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2008年5月14日 (水)

朝日新聞記事「五輪の囚人」(4月28日付)

最近、新聞を読んでいて「えッ」と思った記事があった。それは、中国で当局批判を行って投獄されたり、そうした人々を助ける弁護士の活動を報じたものだった。一昨日、池上彰さんのコラムを読んでやっぱりメモしておこうと思った。

森田自身も、基本的人権の尊重されるべきことは人類普遍の原理であると思っている。また日本国憲法の定めるところにより、わが国も国家としてそのような立場であるはずである。ここに報じられたような事実があるならば、メディアがこれを報道するのは当然のことだ。「えッ」と思ったのは、申し訳ないことに中国駐在メディアは、当局の目を恐れてこのような報道は自己規制してしまうだろうという先入観があったからだ。

以前、故田中角栄元首相の葬儀に際して、ある政治家が読んだ弔辞について田中真紀子代議士が「父の全てを語って下さいました」と礼を述べた。実は、その弔辞を担当した歴史観に欠け、空気ばかり読むライターは、田中角栄氏の事績を振り返る弔辞から「ロッキード事件と裁判対策としての自民党闇支配」については全て欠落させていた。

昨年の温家宝首相の国会演説、先般の胡錦涛主席の早稲田大講演で「日本の戦後の歩み」が高く評価され、ODAへの感謝も述べられた。「タブー」は破られた格好だが、これら首脳スピーチが歴史の流れを語る際に言及が避けられるのは、『大地の子』が中国で放送されなかった原因とも考えられる「文化大革命」と、6・4天安門事件だ。しかし、実はここを抜きに中国の本当の歴史を語るのは難しい。

こうしたことが率直に語られるようにというのは、当面の外交課題というのとは少し違うだろう。しかし、とにかく「五輪の囚人」を取材した記者や、この記事の掲載を決断したホネのある人々の頑張りが助けとなって、いつの日にか、中国の人々とこうした20世紀後半、あるいは21世紀初頭の「歴史」についても構えることなく本当のことを語り合える日が来るといいなと思う。

【以下は『朝日新聞』2008年5月12日付夕刊be4面の池上彰氏によるコラムの写しです】

(池上彰の新聞ななめ読み)「五輪の囚人」 記者の怒りと勇気、感じる

 新聞記事の中には、これだけの内容に仕上げるには、さぞかし苦労があったのだろうと思わせるものがあります。最近では、「北京百日前」企画のひとつである「五輪の囚人」が、そのひとつでした(4月28日朝刊)。

  中国で、「北京五輪に巨費を投じるより人権状況を改善してほしい」という署名活動をしただけで、「国家政権転覆扇動」の罪で懲役5年の判決を受けた男性。逮捕された後、拘置所でベッドに手足を縛りつけられたまま食事や排泄(はいせつ)を強いられたという。この男性は、「五輪の囚人」と呼ばれる。
 人権活動家を支援する弁護士が、「公安」と名乗る4人の男に拉致され、3日間も監禁されたという。
 別の弁護士は、逮捕されている活動家の面会に行く途中で暴漢に襲われ、重傷を負ったが、警察は取り合ってくれない。
 中国国内で相次ぐ事件の数々を伝えています。「共産党独裁政権の弾圧を恐れずに人権や民主、法治、言論や信教の自由などを訴えているのは活動家だけではない。彼らを支援する弁護士も、身の危険にさらされながら闘う」と北京の朝日新聞記者は書きます。
 活動家の弁護をする弁護士は、弁護士の業務を停止させられたり、本人自身までもが国家政権転覆扇動罪に問われたりする危険があるというのです。
 こうした事実を、中国の報道機関は報じません。報道機関自らが、共産党中央宣伝部によって統制されているからです。
 「権力は党に集中する。その幹部に不正がはびこる。メディアは沈黙する。大衆が不満を募らせても、党批判は断罪されかねない。罪に問われた被告を守ろうとすれば、弁護士にも身の危険が迫る。
 これが中国の現実だ」
 記事には、記者の怒りが滲(にじ)んでいます。しかし、報道の自由がない中国で、日本の新聞記者が、こうした現実を取材すること自体、当局の妨害を受けるはずです。電話が盗聴されていることを前提にして、取材対象に迷惑をかけないように配慮しながら、取材の連絡を取り合う苦労。
 当局にとって都合の悪いことを書けば、その後、陰に陽に嫌がらせを受けることが容易に予想できる中で、ペンを鈍らせることなく、どこまでのことが書けるのか。
 この記事を書いた記者は、きっと中国の弁護士たちの行動に勇気づけられて、ペンをとったのでしょう。その記事を読むことで、私たちもまた、勇気づけられるのです。

(朝日新聞2008年5月12日付夕刊be4面)

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