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2006年6月11日 (日)

イランなど途上国への核不拡散ばかりでなく「包括的核実験禁止条約批准」「検証措置つき核兵器物質生産中止」で核軍縮の推進を

イラク戦争開戦前に、国連査察チームを率いてイラクで査察にあたっていたハンス・ブリクス前IAEA事務局長(元スウェーデン外相)がイランの微量のウラン濃縮に世界の耳目が集まっているが、核軍縮についてはアメリカなど核保有国が取り組むべきもっと重要な問題があるとして、最近自ら率いた独立委員会が出した報告書のポイントを述べている。

インターナショナル・ヘラルド・トリビューンが掲載しているブリクス氏の論文は、たいへん共感できるものだったので、以下に森田が和訳を試みたものを掲載したい。

2万7000発の核爆弾の存在を忘れるな

ハンス・ブリクス
(2006年6月8日 トリビューン・メディアサービス)

 冷戦の期間には、軍縮に関する多くの重要な合意が可能であることが実証された。それがなぜ今、不可能なことのように見えるのだろうか。大国はもはや他国の脅威を感じていないのに。

 最近の協議のほとんど全てはイランや北朝鮮のような国家や、テロリストたちへの大量破壊兵器の拡散に関するものだ。外務大臣たちはイランが数ミリグラムのウランを4パーセントのレベルまで濃縮したことについて心配したびたび会合している。
 すぐにも軍事的な制裁を始めたがっている者もいる。彼らはイランがいつかは核不拡散条約の下で、核兵器を保有しないという約束を破るものと信じ込んでいる。

 外相たちがイランについて語り合うのは望ましいことだが、彼らはアメリカ、ロシアやそれ他の国々にいまだに2万7000発もの核兵器があって、それらの多くがすぐに発射できる状態にあることに、何らかの思いを致しているようには見えない。
 また外相たちは「核の脅威を減らす」という彼らの決意表明が、彼ら自身がNPTの枠組みが課している「自らの核兵器を減らし、除去する方向に向けて行動する」という義務を真摯に果たすさずにいることで損なわれていることに気づいているようには見受けられない。

 地球規模の軍縮の停滞は全体像の一部に過ぎない。アメリカでは軍部が新しいタイプの核兵器を欲しがっている。イギリス政府は莫大な経費をかけて核兵器を新世代のものに更新することを検討している。いったい誰から防衛しなければならないというのだろうか。
 昨年、国連の各国首脳サミットは「さらなる軍縮をいかに達成するか」、「大量破壊兵器の拡散をかに防止するか」についての勧告を一つも採択することができなかった。ここ十年近く、ジュネーブの軍縮会議は立ち止まったままだ。再び始動させるべき時である。

 アメリカや他のどこかの政策立案者が、核拡散防止の国際的な手段であるNPTと国際査察がイラク、北朝鮮、リビアやひょっとしたらイランの核兵器開発を止めるのには不十分であることがわかって失望を感じたり、心配を持つことはよく理解出来る。
 これは彼らがアメリカの巨大な軍事的潜在力を、核拡散防止のための脅しや直接的な手段として使いたがる傾向を説明するのに役立つかもしれない。
 しかしながら、3年にわたり大きな犠牲を払い批判を浴びたイラク戦争、これは存在しなかった兵器を破壊するための戦争だったわけだが、この戦争の後に軍事的な方法論に対する疑念が生じ始めており、大量破壊兵器を削減し、ゆくゆくは除去する地球規模での協力に、再びもう一度進んで挑戦しようとする、大きな機運が生じるのではないか。

 各国と世界が核兵器、化学兵器、生物兵器から自らを解放するためにできる60項目の具体的な勧告を含む、私が議長を務める独立の国際委員会が完成した報告書を次のページでご覧頂くことができる。                                                   http://www.wmdcommission.org/

 この報告書は、大量破壊兵器がこれまで以上の国やテロリストに広がるのを防ぐための方法についての提案とは別に、現在の軍拡競争に関する新たな不安を、共通の安全保障への新たな希望に変えることができる二つの方策を示している。どちらの場合も、成否はアメリカにかかっている。

 アメリカによる包括的核実験禁止条約の批准は、おそらく他の国々を批准に導いて全てのこのような実験を終わらせ、核兵器の開発をより困難にするだろう。条約を1996年以来そうだったように不確かな状態に留めておくことは、新しい核兵器開発の危機をもたらす。

 二つ目の対策は、兵器使用目的の高濃縮ウランとプルトニウムの生産を中止する、国際的に受け入れられた合意をまとめることだろう。
 これはどこにおいても核兵器の原料物質を供給する蛇口を閉めることになり、それは仮にインドが、アメリカとの核協力合意により目下のところより多くのウランに近づけるようになった場合にとりわけ重要だ。
 アメリカが最近、カットオフ条約の草案を提示していることは前向きなことだが、なぜこの合意案が国際的な査察を含んでいないのかは理解しがたい。草案作成者は最近の政府の情報活動の実績が、国際的な査察は余計なことであることを示しているとでも思っているのだろうか。


( ハンス・ブリクス 前国連核兵器査察官。この記事は、はじめスウェーデンの雑誌Fokusに掲載され、トリビューンメディアサービスによって配信された。)

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コメント

はじめまして。
ブリクス氏の論文の翻訳、大変興味深く読みました。貴重な資料をありがとうございます。
たしかに最近、軍縮会議という言葉をききませんでしたね。
ところで、こちらの記事を、私のブログにて紹介させていただきたいのですが、さしつかえないでしょうか?

投稿: フタバ | 2006年6月14日 (水) 00時17分

フタバ 様

どうぞ。ご関心もっていただいて嬉しいです。

投稿: 森田敬一郎 | 2006年6月14日 (水) 08時47分

ありがとうございます。
さっそく記事にさせていただきました。
また寄らせていただきます。

投稿: フタバ | 2006年6月15日 (木) 08時51分

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