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2006年9月 1日 (金)

日本の「格差問題」を指摘したOECDの2006年版「対日審査報告」について~NHKラジオ「ビジネス展望」内橋克人氏の発言より

安倍晋三氏の「美しい日本へ」には、マクロ経済政策への言及が全く見あたらない。岸信介内閣が、つぎの池田勇人内閣と対照的に、「経済」にほとんど関心を示さずに「安保、治安」に専心したことを彷彿とさせる。

実際には、世界情勢、アメリカ経済の動向との関係で、経済は専門家(竹中平蔵氏のような?)に任せておけばいいという状況ではない。

日本経済の均衡ある発展という点からも、労働の二極化というか、いわゆる「格差」問題についても「高齢化による見せかけ」だなどと言っていられる状態ではない。

一月あまり前のことだが、OECDの2006年版「対日審査報告」もそのことを指摘した。すでに新聞等で報じられているが、この発表に際して内橋克人氏がNHKラジオ「ビジネス展望」で行った発言を紹介したい。

(以下、2006年7月25日放送の録音より)

 アナウンサー OECD(経済協力開発機構)が日本の「格差問題」について指摘をしたということですが。
 内 橋 7月20日ですが、経済協力開発機構(OECD)が『対日経済審査報告書』2006年版を発表しました。日本の経済政策に対する提言という意味を持つものなんですね。今回の特徴はまず第一に、いま日本で問題になっている「所得格差」を詳しく取り上げていることです。それからまた、所得格差の指標として「相対的貧困率」に特に着目したことが上げられると思います。
 ここで相対的貧困率についてちょと説明しますと、これは生産年齢人口、18歳から65歳以下なんですけれども、これを対象としまして所得から税金などの経費を差し引きまして、可処分所得、つまり収入のうちで本人が自由に使える部分の額につきまして、全体の平均値をまず出すんですね。そしてその平均の「半分以下」の所得しか得ていない「貧困層」が全世帯の中でどれくらいの割合を占めているかを計算した数値のことなんです。当然、貧困層が多いほどこの数値が高くなるわけですね。今回、この数字を出した。
 それからもうひとつ、この報告書が日本の所得格差について言及した。これが初めてなんですね。それだけにたいへん重い意味を持っていると言えると思います。
 格差問題につきましては、これまでこれを「見かけの問題だ」と内閣府は言ったり、小泉さんもそう答弁したりしているんですが、高齢化の進展によるものという意見もありましたけれども、これはさまざまな数値を使って、格差問題の存在そのものを否定しようとする政府、中には学識経験者がたくさんいるんですが、彼らに対して異論を突きつけたという形になっている。ここに大きな特徴があると言えるんではないでしょうか。
 アナウンサー その報告書の中味ですけれども、少し詳しくお話しいただくとどうでしょうか。
 内 橋 この中味は全体で200ページの報告書になっています。そのうち1省30ページにわたりまして「所得の不平等」ということに言及しているんですね。これは珍しいことなんです。
 日本について指摘されましたことをご説明しますと、いまお話しした「相対的貧困層」の貧困率の割合が、日本はOECD加盟国の中で米国に次いで二番目に高いという指摘があるということです。最も高いアメリカは13.7パーセント、これに対して日本は13.5パーセント。ほとんど変わりません。これまで「格差社会」と言われてきたアメリカと日本は、あまり変わりがなくなっていると、こういうことを指摘しているわけです。
 ちなみに他の国について見ますと、デンマークは5.0、スウェーデン5.1、フランス、ノルウェーともに6.0、フィンランド6.4、ドイツ8.0なんですね。最低のチェコは3.8パーセントなんです。ですから、日本の13.5というのが、いかに大きいかということがお判りになると思います。
 つまり所得格差がいかに大きくなっしまったのか、これでわかるんではないか。今挙げましたこれらの国々とはですね、もはや社会のあり方そのものが大きく変わってしまったと言えるんではないでしょうか。
 また、所得不平等の度合いを示す指標の「ジニ係数」で見ますと、OECD加盟30カ国の平均を上回る水準まで、日本は上昇してしまっているという指摘があります。
 この傾向はすでに1980年代半ばから顕著に見られるようになりまして、日本の相対的貧困率は「OECD諸国の中で最も高い部類に属する」と報告書はポイントを突いているんです。
 まあ、バブル後とられて参りました日本企業あるいは政府のビヘイビアですね、国内ではむしろ「格差奨励策」と言っていいような政策がとられてきました。税制その他ですね、労働の解体、これを正当化してきたんですけれども、もはや国際的にそういうことは通用しないと、そういう時代がきていると言えるんではないかと思います。
 アナウンサー その日本の格差拡大というものをもたらした原因、あるいは対策というものをOECDはどこに求めているということなんでしょうか。
 内 橋 まず原因なんですが、第一に「雇用・労働の解体」ということを挙げてますね。つまり非正規雇用、非正社員の激増ですね。雇用・労働の規制緩和が進みまして、非正規雇用が激増したと。正社員、正規雇用と非正規雇用の間のですね、所得の格差が大きくなっているということ、さらに社会保険、各種給付ですね、同じ働きをしていても、身分によって大きな格差が生じていると。相対的貧困率の拡大に、これがつながっているという実態を突いています。
 具体的な数値で申しますと、国内のパートタイム労働者は2000年を100とする指数で1995年の82.7から2005年には124.6へと大幅に上昇しています。一方、主に正社員を示す一般勤労者は、1995年の103.3から2005年には93.6に低下している。いかに非正社員が増えたかがわかりますね。
 従業員に占める非正社員の割合は1995年以降の10年間で、19パーセントから30パーセント以上にまで上昇しました。パートタイム労働者の時間あたりの賃金は、フルタイム労働者の40パーセント程度にすぎません。またこういったことが、教育機会の不平等などを通じて、世代を超えて次世代に持ち越されるのではないか、そういう心配を警告しております。
 対策ですが、まず今後、所得の二極化の進行を抑える上で最も重要なことは、非正社員への社会保障制度の適用をきちんと拡大していくべきだと指摘しています。さらにまた、母子家庭に向けて社会的な福祉の支出を増やすべきだとしています。
 実際には、小泉政権は母子加算を廃止したり、逆のことをやっているわけですけれども、そういうことでは、これは改まらないということになるんではないかと思います。
 アナウンサー このようなOECDの報告書を読んで、日本はどのようなことを考えなければいけないんでしょうか。
 内 橋 重要な点は、『対日審査報告書』の統計についてはいろいろ異論もあるんですけれども、実はここで使われた時点以後に雇用の状況はもっと一層深刻化しているということを指摘しておかなければならないと思います。
 雇用・労働の規制緩和の流れが一気に加速しましたよね。2003年の改正では、派遣労働の全面解禁が行われております。それから、製造業への派遣労働の解禁も行われましたね。OECDが指摘しました、この格差拡大の構造というものがですね、一層深刻になっているという現実を言っておかなければならないと思います。
 「格差ある社会は活力ある社会だ」ということを言っている閣僚もいますが、社会統合の危機を今や招きつつあるんだと、そういうことを政治が今や認識すべき時に来ているんではないかと思います。
(2006年7月25日)   
 

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