政治的判断が稚拙に見える「バシル大統領訴追」だが、世界の人道と人権の歴史にとっては必要な蛮勇かもしれない
「国際刑事裁判所(ICC)がスーダンのバシル大統領を起訴」というニュース(後掲)があった。
ある国の国家元首による残虐な行為に対し、国際社会が法に基づいて人権を守るための措置を執行するという、大きくはこれからの世界が進むべき方向に則ったことである。
もちろん、執行にあたっては実際には難しい問題がある。「スーダンの主権の独立」との関係で、誰がどうやってバシル大統領を逮捕できるのかという問題がある。ダルフール紛争には大きく言ってイスラム教徒のアラブ人勢力による、キリスト教徒の黒人勢力の弾圧という構図があり、また中国がバシル政権に肩入れしてきたという側面もあるため、他の同様な問題よりも欧米のメディアなどの注目を集めているという見方もある。
さらに言えば、今回の訴追により国連や各国のダルフールの難民支援活動がバシル政権側により脅威にさらされることにつながるといった問題もある。
ダルフールのいままさに迫害されている人々の状況が実際に良くなることと、新しい国際刑事機関により、普遍的な正義が実現される手だてが整えられること。一度に両立することが難しい問題にも見えるが、世の中のことで簡単に解決できることなどない。関係者の努力と知恵により人道と人権を守る国際機関が成長するステップとなってほしい。手をこまねいていては歴史は前に進まない。
【以下、切貼】
スーダン大統領に逮捕状 ダルフール紛争でICC 共同通信 2009年3月4日
【ブリュッセル4日共同】スーダン西部ダルフール紛争をめぐり、国際刑事裁判所(ICC、オランダ・ハーグ)は4日、戦争犯罪と人道に対する罪などで、スーダンのバシル大統領(65)に対する逮捕状を発付した。2002年に設立条約が発効したICCにとって現職の国家元首に対する初の逮捕状。同法廷のモレノオカンポ主任検察官が昨年7月に請求していた。
ダルフール地方では03年2月、アラブ系の中央政府に対する黒人系勢力の反政府活動が激化、政府軍はアラブ系民兵と協力して、黒人系住民の村などを無差別に襲撃した。国連によると、約30万人が死亡した恐れがある。
検察官は、大統領が軍などを指揮して少なくとも3万5000人の市民を殺害したほか、約250万人を難民キャンプに送り、無差別に強姦したなどと主張している。
ICCは自前の警察力を持たないため、逮捕状執行は外遊先の国が身柄を確保した場合などに限られる見通しだ。ICCは07年5月にもスーダン政府高官ら2人に対する逮捕状を出したが、政府は引き渡しを拒否した。
【以上、切貼】
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コメント
You Wrote;
基本的な誤り;
「ダルフール紛争には大きく言ってイスラム教徒のアラブ人勢力による、キリスト教徒の黒人勢力の弾圧という構図があり」
ダルフール地方の被害者は、イスラム教徒であり、アラブ中央政府もダルフール人も形質的には黒人である。南北スーダン内戦と混同をしています。
ICCが政治(国連ないし安保理)から独立の認識がなく稚拙と言うのは稚拙な判断。
評論家は名乗らないほうが良いと思う。
投稿: 事実から | 2009年4月11日 (土) 16時37分
南北内戦と混同しているのではないかという指摘は、言われてみればひょっとしてというところあり。勉強してみます。この点では評論家は名乗らない方がいいかもと言われても仕方がない。
ICCが国連ないし安保理から独立というのは認識しています。「稚拙だ」と言っているのではなく、「稚拙に見える、but‥」という論旨のつながりのつもりですが。
森田の問題意識としては、法律論と共に、法律判断が引き起こす現実についても目配りが必要だろうということです。
「俺は正しい。悪い結果は全て犯人のせいだ」という独善的な姿勢では、共感を広げることはできないでしょう。
投稿: 森田敬一郎 | 2009年4月11日 (土) 23時23分
だから、「俺は」は単一ではなく、政治と司法(ICC)で分立しているということで、司法が「政治的に稚拙」と司法を評論するのは、稚拙だと言うこと。
また「正しさ」の基準は、国際法によっており、なにも「俺が」決めた基準で逮捕状が出されたわけではない。
そんな捨て台詞みたいなこと言わないで国際法の起訴と大量虐殺に関するルワンサやコソボの特別法廷からから発展した常設国際法廷の存在意義を勉強し説明して「正義」を語りなさい。
さもなければ容疑者スーダン大統領の言い分を擁護しているに過ぎない。容疑者を擁護するならそのつもりで、主権の不正義の擁護について語りなさい。
評論家ならなあ。
投稿: 事実から | 2009年4月12日 (日) 10時01分