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2009年3月12日 (木)

李明博・韓国大統領の対北朝鮮政策-今こそ日韓協力強化に動くべきとき

午後、有楽町の東京国際フォーラムで開催された韓国大使館と毎日新聞社主催のシンポジウムを聴講した。

基調講演者の一人、権哲賢(クォン・チョルヒョン)駐日大使は、さすがに政治家出身の大使らしく、また軍事政権時代に国を追われるような形で筑波大学に留学して社会学博士号をとったという日本経験の基盤の堅さから、大きな視野の、しかし足が地に着いた感じの話しだった。

森田は初めての参加だったが、何年かに一度開かれるこうした催しに毎回参加しているという元韓国紙記者で大学講師の李ホンチョン氏に聞くと、歴史問題がほとんど取り上げられなかったことが数年前と様変わりということだった。

権大使は、たしかに李明博大統領の実用主義の外交が、昨年の文部省の指導書での独島(竹島)問題への言及の問題で一挙に台無しになりかけた危機について触れたけれども、日帰り参加の朴チョリ・ソウル大国際大学院副教授や、経済面での日韓協力の必然性を説いた金ジョンシク延世大教授、浦田秀次郎早大教授の発言は皆、前向きの話ばかりだった。

森田にとっていちばんの収穫は、今までいまひとつ明確に像を結んでいなかった李明博政権の対北朝鮮政策について、道下徳成・政策研究大学院大学助教授のよく整理した話しを聞き、またコーディネーターの金子秀敏編集委員の突っ込みを含めたパネラーのコメントを聞くことによって、少し見通しが良くなったことだ。

道下助教授、朴チョリ副教授らによれば、李明博政権の対北政策は「核兵器開発阻止」に明確にフォーカスされている。まずは政権発足当初から「非核開放3000」として提唱された、「北が核を放棄すれば北の一人あたりGDPを3000ドルのレベルまで引き上げることを支援する」という内容だ。

しかし、北は前政権が言わば見返りを求めることなく行っていた支援の一部が停止されたことに激怒したことが報じられ、「非核開放3000」もその発動が「北の核開発停止が完全に確認された後」ということでは、これまでと180度違う話になってしまうのではないかと漠然と思っていた。

この点について道下助教授によれば昨年夏、構想3000はさらに内容が練られ、「共生共栄政策」といった名前がつけられたそのロードマップは柔軟なもののようだ。

①北の核無能力化の方向性がはっきりしたところで、「非核開放3000」を直ちに実行に移せるよう準備に着手する。

②核廃棄のプロセスが明確になった段階で、教育分野や生活水準の向上などの支援を始める。

③核廃棄実現により、全ての分野で400億ドル規模の支援を実施する。

こういった内容らしい。さらに道下助教授は「韓国が一人、太陽政策でどんどん援助を送る政策から、現在の比較的厳しい線になったことで、対北朝鮮政策の基本線において日本と韓国の差はなくなった」「ただし、韓国と日本の違いは、韓国は北が核放棄を進めれば、わが方はこのような援助を進めるというロードマップを持っているのに対し、日本にはそのようなものが準備されていないことだ」。

今日のシンポジウムでは触れられなかったけれども、「拉致問題」が日本のロードマップに含まれるのは良いことかもしれない。「拉致問題が完全に解決しなければ一歩も動かない」「支援は核が完全に放棄されてからだ」というのでは、原理原則には忠実かもしれないけれども、目的を達成するのに合理的なロードマップとは言えないだろう。韓国からも「友達がいが無いじゃないか」と言われることになる。

ここ何日か、NHKテレビのニュースでも拉致被害者の家族が釜山で金賢姫・元死刑囚と面会するというニュースばかり目立っていた。原理・原則から考えればその通りで、国民感情に寄り添うということではそうなのかもしれないが、わが国の現実の安全保障から考えても、韓国を初めとする北東アジア各国の関心の順位から考えても、拉致問題の東アジアの国際政治における優先度は「北の核兵器開発阻止」よりも低いという現実を知っておくことも必要だろう。

経済協力では、発言者は一様に「日韓FTA」の重要性を強調した。締結した場合、その経済効果は農業分野での損失よりはるかに大きいこと、そしてこの問題は政治の決断にかかっていることが強調された。森田としては、最近の世界経済の現状を反省し、「人、モノ、カネの自由な移動」のメリットを強調するだけでなく、共通の金融監視体制の構築、社会保障や雇用制度の共同研究などについても協力の対象として取りあげてほしいところだが。

経済といえば、もう一人の基調講演者である東レの榊原定征社長が紹介した、自社に例をとっての韓国への技術協力や投資の成功の秘密の話しも参考になった。70年代に次々に韓国に進出した同業の大手日本企業は、ほぼ80年代、90年代までに全部撤退してしまったそうで、現地の関係7社の活動が継続している東レが一人踏ん張っているようだ。

権大使も、朴チョリ副教授も、「大阪生まれの大統領」「日韓議連会長が国会議長」「外相は元日本大使」「日本大使も日本留学経験のある政治家出身」という韓国側の布陣は、日韓関係にとってこれ以上は考えられないもののようだ。

一方、他のところで聞いた話だが、最近の麻生総理の訪韓も韓国メディアは厳しかったものの、一般の印象はとても良かったというし、北東アジア課の人の話しを間接的に聞いたが、中曽根外相も報道されているわけではないが、方々に知り合いがたくさんいてたいへん歓迎された様子で、北東アジア課にとっては役に立つ存在であるらしい。

ここは一つ、民主党はじめ次期政権を担う方々には対韓国政策も良く練っておいていただきたい。やはり「北東アジア」が日本の地元であり、選挙も外交も、地元が肝心というのが真実なのではないだろうか。

【以下、毎日新聞記事切貼】

日韓シンポジウム:駐日韓国大使が「A2で協力を」

 韓国の李明博(イミョンバク)政権発足1周年を記念し、日韓の専門家を招いたシンポジウム「今後100年の日韓関係のために」(毎日新聞社、駐日韓国大使館主催)が11日、東京都千代田区で開かれた。米国のオバマ政権誕生や世界的な金融・経済危機という状況下で日韓両国がどう協力すべきかについて意見が交わされ、参加した約200人が耳を傾けた。

 基調講演では権哲賢(クォンチョルヒョン)・駐日韓国大使が「李明博大統領は昨年1年間で57回の首脳会談を持ったが、最も多いのが6回の日本だった」と紹介。「アジアを代表する先進的な市場経済国家である韓国と日本がA2(アジアの2カ国)として諸問題に共同で対処し、中国を加えたA3(同3カ国)に発展させるべきだ」と提言した。

 また、榊原定征(さだゆき)・東レ社長(日本経団連副会長)は、韓国での事業展開に触れながら、日韓の産業・技術面での協力や経済連携協定(EPA)推進の必要性を訴えた。【成沢健一】

毎日新聞 2009年3月12日 東京朝刊

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