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2006年8月12日 (土)

未遂で良かった英テロ

イギリスで摘発された米国航空機に対する大規模テロ計画は、未遂に終わって本当に良かった。犠牲が回避されたことももちろんだが、もし実行されていれば、結果として再びアメリカの「逆上」によって世界政治がメチャメチャになるところだった。

この事件については、2006年8月11日付『朝日新聞』夕刊2面の木村伊量ヨーロッパ総局長の文章が森田が言いたいことを言い尽くしているので以下、全文をご紹介する。

【以下、全文引用です】

英テロ未遂、憎悪の連鎖断つ時 ヨーロッパ総局長・木村伊量

 9・11の悪夢の再現か、と思わせるようなテロ計画が実行寸前のところで封じられた。事件が照らし出したのは、米英主導の「対テロ戦争」をあざ笑うかのようにテロリスト新世代が増殖し続けている、不気味な現実である。
   □  □
 昨年7月のロンドンのテロで地下鉄の乗客ら50人以上が犠牲になった後も、英国がテロの標的であり続けるという観測は絶えなかった。
 ロンドンのリビングストン市長は今年3月、「私たちは昨年7月のテロと次に起こるテロの『中間』にいる。アルカイダの思想に影響された新たな攻撃は時間の問題だ」と語っていた。
 今回の容疑者たちがどのような背景をもつのか、現時点でははっきりしない点が多い。ただ、英米のメディアが伝えるように大半がパキスタン系英国人だとすると、英国育ちのパキスタン移民2世が実行したロンドン・テロの構造が再生産されたことになる。
 今年5月、英内務省はロンドン・テロで自爆したとされる容疑者4人についての報告書を発表した。だが、英国の地方都市でごく普通に育った青年たちが、なぜ過激なテロリスト思想に染まっていったのか。彼らの屈折した心象風景にはほとんど迫っていない。
 昨夏のテロの後、ブレア政権はテロ容疑者の起訴前の拘束期限を倍の28日間に延長し、イスラム過激思想を鼓吹する聖職者の締め出しを視野に移民法を改正するなど、統制を強めてきた。
 そうした強硬措置が、英国内に暮らす160万人にのぼるイスラム教徒たちの疎外感や反感を高じさせ、それが一部の若者たちを新たなジハード(聖戦)に駆り立てているとしたら――。これほど不毛な、憎悪の連鎖はあるまい。
 イスラム教徒であるロンドン警視庁のガフル副総監は最近、一連の反テロ法がイスラム教徒を差別していると批判し、「英国で暮らすイスラム教徒の若者の一部が過激思想に走る動機を独立の機関で追跡調査すべきだ」と訴えている。
   □  □
 無差別テロの恐怖から解放されていない現実に世界は衝撃を受けた。対テロ戦争継続を唱えてきたブッシュ米大統領やブレア英首相の政治的足場は、多少は強まるかもしれない。米英は一段と強力なテロ封じ込め策を進めるだろう。
 卑劣なテロを許してはならない。しかし、力ずくでテロリストを根絶やしにできる、と考えるのは幻想である。
 米国は冷戦並みの労力と時間をかけてテロとの「長期戦争」に挑む(今年2月の国防報告)という。それ以上に労力と時間をかけるべきは、イスラム社会を理解し、尊重し、包摂しつつ、狂信的なテロリストを生む土壌をほぐすよう、協力を求めることだろう。
 英国のイスラム教徒の大多数は過激派と無縁な人たちだ。一方で、その53%が「ロンドン・テロは、英国がイラクに侵攻したために起きた」と答えたという世論調査がある。彼らの複雑な思いを受け止めることから始めるべきだ。
 報復の応酬が行き着く先は、絶望の泥沼でしかない。それはイラクで、いやというほど、私たちが目撃していることではないか。

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