諸国の抗議を『わからない』と言い募っての総理の参拝」「憲法9条改正案の自民党案発表」と状況が変わっているのですから、「それならこういう問題はきちんとしておくべきだ」というのが私の立場です。

【以下、戦傷病者戦没者遺族等援護法の昭和28年改正の付則より】

20 日本国との平和条約第十一条に掲げる裁判により拘禁された者(以下「被拘禁者」という。)が、当該拘禁中に死亡した場合(被拘禁者が軍人軍属であつた在職期間内に公務上負傷し、又は疾病にかかり、これにより当該拘禁中に死亡した場合を除く。)で、かつ、厚生労働大臣が当該死亡を公務上の負傷又は疾病による死亡と同視することを相当と認めたときは、その者の遺族に遺族年金及び弔慰金を支給する。この場合においては、改正後の戦傷病者戦没者遺族等援護法の規定による遺族年金及び弔慰金(第三十四条第一項の規定により支給するものをいう。)に関する規定を準用する。

(出典は以下です)

http://law.e-gov.go.jp/fs/cgi-bin/strsearch.cgi

(28年8月改正については)

http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_houritsu.htm

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