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2006年1月25日 (水)

「格差拡大は見せかけだけ」という政権の操作的発信

 内閣府が「格差拡大は見せかけ」との見解を出し、小泉総理もその線で国会答弁などを続けていますが、これはおかしいと感じた人が多いと思います。昨日のNHKラジオ第一放送の内橋克人氏の発言を、自分用に字にして見ました。ご参考までに紹介したいと思います。

 以下は放送を録音して字にしたもの、文責・森田です。

 「格差拡大は見かけだけか」内橋克人氏(評論家)による 2006年1月24日「ビジネス展望」(NHKラジオ第一放送,6:43分頃~)での発言

 アナウンサー 昨夜東京地検特捜部はライブドアの堀江社長ら4人を証券取引法違反の疑いで逮捕したわけですけれども、今日のテーマ「格差拡大」ということもこの問題と関係するところがありますか。

 内 橋 大いに関係があると思いますね。日本の若い人の中には、まだ堀江氏を尊敬しているとテレビのインタビューで答えている人がいますね。こういう見方に対して3点ばかり指摘しておきたいと思います。

 まずイギリスの『フィナンシャルタイムス』という経済紙がこういうことを言っています。「堀江氏は旧体制を破壊しようとして復讐を受けた」と。この解釈は間違いだと思います。彼が破壊しようとしたのは旧体制ではなく、むしろ旧体制と手を結んで「市場の健全な発展性」そのものを傷つけた。「実」の経済ではなくて、「虚」の経済の典型であったということが言えると思います。

 2番目に現政権、小泉政権の責任も大きいと思います。昨年の選挙の時に金融担当大臣が熱狂的な支援をしたわけですね。あるいは幹事長もそうですが。総理が「若者の模範である」というようなことまで言っていますがいったいどこを見ていたのか。当時から彼の商法には様々な問題点が指摘されていました。

 3番目に「アメリカでは何でも自由だ」と言っている人もいるが、そんなことはないわけで、例えば証券取引委員会は非常に厳しい規制をひいているわけですね。90年代には矢継ぎ早にレバリッジド・バイアウトという企業乗っ取りの方法を規制する法律を相次いで成立させています。

 政治というものはいったい「正当な労働の対価とは何か」ということを示すということでなければならないと思うのですけれど、逆にこういったマネーゲームを煽ってきた小泉政治、その陰がいま暴き出されたと言えるのではないかと思います。

  アナウンサー 内閣府は先週末の月例経済報告の閣僚会議で最近よく取り上げられる「所得格差拡大説」について「格差の拡大は数値の見かけ上の問題だ」と言う見解を明らかにしたわけですけれども。 

 内 橋 これもいま述べたことと大いに関係があるんですけれども、「『構造改革』が格差拡大を加速しているのではないか」という声が高まっているわけですが、それに反論させたわけですね。多分に政治的意図が感じられます。

 内閣府の見解というものはジニ係数を用いているんですね。ジニ係数というのは「全員の所得が同じ場合」には「ゼロ」、「一人が全ての所得を独占する状態」は「1」なんです。ですから数値が高いほど所得再配分が行われなくて、格差が大きいことを示すんですけれども、このジニ係数を使ってその中味を説明しているわけです。

 第一に「もともと所得格差の大きい高年齢層の世帯が増えた」からジニ係数が上がったんだ、つまり社会の高齢化に原因があるんだと言うんですね。二番目に「核家族化が進んだ」と。所得の少ない単身者世帯が増えたから、格差が出てきたんだと。さらに「人々の中流意識はほとんど変化していない」とこういうことを述べているわけです。

 これはもちろん、構造改革への批判に対して反論したものでありますけれど、昨日も国会におきまして小泉総理がこれとそっくり同じことを言っております。数値の上では格差拡大は証明されていないということを仰ってますが、これは呼応したもので、何か政治的な意図が感じられると思うわけです。

 アナウンサー こうしたことはどう受け止め、どう判断したらいいんでしょう。

 内 橋 当然ながら強い反論があるわけです。現実に生活者の実感から見ても、大きなクエスチョンマークがつくんではないでしょうか。 例えば日本政府による「ジニ係数」とは別に、経済協力開発機構(OECD)も「ジニ係数」の数値を発表していますが、そちらではそもそも計算の根拠として内閣府が言っているような核家族化の影響によって左右されないように、そうした影響分を除いて計算しているんです。

 こちらの方が実態に近いと言えると思いますが、そのOECD加盟国の平均は「0.309」なんですが、それに対して日本は「0.314」なんです。これは2004年発表の数字ですが、ジニ係数は日本においては相当に高い。格差の所在と拡大傾向を示しており、私たちの実感により近いと思います。

 公明党の神崎代表が「格差拡大は明らかだ」と内閣府を批判していますね。現場の状況をしっかり把握しないと、有効な政策を打てないと強調しておりますけれども、その通りだと思います。

 アナウンサー 会議の出席者から「直近の1~2年のデータがない」などの指摘もなされたようですが。 

 内 橋 そうなんですね。ここ数年とりわけ格差が激しくなっているんですけれども、その数値が無いわけです。マクロの数値だけをもてあそぶ傾向が強まっているということに危機感を持たざるを得ません。単なる「格差」というのではなくて、「格差拡大社会」とか、あるいは「人間の生存リスクに格差がある」ということを私などは早くから指摘してきたつもりですが。

 内閣府はもともと経済企画庁ですが、当時の『経済白書』が小泉政権以降『経済財政白書』に変わり、それまでの伝統ある客観性を放棄して、客観的な分析よりも「改革の成果」を強調する、政権のPRメディアになったという批判が経済学者やジャーナリズムから出ています。

 格差拡大は明らかでして、一例として『法人企業統計年報』をとりますと、一人あたり人件費ですね、これが資本金の規模別に大いに違います。例えば資本金10億円以上の大企業の人件費一人あたり740万円。これは97年から2003年までの間にわずか1パーセントしか下がっていない。 ところがそれに対して資本金1000万円以下の零細企業になりますと、一人あたり人件費わずかに270万円なんですね。それも同じ期間の間にマイナス15パーセントです。

 アナウンサー この開きは大きいですね。

 内 橋 そういうことですから、もともと給料の低い零細企業ほど長期不況の下で大きく賃金低下に見舞われている。こういう事実一つで、他にももっとたくさんのデータもありますが、こういうことを無視して「格差拡大は見かけだけだ」というのは納得しがたいと思うわけです。

 アナウンサー 新しい貧困層ということが言われる一方で、新富裕層と言われる高額所得層も増えているようなんですが、どうなんでしょう。

 内 橋 いまや富裕層向けの様々な銀行の商法が花盛りと言われてますね。「世界の億万長者の6人に一人が日本人」だというのも現実です。一方「働く貧困層」が増えているのも現実で、絶対数も増えています。  

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