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2009年2月23日 (月)

内橋克人氏インタビュー全文(『朝日新聞』2009年2月23日付朝刊オピニオン欄掲載)

【以下は、『朝日新聞』2009年2月23日付13面オピニオン欄掲載の経済評論家・内橋克人氏のインタビュー記事の全文写しです】

資本主義はどこへ
協同考え新たな基幹産業を

競争と共生

内橋克人さん 経済評論家

  内橋さんは市場万能主義、競争至上の新自由主義経済に異議を唱え、90年代から「このままでは雇用が破壊される」「社会のきずなが断たれる」と警鐘を鳴らしてきました。現状をどう見ますか。
 「今の日本は一番大事なものを失いました。それは、人間の尊厳と景気の自律的回復力です。これまでは景気が悪くなっても設備投資が動き出し、やがて働く人びとの所得が増えて好況になった。しかし、日本はいびつな不均衡国家になってしまった。過剰な外需依存と格差拡大、簡単に職を奪われ、安心して消費もできず、景気変動に耐える大事な力を失ってしまったのです」
    なぜ極端な不均衡国家に。
 「日本はグローバル化に『対応する』べきところを『適応する』ことばかり考えてきました。外資を稼いでもらおうとトヨタやソニーなど『グローバルズ』(日本型多国籍企業)に政策支援を集中させ、同時に国内ではリストラが進んだ。小泉構造改革の下で始まったいわゆる『いざなみ景気』の中で、製造業への派遣労働が自由化され、海外に進出していた工場が『日本回帰』と絶賛されて帰ってきた。つまり、国内でも低賃金で雇用できるようになり、輸出によって海外で稼ぎまくった。一方、多くの派遣労働者は社会保障の枠外に置かれ、クビを切られている。賃金、社会保障、地方、農業、あらゆる面で格差が拡大した。グローバルズが稼いだ外貨は十分還元されず、米国の浪費にすがることもできなくなって操業停止です」
    雇用問題は深刻です。
 「市場万能システムでは人間は単なる労働力であり、経営者も景気の条件反射のように労働力を切る。もともと雇用を減らすのは最後の選択だから、例えば雇われている人の数を示す雇用指数は、足元の景気よりやや遅れて動く『遅行指数』とされています。それが今や、景気の先行きを示す『先行指数』のような状況です」
                      
 ■企業化した「公共」

    内橋さんたちの異議は、しかし市場主義の潮流の中では力を持たなかった。
 「過去30年に及ぶ新自由主義政策は周到につくられています。時の権力者たちは、一つの思潮を広めるのに必ず学問とマスコミを動員します。アメリカでは『シカゴ学派』を、日本では規制緩和の諮問会議などを通して、『官から民へ』『働き方の多様化』『努力した者が報われる社会を』などとあおった。私は、こう問うてきました。『民』は民間巨大資本の民ではないか。働き方の多様化ではなく、働かせ方の多様化ではないか。努力が報われる社会は結構だが、競争社会では最終的に一人勝ち、敗者は努力不足だからあきらめろというのか、と」
 「日本人は、時流に乗る熱狂的等質化の傾向が強く、強い者に弱く、弱い者には強いという特性があって、少数の異議申し立てが排除されやすい。これは危険だと思います。『公共』という意識も弱く、公共の企業化という流れの本質もなかなか見抜けなかった」
    現在の資本主義は破綻しかけている、との見方があります処方箋はありますか
 「世界の国内総生産(GDP)の合計は54兆ドル(約5千兆円)ほどなのに、金融市場を暴走するホットマネーは最大で約540兆ドルともいわれます。利が利を生む虚のマネーが巨大化して実体経済を振り回してきた。もはや制御不能です。ホットマネーはいずれ自滅すると思いますが、実体経済を救うためにも、国境を越えて本当の専門家を集め、真剣に国際協調に取り組む必要があります」

 ■分断から連帯へ

    内橋さんは「共生経済」、具体的には「F(食料)E(エネルギー)C(ケア)自給圏(権)」を提唱しています。
 「競争の原理は分断です。分断して対立させ、競争させる。切磋琢磨は結構ですが、共生は連帯と参加と協同を原理として食料、エネルギー、介護など人間の基本的な生存権を大事にする。FとEとCを自給し、消費するだけでなく、そこに雇用を作り出す。その価値観の下で新たな基幹産業を創出し持続可能な社会に変える。経済効果は大きいはずです」
  「オバマ大統領は『無保険者に保険を』と公約し、財源として富裕層優遇減税を見直す考えです。所得再配分政策の復活です。FEC自給圏に通じます」
  国内経済優遇は保護主義につながるという意見や、逆に江戸時代のような自給経済に戻ろう、といった声も出てます。
 「とんでもない。FEC自給圏は人間の安全保障です。私は古き良き日本がいいなどとは思いません。差別や身売りがあり、基本的な生存権が奪われていた時代ではなく、人間を第一義とする共生経済をめざしているのです。それは小さな地域や若者たちの間で、すでに始まっている未来です」
                               
(聞き手 都丸修一)

内橋克人(うちはし・かつと)
 32年生まれ。神戸新聞記者を経て67年から経済ジャーナリスト、評論家として活躍。日本の技術者たちを描いた「匠の時代」シリーズをはじめ、「規制緩和という悪夢」「経済学は誰のためにあるのか」「共生の大地」「悪魔のサイクル」など、現場主義と実証に力を入れた著書多数。

【以上、写し】                                 

※森田コメント:『朝日新聞』経済部は、一貫して新自由主義路線=小泉・竹中路線=を支持し煽ってきた。リーマンブラザース破綻と世界経済変調という事態を経て、昨年10月に突然、サミュエルソン氏の新自由主義批判の寄稿を掲載して総括なき部分的方向修正を示している。 小泉・竹中時代に内橋氏の大型インタビューなどを掲載してきたのは朝日ではなく、読売だった。今回のインタビューもWEB版には不掲載。
 ところで、森田が期待する政権交代後の内閣像は「内橋克人財政経済担当大臣」「財政経済諮問会議の民間委員の一人は神野直彦氏」といった姿だ。「チェンジ」しかも「明確なチェンジ」が必要なのだ。

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コメント

◆技術者等の非正規雇用を明確に禁止すべき

▼民主党は、マニフェスト案において、『原則として製造現場への派遣を禁止』とす
る一方で、『専門業務以外の派遣労働者は常用雇用』としています。『専門業務』の
『常用雇用』が除外され、かつ『専門業務』に技術者 (エンジニア) 等が含まれると
すれば、これは看過できない大きな問題です。
技術者 (エンジニア) 等の非正規雇用 (契約社員・派遣社員・個人請負等) を明確
に禁止しなければなりません。
改正前の労働者派遣法に関する「政令で定める業務」の内容は、技術の進展や社会
情勢の変化に対し時代遅れになっており、非正規雇用の対象業務を、全面的に見直す
必要があります。
また、派遣社員だけではなく、「契約社員」・「個人請負」等を含む非正規雇用を
対象としなければなりません。

【理由】

●技術者等の非正規雇用が『製造現場』の技能職に比べて、賃金・雇用・社会保険等
において有利だという誤解があるならば、そのようなことは全くない。長時間労働
など過酷な労働環境に置かれている割には低賃金の職種で、雇用が安定しているか
というと、『製造現場』の技能職以上に不安定である。

技術者等が『製造現場』の技能職に比べて過酷な労働環境に置かれているにもかか
わらず、非正規雇用として冷遇されるのであれば、技術職より技能職の方が雇用・
生活が安定して良いということになり、技術職の志望者が減少して人材を確保でき
なくなる。努力して技術を身につけるメリットがなくなるため、大学生の工学部・
理学部離れ、子供の理科離れが加速する。一方、技能職の志望者は増加し、技能職
の就職難が拡大する。

●技術者等の非正規雇用が容認されると、マニフェスト案『中小企業憲章』における
『次世代の人材育成』と、『中小企業の技術開発を促進する』ことが困難になる。
また、『技術や技能の継承を容易に』どころか、逆に困難になる。さらに、『環境
分野などの技術革新』、『環境技術の研究開発・実用化を進めること』、および、
『イノベーション等による新産業を育成』も困難になる。

頻繁に人員・職場が変わるような環境では、企業への帰属意識が希薄になるため、
技術の蓄積・継承を行おうとする精神的な動機が低下する。また、そのための工数
が物理的に必要になるため、さらに非効率になる。事業者は非正規労働者を安易に
調達することにより、社内教育を放棄して『次世代の人材育成』を行わないように
なる。技術職の魅力が低下して人材が集まらなくなるため、技術革新が鈍化、産業
が停滞する。結局、企業が技能職の雇用を持続することも困難になる。

●派遣社員だけではなく、「契約社員」・「個人請負」等を含む非正規雇用を対象と
しなければ、単に派遣社員が「契約社員」・「個人請負」等に切り替わるだけで、
雇用破壊の問題は解決しない。

企業は派遣社員を「契約社員」や「個人請負」等に切り替えて、1年や3年で次々
に契約を解除することになり、現状と大差ない。

▲上記の様に、『製造現場への派遣を禁止』するにもかかわらず、技術者等の非正規
雇用 (契約社員・派遣社員・個人請負等) を禁止しないのであれば、技能職より雇用
が不安定となった技術職の志望者が減少していきます。そして、技術開発・技術革新
や技術の継承が困難になるなどの要因が次第に蓄積し、企業の技術力は長期的に低下
していきます。その結果、企業が技能職の雇用を持続することも困難になります。

これを回避するには、改正前の労働者派遣法に関する「政令で定める業務」の内容
を見直して技術者等の非正規雇用を禁止し、むしろ技術者等の待遇を改善して、人材
を技術職に誘導することが必要です。これにより、技術者等は長期的に安心して技術
開発・技術革新に取り組むことに専念できるようになります。その成果として産業が
発展し、これにより技能職の雇用を持続することが可能になります。

もしも、以上のことが理解できないのであれば、管理職になる一歩手前のクラスの
労働者ら (財界人・経営者・役員・管理職ではないこと) に対し意識調査をするか、
または、その立場で考えられる雇用問題の研究者をブレーンに採用して、政策を立案
することが必要です。

投稿: | 2009年8月27日 (木) 17時53分

雇用問題を重視する人は、情勢によっては社民 (または共産) に投票すべき

衆院選での投票先調査で、特に社民党が伸び悩んでいるようです。
自民・公明に愛想をつかした人が民主に流れるのは、結構なことです。
しかし、元々社民 (または共産) 支持の人が民主に流れるのは、場合によっては良いことではありません。

雇用問題を重視する人は、投票時に最新の情勢を判断し、比例区では
(1) 自民・公明に対し民主が確実に優勢でない場合は民主に投票し
(2) 自民・公明に対し民主が確実に優勢である場合は社民 (または共産) に投票した方がよいでしょう。

現実問題として、民主党の中には保守的な議員も多くいます。
連立を組む社民党議員が減少し、民主党が単独過半数を超えると、
民主党が保守化する懸念があります。

この点は要注意です。たとえば、
民主・社民・共産各党の本部・各都道府県支部・各衆議員候補・各参議員に対し、
技術者等の非正規雇用禁止を希望するメールを送ったところ、
社民党の都道府県支部の一つからは、次のような回答がありました。

> メール有り難うございました。
> 民主党のマニフェスト内容で「原則として製造現場・・・・派遣を禁止」についても、押し上げるのに大変でした。
> 民間大企業の労働組合は、多くは旧同盟系が主流なので、「製造現場への派遣の禁止」には、かなりの抵抗がありました。
> 社民党の踏ん張り抜きには出来なかった事項ですが、指摘された「技術者等の非正規雇用禁止」はかなりの協議が必要かと思います。
> 派遣労働そのものを禁止する状況に引き戻すには、専門業務以外はしっかりと派遣を禁止することをガードすることが、まず重要と思います。
> 政権交代は確実です。社民党は、雇用、平和で民主党のブレを引き戻し、闘いながら政権内でガンバルことが役割です。
> 今後とも、意見をメールして下さい。

これによれば、社民党の発言力が弱くなると、非正規雇用対策が後退する恐れがあると考えられます。
したがって、雇用問題を重視する人は、情勢によっては社民 (または共産) に投票すべきでしょう。
賢い有権者なら、戦略的に投票しましょう。

この件は特に強調していただきたいと思います。

以上、自民・公明に対し民主が圧倒的に優勢である場合に考慮すべき話です。

投稿: | 2009年8月27日 (木) 17時54分

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