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2007年12月21日 (金)

平安時代、藤原仲成処刑以来350年近く死刑を停止したわが国の朝廷=『毎日』コラム「余録」より=

学生時代、大学にアムネスティー・インターナショナルのグループを作りたいという友人に誘われて参画した。アムネスティーが「良心の囚人」とよぶ、世間で言う政治犯の釈放に当局への書簡送付などソフトな「直接行動」を粘り強く進める団体の趣旨に強い共感を覚えたが、当時は「死刑廃止」の主張には違和感を覚えた。

フランス革命で大量殺人を犯し、奴隷の売買や虐待について明確な謝罪をしていないヨーロッパ諸国が死刑廃止を訴えることに偽善を感じる人も多いだろう。

しかし、死刑の実情についての新聞記事を読み、9・11同時多発テロの際に、報復の連鎖を避けるべきというヨハネ・パウロ二世の言葉に共感し、今もイラクなど世界の現状にその言葉の正しさを日々感じている自分としては、「人類には、死刑を正当化している原始的な段階に止まる人類と、死刑を止めたより進歩した人類の二種類がある」と考えるようになっている。

アメリカでは、1970年代の最高裁判例変更で多くの州で復活した死刑が、最近のニューハンプシャーのように一部の州で再び廃止される動きがあるという。あのアメリカでも、州によっては死刑を廃止しているのだ。日本は、それでも中国やイスラム圏と同様に死刑制度を続けるのか。

そんなことを考えていたら、毎日新聞の12月20日付のコラム「余録」で興味深い事実を知った。保元の乱で藤原信西が復活させるまでの平安時代、天皇家25代、350年近く、わが国では死刑が停止されていたというのだ。余録子も言っているが、こんな例は世界にもまれだろう。仏教思想の影響が指摘されるが、とにかく「死刑廃止」はわが国と天皇家の、世界に誇るべき伝統なのだ。

「死刑」を続けるのか。それは、われわれがこれからどのような社会を作っていくのかという大議論の中にしっかり位置づけ、タブーとせずに議論していくべきだと思う。

【以下は、12月12付『毎日新聞』コラム「余録」の写しです】

余録:死刑停止

 「死罪を行えば海内(かいだい)に謀反(むほん)の輩(ともがら)たえず」は「平家物語」の平重盛の言葉だ。保元の乱の際、天皇家25代にわたって長らく行われなかった死罪を藤原信西(しんぜい)が復活させたのを批判する。清盛に死罪を思いとどまらせるためだ▲信西は後の平治の乱ではその報復を受けることになった。重盛はそこで仏教的な因果応報を説くのである。実際に朝廷は810年の藤原仲成(なかなり)の処刑以来、350年近くにわたって死刑判決があれば減刑し、事実上死刑は廃止されていた▲背景には仏教思想があったものの、たとえ仏教国であれ何であれ、こんな長期にわたり死刑を停止した例は世界でもあまりないだろう。その復活をもたらしたのは武家の台頭で、それから850年もたてば日本も世界もまるで様変わりする▲国連総会は死刑執行の一時停止を加盟国に求める決議案を賛成104カ国で採択した。ここでの日本は米国や中国など53カ国とともに反対票を投じ、棄権は韓国など29カ国である。決議の背景には、死刑廃止にむけた国際的圧力を強める欧州連合(EU)などの働きかけがある▲「死刑停止」といわれても、昨今の凶悪犯罪の冷血、被害者遺族の無念を目の当たりにすれば、とても受け入れられないという方が多かろう。ただ凶悪犯罪は日本だけでないのに、この30年間で一挙に100カ国以上も増えた死刑廃止・停止国である。その経験や、掲げる価値を踏まえた論議はもっとあっていいように思える▲裁判員制度では市民が死刑判決にかかわる局面が生まれる。死刑の現実を見つめ、人間の罪と罰をめぐる深みのある考察が求められる今だ。平安時代ほどの論争もない方がおかしい。

毎日新聞 2007年12月20日 0時01分

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