« 米印原子力協定支持表明「保留」方針の報道 | トップページ | 小泉首相のテネシー州プレスリー邸訪問は、ブッシュ共和党の中間選挙キャンペーンの片棒かつぎ »

2006年6月26日 (月)

日米首脳会談-寺島実郎氏の「本来はこう考えるべき」と言う意見(NHKラジオ「ビジネス展望」より)

先週金曜日朝、NHKラジオ第一放送で寺島実郎氏が近く行われる日米首脳会談について話しておられた内容に共感し、録音をメモに起こした。以下、ご参考までに貼り付けたい。

■NHKラジオ第1放送
 ラジオ朝いちばん「ビジネス展望」(6:43頃)より
 2006年6月23日(金)
 「近づく日米首脳会談」
 出演:寺 島 実 郎
 

 アナウンサー 小泉首相が訪米し、日米首脳会談が29日開かれます。
 寺 島 いよいよ来週ということになってきたんですが、これを機会に、日米関係に関心を持つ日本人として「ふたつの数字」ということをまず申し上げておきたいんですね。日本人としてまず認識しておくべきことという意味なんですが。
 まず、イラク戦争での米軍の兵士の死者が17日現在なんですがついに2,500人を超えて、2,502人になったって言うんですね。あのサダム・フセイン像を倒して、イラク戦争に「勝った」って宣言したときに138人だった戦死者が、あのあと2,364人も増えたっていうことなんですよね。                                       
 アナウンサー そうですよね。
 寺 島 この数字っていうのはアメリカが9月11日の事件で失った犠牲者の数に近づいているわけですね。イラク人の死者は4万人を超えて途方もないことになっているわけです。
 イラク戦争っていったい何だったのかということを考えなければいけないくらいですが、「大量破壊兵器」といったものもブッシュ大統領自身が認めたように誤った情報によるものだったということになり、「イラクの民主化」って言ってみたけれども、シーア派主導の政権というものが出来はじめて、アメリカにとって思うに任せぬ状況にどんどんはまっていっていることも確かなんですね。
 つまり「泥沼化するイラク」というものを象徴するのが、この2,502人という数字なんですね。 
  アナウンサー はい。
 寺 島 もうひとつは「日米貿易」に関する数字なんですけれども、昨年の日本の貿易統計が出てきて、日本の貿易総額に占める米国との貿易の比重が、おととし「2割を割った」と騒いでいたんですが、去年は17.9パーセントになっているんですね。
 ついこの間まで日本人の常識としてですね、「日本は通商国家であり、貿易でメシを喰っている国なんだ」というのが誰もが共有していた認識だと思うんですけれども、その貿易の「相手先のナンバーワンは輸出も輸入もアメリカだ」というのが常識にも近いものだったんですね。
 かつて日本の貿易の4割から5割は「対米貿易」だったんですね。それがあっという間に変わって、いま、アメリカとの貿易よりも中国との貿易が上回ったっていうことになり、アジア全体との貿易にいたっては日本の貿易の5割を占めるなんてことになっているんですね。対米貿易はどんどん比重を落としているんです。
 こういった「ふたつの数字」が何を意味するか、シンボリックに頭に置きながら、これから「日米関係どうしていくべきか」ということなんですけれども、非常に興味深かったのは、先月、ちょうど日本と同じようにブッシュ政権の対イラク政策などを支援したイギリスのブレア首相が、やはりアメリカを訪問して先月25日にワシントンで会談を開いているんですね。
 その時に、記者会見で非常に面白いなと思って見ていたんですが、イラク戦争に対する省察っていいますか、反省ですね、ブッシュ大統領自身も大量破壊兵器の問題だけじゃなくて、刑務所での虐待問題とかですね、サダム・フセインを排除したことは良かったけれども、「かかって来い」なんてイラク攻撃に向けて挑発的な発言を繰り返した自分のことまで反省したりしてですね、ある種反省という視点を持ち出してきたことが非常に興味深かったです。
 アナウンサー ええ。
 寺 島 私は、今回の小泉さんの訪問で「アメリカの正義」とか、「アメリカのやっていることは正しい」という前提である種のコミットメントをしてきた国として、今までの5年間を振り返って、ただ正当性を主張するだけでなく、反省すべき点が何かあったのかということについてどういう視点が出てくるんだろうかっていう点が興味深いです。
 とかく日本人ていうのはアメリカに対する「過剰期待」と、「過剰依存」といいますか、戦後50年の関係を前提として甘えにもちかいような感情を持ったりしがちなんですけれども、もうそろそろ、「大人の関係として日米関係どうしていくんだ」っていうことについてパラダイムの変換があってもいいのではないかと思うわけです。
 「小泉政権の5年間」というのはですね、出会い頭に9月11日の事件というものにぶつかって、「逆上するアメリカ」というものに付き合わされて、同盟国の責任だって言う話しで、たとえば「ブーツ・オン・ザ・グラウンド」でイラクへと、さらにその前にはアフガン攻撃へということでですね、自衛隊までイラクに送り、幸いにして犠牲者も出さずに帰ってくるという局面に近づいているわけですけれども、ある種の「特殊な状態」「特殊な局面」での「過剰なアメリカに対するコミットメント」という時代を僕たちは過ごしたんだと思うんですね。
 ところが今般ですね、訪米の際の最大のアジェンダっていうのは「米軍再編問題」を含む「世界の中の日米同盟」ということで、「日米同盟をさらに強いものに深めよう」という方向を選択しようとしているんですけれども、このことを別の言い方をすると「アメリカの世界戦略と一体になっていく日本」ということなんです。
 「全能の幻想」ということばがあるんですけれども、「アメリカが全面的に正し」くて、「それと連携していけば日本も安心で安全」であるならば、それはそれで一つの選択肢なんですけれども、アメリカの抱え込んでいるリスクとコストをですね、「一体化して日本も抱え込んでいく」という選択が果たして正しいのかどうか ですね、いま日本人としてものすごく考えなければいけないことだと思います。
 アナウンサー そうですね。
 寺 島 しかも、もっと考えなければいけないこととして、日米同盟は極端な「軍事片肺同盟」でして、例えばもっと議論してもらいたいことが多々あるわけです。
 例えば「日本とアメリカの自由貿易協定」だとか、牛肉問題などに出ているように「日米間の貿易摩擦を今後どうやって制御していくのか」などというテーマも、ものすごく重要なテーマなんですね。
 今回の訪米は、そういうこともきちんと視界に入れたステップとして、今後に向けてすごく大切なんだっていうことをですね、国民としてもしっかり関心として持って行くべきだと思いますね。
 アナウンサー そういう内容のある会談になりそうですか?
 寺 島 ぜひそれを期待しなきゃいけない。そのあとに控えているサミットも含めて、小泉政権の総括であると同時に、日本の外交が「次」につながっていくかどうかの非常に大きな転機といいますか、ターニングポイントですから、我々としてそういった視点で見つめていなければいけないと思います。
 アナウンサー 寺島さんがいまご指摘になったことは、何年も前からおっしゃっていることなんですけれども、ほとんどと言っていいくらい形になって出てきていないですね。
 寺 島 アメリカは同盟国だから大事にしていかなければいけないんですけれども、実は思っている以上にコミットしていてですね、例えば「米軍の移転費に3兆円」なんて数字が出て日本人が仰天していますけれども、「21世紀に入っての5年間」で「米軍基地のいわゆる日本側の負担」というかたちで払ったお金と、イラク・アフガンというかたちで日本が協力したお金を合わせると、ざっくり言って「4兆円」はもう同盟のコストとしてはしつかり負担してるんですよね。
 ですから、「さらにそれに3兆円」ていう話しが加わってくるんだけれども、お金の額の問題だけではないですけれども、われわれが過剰にコンプレックスを感じてアメリカと向き合わなければいけない状況ではない。「21世紀の日米同盟」ということを、「アジアの連携」というものと、どうバランスをとっていくのか。このあたりに視界を広げていかなければいけないと思いますよ。
 アナウンサー その方が「世界の中の日米同盟」になるわけですね。
 寺 島 まったくそう思いますよ。 
                                                                          以上 

|

« 米印原子力協定支持表明「保留」方針の報道 | トップページ | 小泉首相のテネシー州プレスリー邸訪問は、ブッシュ共和党の中間選挙キャンペーンの片棒かつぎ »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/136601/10687008

この記事へのトラックバック一覧です: 日米首脳会談-寺島実郎氏の「本来はこう考えるべき」と言う意見(NHKラジオ「ビジネス展望」より):

« 米印原子力協定支持表明「保留」方針の報道 | トップページ | 小泉首相のテネシー州プレスリー邸訪問は、ブッシュ共和党の中間選挙キャンペーンの片棒かつぎ »