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2006年6月 3日 (土)

松本重治『昭和史の一証言』(たちばな出版)

今から20年ほど前に毎日新聞社から出版された、國弘正雄氏氏によるインタビューの翻刻版。ロベール・ギラン『アジア特電』などと並んで、若いジャーナリストや政治家志願者に特に勧めたい本だ。

やはり読み進めるごとに「失われた機会」を嘆く気持ちを抑えられない。例えば近衛文麿首相は日中戦争の長期化を自らの責任と自覚し、主観的にはアメリカとの戦争を回避するために努力したことが知られる。

しかし、最初に首相に就任したばかりの時に起こった廬溝橋事件の際に、内地から大部隊を派遣する閣議決定を行ったことは日本の運命を変えた。経験不足であったと言えばそれまでだが、近衛を起用した重臣たちも責任を免れない。

対米戦争回避の思いは主観的には強かったにせよ、「南部仏印(ベトナム)進駐」が、アメリカに対日戦争不可避を判断させる決定的な要素になることをあらかじめ理解出来なかったことも決定的失策といえよう。

極東軍事裁判起訴を目前にした自決は、昭和天皇に近すぎる自分が訴追され、公判の対象になること自体が国体護持の妨げになるという判断も主観的には立派なことなのかもしれないが、靖国神社がその近衛を祀っていることは、首相による靖国参拝を(筋道立てて考えるならば)不可能にしている。

ただし、救いは「機会」は失われているばかりではないということだ。戦後、同盟通信を退いた松本氏が刊行していた『民報』社説のGHQ草案「誤訳」の指摘により、日本国憲法の天皇条項の政府案は「(その地位は)主権の存する日本国民の総意に基づく」と修正され、国民主権の規定が明確になったそうだ。

活かされた「機会」もあるのである。いつも目を覚まして、出来得ることをやっていかなければならない。

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