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2006年7月17日 (月)

ゴア元副大統領制作の映画「不都合な真実」をめぐって

アメリカのゴア元副大統領が制作し、5月に公開した「地球温暖化問題」をテーマにしたドキュメンタリー映画は、大きな話題になるとともにそこそこヒットし、現在も一部の都市の一般の映画館で上映されているようです。

以下、これについて最近必要があって資料としてメモ化した5月放送の米PBS「ニューズアワー」の番組のNHKによる日本語音声を文字化したものをご紹介します。

今秋の米中間選挙は、1994年の逆パターンで民主党が上下両院の過半数を奪う地滑り勝利の可能性を孕みながらも、1994年の共和党のギングリッジにあたる求心力のあるリーダー不在などによりまだ結果は見通せないようです。

2008年大統領選挙の民主党候補はヒラリー・クリントン本命、エドワーズ前副大統領候補のような南部出身の中道派が対抗というパターンでしょうが、最左派にはもともと中道派だったゴア氏に対する待望論が強く、中道左派の党のストラテジストたちも、もしヒラリーが途中で降りざる得なくなったときのスペアーとしてゴアをキープしておきたいというムードがあるようです。

このPBSの番組の直後、ゴア氏がインタビューで出演した米ABCの『ジスウィーク』のラウンドテーブルでも、ヒラリー支持と見られる二人の女性出演者は「やはり退屈」などとくさしていましたが、ライシュ元労働長官は「ジョージ(ステファノプロス氏、インタビュアー)が『出馬しますか』と3度聞いたのに、3度とも『絶対出馬しない』とは言わなかった。これは出馬するということ」とコメントしていました。

【以下、PBS番組のNHKによる日本語音声の起こし】

ゴア副大統領の地球温暖化問題に関するドキュメンタリー公開

2006年5月24日放送
米PBS『ニーズアワー』より

 ジム・レーラー 次はアル・ゴア氏の復帰についてです。グエン・アイフル記者の報告です。
 ゴア大統領候補(当時)「友人の皆さん、かつて他の人に対して言ったことばを、今度は自分に対して言います『去るべき時が来ました』」。
 アイフル 2000年の大統領選挙で敗れたのは手痛い打撃でした。ほんのわずかな差。大いに議論を呼びました。それから何年もの間、ゴア氏は沈黙してきました。しかし、慎重に一歩づつ、最近はゴア氏は「自分は次のアメリカ大統領になるはずだった人物」だと言いつつ、再びスポットライトを浴びる場に戻ってきました。
 2004年にブッシュ大統領がイラクで戦争をすることを決定したことに反論しました。 ゴア元副大統領 「ブッシュ政権のイラク政策の何が間違っていたかを具体的に突き詰めると、ごく簡単なことです。ブッシュ大統領はイラクについて思想的に偏った見方をしていて、これは現実と残念ながら全くそぐわなかったのです」

アイフル ゴア氏はまた「カレントテレビ」などの新たなビジネスベンチャーを始めました。これは若い人々に狙いを絞った、新しいケーブルテレビのサービスです。
 そして映画『"An Inconvenient Truth"=不都合な真実=』を公開しました。元副大統領は、かねてから情熱を傾けてきた「地球温暖化の脅威」を語る新たな場を得ました。
  映画を公開したことで手厚い待遇を受け『ニューヨークワイアード』『バニティフェア』などの雑誌の表紙にも登場しました。
 ゴア氏が主任進行役を務める中で、長編の話題作は地球温暖化の科学と政治、またゴア氏自身に焦点を当てています。
 ゴア氏(映画の中で)「観測史上、最も気温が高かった10年間を探すと、それはすべてこの14年間のことです。いちばん暑かったのが2005年です」                  
 アイフル マルチメディアを使ったゴア氏のプレゼンテーションは、自分でラップトップを持って世界中を回ったものですが、去年ハリウッドの注目を集めるところとなりました。
 しかし、ゴア氏がこの問題を扱ったのはこれが初めてではありません。1992年の『地球の掟』はベストセラーになりました。
 ゴア氏「世界中の科学者の言うこと注意深くはっきりと聞くのであれば、いまやただ『語る』のではなく、『叫んで』います。『目を覚ませ』『この惑星の危機だ』と叫んでいるのです。私たちはこんな警告や注意を聞き慣れてはいないのです。仮面を引き剥がさなければなりません」「これを『政治問題だ』とレッテルを貼ってしまうと『たいしたことないよ』と片づけてしまうことになります。これは私たちが直面している課題の中で、最も重要な課題です。私たちの生きている間に起きていることなのです」
 アイフル 一部ではゴア氏は人騒がせな予測をとばす人だと批判しています。例えばワシントンのシンクタンク「ザ・コンペティティブ・エンタプライズ・インスティテュート」が作った広告です。
 テレビCM「二酸化炭素は『公害』と言われますが、これは『生命』であると私は言います」
 アイフル アル・ゴア氏の人物とその映画についてゲストにお話をうかがいます。ロイ・ニールさん、ゴア副大統領の主席補佐官を務められ、今はゴア氏の上級アドバイザーです。そしてジョン・ヘイルマンさん。『ニューヨークマガジン』誌の編集長で、ゴア特集を組まれました。
 ヘイルマンさん、11年前あなたはゴア氏について書かれた記事の中で「アル・ゴアの持続的雄弁に心の準備をしない人は、コーヒーをブラックで注文することになる」と書かれていますね。それは変わりましたか。 
 ヘイルマン 11年間で、ここまで変わるものなんですね。この映画、私は3回見ました。またアメリカ中をまわって、ゴア氏が上映会に出席しているのを見てきました。これへの圧倒的な反応というのは、映画に出てきている科学は怖いものですし、それに説得力があるということです。
 2番目にこれは「新しいゴア氏」なんです。2000年の大統領選挙の時のゴア氏とは違うんです。面白いし、自由で情熱的で、自信があって、本当に本物なんです。それがこの映画を見る人に強い印象になって残っていきます。今後もそうであり続けると思います。
 アイフル 昔「新しいニクソン」という言い方があったと思いますが、「新しいゴア」の誕生でアメリカ人は大統領選挙の結果のポジティブな面を思い出すのではないですか。
 ヘイルマン たしかにですね、6年前にゴア氏が一般票で(総得票数で)勝利を収めたのは事実なんですね。何千万人もがゴア氏に票を入れたんです。しかし、ゴア氏に票を入れた人でさえ「今まで現れた候補者の中で最も説得力のある候補者」とまでは思っていなかったでしょう。
 今のゴア氏が完全に新しい姿かというとそうではないと思います。いま見せている情熱はもう何年も前から持ち続けている情熱です。しかし違う点というのは、政治的な計算から解き放たれたということです。役職をねらう政治家が、いつも背負わされている計算、計算づくの行動から自由になったと言えるでしょう。自分の考えを話せるようになりました。また、先ほどのレポートにあったように、自分自身が発する声を見つけたように思います。
 アイフル ニールさん、あなたはゴア氏と何十年もつきあいがあり、そして今もよく話をし一緒に仕事をしているわけですけれども、大統領選挙に敗れてからゴア氏はどういうことをしてきたんでしょう。
 ニール 人々の間で、同じ主張を訴え続けていました。少し控えめなやり方ではありましたが、世界各地で何百回も講演をしてきました。今日公開された『不都合な真実』というこの映画、そしてこの映画と同じタイトルの本も今日発売されたのですが、地球温暖化に対するゴア氏の取り組みに対して世間の関心が頂点に達したことの現れです。
 アイフル 1992年に出版された『地球の掟』という著書は、評判は良かったものの92年の大統領選挙の材料のような見方をされました。今回、映画が公開され、雑誌でこの本が取り上げられるなどしていますが、ゴア氏が、前回とは違ったタイプの候補者として再浮上する可能性はあるんでしょうか。
 ニール これは政治キャンペーンではありません。地球温暖化に対するアメリカの関心の高まりを表しているのです。ゴア氏がこの本を書いたのは91年で、92年の大統領選から脱退した後でした。息子の事故以来、地球温暖化問題に打ち込んできました。
 それは、今回のことと共通点があります。ゴア氏はずっと熱心にこの問題に取り組んできましたが、ゴア氏の講演を聞いた人以外にはあまり注目されませんでした。ですから「新しいゴア氏」と言えるかどうか分かりません。その意味で、ハイルマンさんのおっしゃり方はいいと思いますが、私が30年間見続けてきたゴア氏と、同じ情熱を持った同じ人物です。ゴア氏が常に正しかったと世間が認めたということでしょう。
 アイフル 2000年の選挙に敗れて過激になったというわけではないんですね。
 ニール その通りです。これまでのような懸念や、コンサルタントからのプレッャーから自由になり、選挙キャンペーンの制約に縛られることなく活動していると思います。だからこそ、この数ヶ月でこれほどの信頼が寄せられたのでしょう。人々の関心が集まって映画が公開されたのです。
 アイフル ハイルマンさん、ゴア氏はハリウッドに進出したんでしょうか。
 ハイルマン 興味深い点ですね。さきほどロイ・ニールさんは「2000年の大統領選挙で敗れたから過激になったのではない」とおっしゃいましたが、そうでしょうか。
 スタイルの変遷を別にすれば、ゴア氏は中道の穏健派の民主党員として知られてきました。2000年の敗北以来、民主党の左派のチャンピオン、英雄となったんですよね。民主党員の大部分に先駆けて、まずイラク戦争への反対を表明し、国内の盗聴問題やアブグレイブ収容所、グアンタナモ基地についての批判を先駆けて行いました。ゴア氏はハリウッドという民主党の左派に近い傾向の人たちの英雄になったんですよね。
 サンフランシスコや、環境保護論者の社会や、反戦主義派の「左」、リベラルなブログを書く人たちがいま最も熱心なゴア氏の支持者になっているんですよね。ゴア氏が2008年に立候補する見込みについて検討しているんです。これは以前のゴア氏の支持基盤と全く違う人たちなんです。
 アイフル この映画を3回見たと言われましたが、私は1回しか見ていないんです。この映画は、副大統領として8年間で成し遂げられなかったことと関係があるんでしょうか。
 ハイルマン まずこの映画のタイミングが重要でありまして、絶妙なんです。政治的文脈だけではなく、この問題そのものにとってもそうなんです。この映画がハリケーン・カトリーナの1年後に封切られたことは多くの人の見方を変えました。この問題の重要性を再認識させているんですよね。これは15年前とは全く違う状況なんです。
 当時は地球温暖化について科学界のコンセンサスがありませんでした。ですから、ゴア氏は副大統領であったとしても、この問題で今ほど支持をえられなかったんです。
 アイフル ロイ・ニールさん、あなたはゴア副大統領の首席補佐官だったわけですけれども、ゴア氏は非常に力を持つ副大統領でした。「歴史上、最も影響力を持つ副大統領」と言われたものです。チェイニー副大統領と比べれば陰が薄くなってしまうわけですけれども。「いま言っていることを、何で任期中にやらなかったのか」という疑問の声もあるかと思いますが。
 ニール 当時ゴア氏は出来るだけのことはしました。当時は今とかなり状況が違っていたのです。地球温暖化に対する世間の関心も、議会の意識も低く、地球温暖化はあまり国民の関心事ではありませんでした。そんな中、ゴア氏はクリントン政権の下で、環境問題への取り組みを精力的に進め、京都議定書の締結に向けて努力しました。しかし残念なことにブッシュ政権はそれを拒否してしまったのです。環境保護派の副大統領として、ゴア氏の業績は誰にも劣らないものです。
  ゴア氏が急進的になった、過激になったとおっしゃいますけれども、2000年の大統領選挙以降、ゴア氏がどんな立場を表明してきたのか振り返ってみてください。イラク戦争や、ブッシュ政権の違法な国内盗聴についてどんなスピーチをしたか、振り返ってみてください。ゴア氏の考えは決して極端な左寄りではなく、まさに国民の感情を代弁しているものです。
 この地球温暖化に関する指導力や情熱、そしてこの映画が公開されたことを見ると、ゴア氏は単に先見性があるだけでなく、ビジョンを持った人であることであることがわかります。
 アイフル ハイルマンさん、ゴア氏について「人騒がせな人間」「言っていることに正確さを欠く」という評価がありますが、その点はいかがですか。
 ハイルマン たしかに映画を見るとある意味、ゴア氏が「自分の言うことを聞け、さもなくば世界はおしまいだ」という救世主のお告げをしているように聞こえるんですよね。しかし同時に、この問題について不必要に不安をかきたてているという批判はますますむなしく響くようになっています。
  
(ここまでNHK・BS1で放送された同時通訳音声。以下、英語の番組ホームページより要旨)
 
 アイフル ゴア氏は2008年の大統領選に出馬しますか?
 ニール その意図はないと思います。またこのような方法は大統領を目指す伝統的な方法ではありません。
 ハイルマン 伝統的な方法ではありませんが、映画の公開がいいタイミングです。この映画はゴア氏にオーラを作り出しており、ゴア氏は上映会を歩きながら、アメリカ中の出馬を熱望する声を聞いています。民主党系の人々の多くは、ヒラリー・クリントンが大統領候補になるだろうと見てはいますが。
 アイフル お二人ともありがとうございます。
 

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コメント

かねてより地球温暖化、オゾン層破壊、大気汚染、酸性雨、人口爆発、砂漠化などに関心がありました。10月5日サンフランシスコからの帰りに、「不都合な真実」を機内で見ました。しっかりしたデーターに基づき、ゴア氏の講演は、大きな説得力を持って迫ってくるようでした。そのパッションもびんびん伝わってきました。
これは日本では、既に上映されたようですが、全員が見るべきだ、子どもも青年も高齢者も、もちろん大人も。そして、近未来の子供たちに、安心して暮らせる地球を残していかなければならないと痛感しました。
関心を持ちながらも自分は具体的に何をすることが出来ているかを問う時、全く出来ていない自分を発見します。しかし、「大河の一滴」でも出来ることから心がけようと、機内で地球の安全を祈った次第です。
これはまだDVDにはなっていないのでしょうか。

投稿: 榊原 寛 | 2006年10月18日 (水) 20時19分

この問題について、関心を持つ機会があまりにも少ないと思います。
生活に深刻な影響を及ぼす状況にならないと行動を起こさない人が
ほとんどだと思います。私もその一人だと思います。機会を作る事
にまず全力を尽くすことだと思います。

投稿: じん | 2007年1月14日 (日) 10時15分

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