« 漆間官房副長官「自分からは辞めぬ」は、「総理が、警察敵に回してクビにできるわけないだろう」という意味 | トップページ | 李明博・韓国大統領の対北朝鮮政策-今こそ日韓協力強化に動くべきとき »

2009年3月10日 (火)

オバマ政権がES細胞研究への助成解禁-「ひとりよがりのキリスト教原理主義」から「科学を尊重する政治」へのチェンジ

オバマ大統領がES細胞研究への連邦助成を解禁する大統領令に署名した(毎日新聞記事を後掲)という。アメリカ政治がブッシュ時代の「ひとりよがりのキリスト教原理主義」路線から、「科学尊重の現実重視」の路線へのチェンジを進めていることの証左だ。

これについて、朝からNHKのニュースを聞いていて気になったのは「キリスト教原理主義」への言及が無かったことだ。毎日の記事も「保守派」としているが同様だ。

【NHKのページより】

米大統領 ES細胞研究を助成  NHK 3月10日 6時52分

アメリカのオバマ大統領は、人の受精卵が分裂する過程で取り出すことができる特殊な細胞「ES細胞」を使った医療研究を助成する大統領令に署名し、「生命倫理の一線を越える」として拒否権を発動したブッシュ前政権との違いを鮮明にしました。

受精卵が分裂する過程の「胚(はい)」から取り出すことのできる「ES細胞」は、人体のさまざまな組織を作り出し、難病の治療への応用が注目されています。これについてオバマ大統領は9日、ホワイトハウスで演説し、「多くの研究者や医師、難病患者やその家族が待ち望んできた『変革』をもたらすときがきた。ES細胞の研究への助成を解禁する」と宣言しました。そのうえでオバマ大統領は「これまでの政権は健全な科学と道徳的価値観を取り違えてきた。この2つは両立できる」と述べ、研究を助成するための大統領令に署名しました。この研究をめぐっては、「初期の生命を破壊するものだ」という反対論が強いことから、オバマ大統領は厳しいガイドラインを設けるなどの配慮を示しましたが、議会が可決した法案に対し、「生命倫理の一線を越える」として、2度にわたって拒否権を発動したブッシュ前政権との違いを鮮明にした形となりました。

ブッシュ大統領による連邦予算支出禁止が、ブッシュ氏個人のキリスト教右派のイデオロギーや、選挙で共和党の強力な基盤になっているキリスト教原理主義勢力に対するサービスとして「歪められた政策」であったことは自明のことであるのに、容疑者がイスラム圏の人物による事件の際にはすぐに「イスラム教徒」「イスラム原理主義」とあげつらうのに対して、アメリカのキリスト教原理主義勢力に対しては遠慮するというのはダブルスタンダードであり、メディア全般に見られるバイアスだ。

もちろん、イスラムを名乗る過激派に対して「イスラム過激派」と表記することは適切だが、こんどのようなES細胞に関わるニュースで「キリスト教」に触れないなら、ただ単に「過激派」とすることが適当だろう。

いずれにせよ、シリアとかパレスチナの地に起こったユダヤ教、キリスト教、イスラム教は、唯一絶対神を信仰するいわば兄弟宗教で、世界中の紛争の大半はこのいずれかが関わるということは、まことに迷惑な話なのだが、日本人がこの中で、とりたててキリスト教の肩を持ついわれは無いはずなのだ。いくら自民党政権が盲目的なアメリカ追従を続けたとはいえ、アメリカが「宗主国」というわけではないのだから。

ちなみに板垣雄三氏によれば、「原理主義」ということばはキリスト教内部の概念で、「イスラム原理主義」という言い方は、キリスト教圏の人がそれを当てはめて使っているに過ぎないそうだ。

BS1の「おはよう世界」の税所玲子キャスターは「キリスト教の右派」ということばを使って解説していたが、ブッシュ大統領の連邦予算支出禁止は「こうした声に配慮して」という表現にとどまり突っ込み不足の印象だった。

【以下、切貼】

ES細胞:米、研究へ助成解禁 オバマ氏、大統領令に署名

 【ワシントン及川正也】オバマ米大統領は9日、ヒト胚(はい)性幹細胞(ES細胞)研究への連邦予算支出を解禁する大統領令に署名した。受精卵を利用するES細胞研究について、保守派のブッシュ前大統領は01年8月、「生命の破壊につながる」として連邦政府の助成対象を既に作られているES細胞に限定し、新たな研究への支出を禁止していた。

 オバマ大統領は「研究に取り組む科学者を積極的に支援する」と表明。保守派の反対論に対し「健全な科学と道徳的価値観は矛盾しない」と反論する一方、実施にあたり「厳格な指針」を策定する考えを示した。

==============

 ■解説

 ◇米の研究、より加速--日本・厳しい指針、「遅れ」批判も
 オバマ米大統領がさまざまな細胞や臓器になるES細胞研究支援に踏み切り、米国の研究は加速しそうだ。日本発の人工多能性幹細胞(iPS細胞)研究も技術の基礎はES細胞にある。この分野で米国が「独走」すれば、再生医療の競争で日本は厳しい状況になるが、受精卵を扱うだけに歯止めをどうかけるのかが改めて問われる。

 ヒトES細胞規制は各国で差がある。独は作成を禁止、仏は06年に作成を認めた。英は不妊治療で余った受精卵だけでなく、ES細胞作成のために受精卵を作ることが可能だ。日本は余剰の受精卵から作成を認めている。

 ブッシュ政権下では州の予算や民間の資金で連邦予算を補った。00~06年発表の関連論文453本の40%が米国発。英国10%、韓国8%などと続き、日本は2%、10位だ。

 背景には日本の厳しい指針がある。当初は細胞を実験室で使うだけでも、国が全研究員の適性審査を行った。研究者の批判を受けて、見直しが進められているが、中辻憲夫・京都大教授は「研究推進を掲げつつ、実際はブレーキをかけている。遅れは取り返しがつかないほどだ」と話す。

 遅れは、人工的に作ったES細胞であるiPS細胞の研究にも響く。米国の決断は日本の研究態勢にも波及しそうだ。【奥野敦史】

毎日新聞 2009年3月10日 東京朝刊

|

« 漆間官房副長官「自分からは辞めぬ」は、「総理が、警察敵に回してクビにできるわけないだろう」という意味 | トップページ | 李明博・韓国大統領の対北朝鮮政策-今こそ日韓協力強化に動くべきとき »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/136601/44301887

この記事へのトラックバック一覧です: オバマ政権がES細胞研究への助成解禁-「ひとりよがりのキリスト教原理主義」から「科学を尊重する政治」へのチェンジ:

« 漆間官房副長官「自分からは辞めぬ」は、「総理が、警察敵に回してクビにできるわけないだろう」という意味 | トップページ | 李明博・韓国大統領の対北朝鮮政策-今こそ日韓協力強化に動くべきとき »