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2008年5月23日 (金)

(メモ)最近の政治経済情勢に関わって

最近の政治経済情勢に関わって、思い浮かぶままに(一部、最近の発言と重複)

1. 「ねじれ国会」「胡錦涛主席来日」、また洞爺湖サミツトに向けての「温暖化対策」  など話題が多いわけですが、国際情勢を考えても、また国内の問題を考えても「21世紀に入ってから10年近くのわれわれがとってきた進路というものが、概ね正しいものだったのか、それとも、ある程度軌道修正といいますか、基本的な考え方を再検討した方がいいのか」ということを少し考えてみたいと思います。

2. いま食料が大幅に値上がりしています。パンもバターも牛乳も1割も2割も値上が  りしているということで、裕福なご家庭はいいかもしれませんが、月々はトントンとか、ボーナス頼みで月々の赤字を埋めて暮らしているといったお宅はたいへんです。世界中で穀物価格が上昇している。途上国の貧しい人々にとっては、それは飢え死にの危機を意味しています。穀物価格上昇の理由は複合的なものである言われています。

① まず、小麦の大産地であるオーストラリアが2年連続で干魃に見舞われたことが供給不足を招いたということが言われています。気象異変は世界的規模で、これも二酸化炭素排出による「温暖化」と関係があると言われます。

② さらに、中国やインドなどこれまで貧しかった国々がだんだん豊かな社会になって、これまで穀物を食べていた人々が肉を買って食べるようになった。そのことは結構なことなのですが、急速に伸びる食肉の需要を満たすためには、家畜のエサとなる資料穀物が大量に必要になってくる。

③ それに輪をかけて、「バイオエネルギー」の推進ということが穀物の値上がりに輪をかけることになりました。温暖化は科学的に証明されていないなどと言っていたブッシュ政権が、中間選挙での敗北や、ゴア元副大統領のキャンペーンが有権者の支持を受けていることを見て突然方向転換し、温暖化対策に熱を入れたわけですが、これでアメリカの農家はその方がずっと儲かるということで、今まで日本の醤油や豆腐のために作っていた大豆を燃料用のトウモロコシに切り替えるといったことが起こり、これまで作られていたトウモロコシも燃料用にまわされて値段が上がり、これまでトウモロコシを食べていたような豊かではない人々が、これはアメリカ大陸だけではなくて世界的に、食料が手に入らなくなって飢えるようにさえなってしまった。これを受けて、バイオエネルギーを推進するとしていたヨーロッパではEUなどもその政策を見直そうという動きを見せています。

④ さらに、これに輪をかけているのが「投機的なマネーの動き」というものです。アメリカの住宅バブル崩壊で株式市場などにも影が差す。石油の値上がりも激しいけれども、これはもう値上がりしすぎで、これ以上これに注ぎ込んでもあまり儲からないかもしれないと言っているところに、穀物価格が急上昇をはじめて、これがどっと流れ込むということが起こった。アメリカを始めとする先進国の金融政策の不備、投機マネーを野放しにしていることなども原因になっているのです。

 こうして見渡してみると、一見別々のことのように見える「環境問題」、「中国・インドの台頭と世界経済」、「エネルギー政策」、「食料・農業問題」、「経済政策」、「国際金融」といったものが複合的にからみあっていることが分かります。逆に言えば、今の世界は「環境問題」なら環境問題、「金融政策」なら金融政策といったように、個々の政策を行き当たりばったりに、あるいは特定の業界の声だけに耳を傾けて政策を決めていてはうまくいかない。いろいろなことを、それぞれの連関も視野に入れながら、総合的に企画していくということが重要になってきていることがわかります。

洞爺湖サミットにおいても、おそらくそういった方向で議論が行われるのではないかという気がします。われわれも、こういった問題を総合的にどう組み立てて、国益を守り、国民生活を守っていくのかということを、もう一度しっかり考え直す必要がありそうです。

3. 食料と並んで値上がりが激しいのがエネルギー価格です。これも、一部では「中国  やインドが大量に使うようになったので」ということが主な理由として言われますが、一方で「現状では、実際の需要をまかなうだけの石油生産は行われている」とも言われており、やはり「投機マネー」の動きなどの要因を指摘しなければなりません。

さらに、石油については食料の話しと違って「戦争」という要因を重視しなければならないと思います。端的に言って「イラク戦争」の問題です。ブッシュ政権は、ある意味で国際社会の多数派の意見を押し切ってイラクの問題を戦争で解決しようとした。わが国も、小泉政権の時代ですけれどもこれを「支持する」と表明した。

憲法第9条を持つ国として、国際紛争を戦争で解決しようというのを「支持する」 というのはスジとしておかしいというのが私が言っていたことですが、そのことを置いておくとして、イラクに対して戦争をしかけた結果どうなったか、今どうなっているかということを考えてみますと、イラクの情勢はご承知のようなことですし、イランの問題、レバノンの問題、アフガニスタンの問題など、そしていま必死で取り繕っているパレスチナの問題など、端的に言って中東情勢は収拾のつかない様相を呈していて、これが原油高の大きな背景にあることは言うまでもないことなのです。さらに、アメリカの中東や世界におけるリーダーシップは後退する結果を招いているわけです。

わが国やアメリカの中東をよく知る人々はこうした状況を的確に予測していましたので、そういう専門家の意見を無視して開戦を支持するということが良かったのかどうか、よく反省する必要があります。「世界を民主化する」という理想は良いのですが、政治は「結果」ですから、よい理想を掲げていればどんな結果を招いても免罪されるというものではありません。

4. 4月にイラクへの自衛隊派遣について名古屋高裁が「違憲」判決を出すということ  がありました。ひとつには、航空自衛隊が活動しているバクダットの空港は戦闘地域なのだから、憲法という以前に「イラク特措法」違反ではないかということでした。さらに、輸送機で米軍の兵員や武器弾薬を運ぶのは、まさしく国際紛争を武力で解決しようとする人々の活動と一体であり、国際紛争解決の手段としての戦争を放棄している憲法第9条に違反するというものでした。

この判決とその後の政界などの反応については、二つ言わなければならないことがあります。一つは、政府与党に「この判決の憲法判断は判決の主文でない、傍論なのだから」とことさら軽視するような意見が目立つことです。私は、こういった姿勢は、憲法の権力の相互抑制を重視する考え方から言って望ましいものだとは思いません。「権力の相互抑制機能の作動」として、司法府から「違憲」との判断が示されたわけですから、少なくとも「司法の判断として、重く受け止め、立法や法の運用に憲法の趣旨に反することがないか、あらためてよく再検討してみたいと思います」と謙虚な立場を示すのが本来とるべき姿勢ではないかと私は思います。もちろん、「傍論である」という指摘自体はその通りであり、この判決が司法全体の意思決定というわけではないわけですが、しかし基本姿勢としてはそのようであるべきだと思うわけです。

自衛隊についての、戦後のこれまでの議論を大くくりにしますと、まず第一段階としては、社会党などに異論がありながらも「戦争放棄の憲法は、侵略に対する自衛権や自衛隊の保持は認めている」という線が、戦後の自民党政権の一貫した姿勢でした。

そして冷戦終焉後、第二段階として「国連の活動、しかも紛争解決のための武力行使ではなく、例えば停戦している二つの勢力の間に割って入るといった活動は、多少危険だけれども国際社会の一員としてやるべきだ」というのが、宮沢内閣の時に成立した国連PKO協力法でした。ここまでは、国民合意も成熟してきているのではないかと思います。    

第三段階は、橋本内閣、小渕内閣がクリントン政権との間で進めた、いわゆる「周辺事態」の話しで、安保条約を結んでいるアメリカ軍をいざという時は手伝える範囲を広げましょうという話しでした。後藤田正晴さんなどもそうでしたが、私はここのところは慎重に考えるべきと考えていました。またこの内容は安保条約そのものには含まれていないもので、国内法としては整えられているけれども、アメリカとの約束という面では「国会で批准された条約改正」という手続きを踏んだものではありません。

私の見るところ小泉政権の「イラク戦争支持」と自衛隊のイラク派遣は、法律としては整えられているけれども、この第三段階をも飛び越えて「武力で紛争を解決しようとするアメリカを、兵員弾薬輸送で手伝う」というところまで飛躍してしまっているように思うのです。    ですから、私はこの判決もひとつの薬として、アメリカもマケイン氏が大統領になるにせよ、オバマ氏が大統領になるにせよ、とにかくブッシュ政権は終わって仕切り直しになるわけですから、わが国も一度頭を冷やして、憲法と自衛隊といった基本的な問題についても一度しっかり整理し直した方がいいのではないかと思います。

なお、判決をめぐって航空自衛隊の最高幹部が「そんなの関係ねえ」と発言したと伝えられましたが、これは言語道断のことであり、ほんのひと世代前の経験に鑑みましても、軍事力を持った集団の奢り高ぶりといったものは厳しく戒めていく必要があると思います。

5. 道路特定財源問題、あるいは後期高齢者医療問題などの弱い立場の人のセーフティーネットの問題など、いま大きな問題になっていることも、21世紀になってからわが国がとってきた路線、すなわち「構造改革」とは言うけれども、言ってみれば何でも横並びで歳出カットさえすれば良いというやり方全体をよく見直す必要を示していると思います。

ヨーロッパのような高福祉高負担では、経済成長が阻害されると言われ続けましたが、現実には例えば「一人あたりのGDP」といった指標で、つい最近ドイツやフランスに抜かれて世界18位に後退したと報じられました。日本経済がぱっとしないのと比べ、「高福祉・高負担」のフィンランドやノルウェーなど北欧諸国の経済は絶好調と言われています。

幸い、今年の秋か来年には総選挙が行われます。自民党も、民主党も、国会での抗争や、党内政局にばかりかまけることなく、21世紀初頭のわが国と世界の歩みをよく再検証し、国民に「これからの日本の進路はこれだ」という路線をしっかり整理して打ち出してもらいたいと思います。

                                                 以上 

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