中東イスラム

2009年5月 2日 (土)

映画「スラムドッグ$ミリオネア」(感想)

昨日は出勤だったが、映画1000円の日だったので新宿バルト9で待ち合わせ、家族で「スラムドッグ$ミリオネア」の19時10分の回を鑑賞。満席だった。

素晴らしい映画だと思う。

映画は「人生」と「世界」を描いて見せるものだと思う。この映画の主人公の兄弟も、例えば「ダークナイト」のバットマンとジョーカー同様、人間誰しも持つ二つの側面を象徴し、見るものの心を揺さぶり、単純な「勧善懲悪」を見た時とは違う深い共感を呼び起こす。

そして「ダークナイト」においては引退も考えるバットマンと、バットマンが後事を託そうと考える正義派の若手地方検事との立場の違い、「スラムドッグ$ミリオネア」においては成長していく主人公の少年少女の成長と、巨大スラムが高層ビル群に変化した大都市ムンバイの変化の描写が人生における「時間」の流れについて考えさせ、感情を揺さぶる。

しかし、心を揺さぶる点で両作品は共通するが、のっけからの巨大スラムの臭いが沸き立つような生々しい描写から、宗教に関わる激しい衝突の場面、そして建築中のビルの高層から見るムンバイの建築ラッシュのパノラマなどで、「世界」の「いま」を表現の背景に強烈に描き込んでいる点で、「スラムドッグ$ミリオネア」の方が世界規模の視野とジャーナリスティックな視点をより多く含んでいると言えるだろう。

「インドが初めてハリウッド映画で描かれた」という言い方がされるが、確かに途上国の貧困に正面からふれた作品がアカデミー賞を総なめにしたことに、時代の変化を感じる。それ以上に主人公がイスラム教徒という欧米の映画(ハリウッドも資本参加した英国人監督の英国映画)というのはたいへん珍しいことなのではないか。

(やはり、「9・11で世界は変わった」というのは間違いで、「9・11で一時的に起こった逆流もようやく収まり、世界は再び望ましい方向への変化を静かに進めつつある」というのが出しい時代の読み方だ。「小泉政権」「安部政権」などによって、逆流に適合していた自民党政権に変わり、この映画で描かれたような「世界の問題」に真剣に取り組むような、フレッシュな日本の政権が誕生することが望まれる。)

そして主人公の子ども時代に、彼らの集落がヒンズー教徒過激派らしき集団に襲撃される場面が出てくるなど、「宗教」をかなりはっきり描いている部分があるが、今のところこの映画が「イスラム教組織」「イスラム教国」などから何らかの批判や攻撃にさらされているという話は聞かない。

恐らく、脚本・演出などを通じてイスラム教について高度な理解が示されていることが、そのような結果につながっているのではないかと推測する。

しかし、映画の本筋は「一人の女性への一途な思い」を抱き続ける青年が、自身のダークサイドを象徴するとも言える兄との「戦い」の中で成長し、その過激な人生経験がクイズ番組での正答に結びついて‥という展開。わが息子も「いろいろな体験が、クイズの解答に役立っていた」と、学校への往復とパソコンだけと向き合う人生についてちょっと反省。

ワルの兄とが時々決定的な場面で例外的に見せる弟への思いが、映画全体のメッセージを圧倒的に前向きなものにしていると言えるだろう。

世界と、人生と、「時の流れ」についての見事な表現を見せてくれる作品。その面で期待していたわけではないので、かえって得した気分になるエンディングのインド映画風の楽しくエネルギッシュな群舞シーンも良かった。

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2009年3月 4日 (水)

もっとイスラム圏に関心を=見あたらない世界イスラム経済会議の報道=

NHK・BS1で見た、たしか昨日未明放送分シンガポールCNAのニュースで、ジャカルタで「世界イスラム経済フォーラム」なるものが開催されていて、インドネシアのユドヨノ大統領が「こうした世界経済情勢の中ではイスラム圏内の助け合いが大事だ。世界の最貧国50カ国の半分はイスラム諸国なので、産油国を中心にイスラム銀行に拠出金を出し合い、相互扶助を進めるべきだ」といった趣旨の演説をしたことが紹介されていた。

これは、世界情勢を左右するようなニュースではないと思うが、テレビ視聴者が世界の姿を知る上では報じる価値のあるニュースだろう。

しかし、グーグルのニュース検索で「ユドヨノ」「イスラム銀行」などの語であたってみたところ、わが国でこれを報じたものは見あたらなかった。

念のため英語版で当たってみるとこれくらいの検索結果(一例だけ後掲)が出ていた。

もっとイスラム圏のニュースは増やしていいと思う。東南アジアについての報道で、欧米に負けていて良いのか?

【以下、BBCの原稿切貼】

Islamic banks 'better in crisis'

By Lucy Williamson
BBC News, Jakarta

Indonesian President Susilo Bambang Yudhoyono has called on Islamic banks to take a leadership role in the global economy, amid the financial crisis.

He was speaking at the opening of the World Islamic Economic Forum in the Indonesian capital, Jakarta.

The forum has brought together political and business leaders from 38 countries to discuss the global economic slowdown.

They will also discuss ways to achieve energy and food security.

Mr Yudhoyono said it was time for Islamic banks to do some missionary work in the West.

Islamic financial institutions, he said, had not been hit as hard as their western counterparts because they did not invest in toxic assets.

Banks run in accordance with Muslims laws on interest payments and the sharing of credit risks are seen by many as fairer than traditional banks, less focused on profit and kinder to the communities they work in.

Demand for Islamic financial products has been growing in the Muslim world for years but Mr Yudhoyono said that many in the West were now ready to learn from them.

Islamic law prohibits the payment and collection of interest, which is seen as a form of gambling.

Transactions must be backed by real assets, and because risk is shared between the bank and the depositor, there is added incentive for the institutions to ensure deals are sound.

【以上、切貼】

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2009年2月10日 (火)

マレーシアのヤティム外相も「ガザ攻撃を国際刑事裁判所は訴追すべき」

最近NHK-BS1で見たシンガポールCNAが、マレーシアのヤティム外相がイスラエルのガザ攻撃は人道に対する罪であり、国際刑事裁判所は訴追に動くべきであるとし、集められた署名をもって同裁判所に強く働きかけるとまくし立てる映像を流していた。怒りを露わにした映像だった。

ダボス会議ではトルコのエルドアン首相が、出席したパネル討論の司会者がイスラエルのペレス大統領が20分以上にわたって延々と「ロケット攻撃するハマスが悪い」という演説をすることを認めながら、「時間が来たから」と自らの反論を封じられたことに激怒して「2度と来ない!」と啖呵を切ってペレス大統領の前を横切って退席する様子は方々で紹介されている。

イスラエルの非人道的な攻撃、しかも与党の選挙目当てという要素の強い攻撃には、イスラム教徒ならずとも怒りを禁じ得ないが、同時にイスラム圏の人々の怒りが「アラブ」の枠を越えてEUに加盟したいと言っているトルコ人、東南アジアのイスラム国家にも共鳴していることを軽視してはならないと思う。

やはり、ヒラリー・クリントン国務長官の初外遊となる東アジア訪問に日中韓に加えてインドネシアがセットされているのは、こうした戦略上の配慮だろう。

われわれは、イスラム系の過激派の活動を抑えることについてはイスラム圏内における穏健な人々との連携、協力を強めるべきだ。外から力で押さえ込むには限度がある。やはりイスラム世界内部の自制にこれまで以上の期待をしなければならないし、協力を得るために必要な手は打たなければならない。イスラームについて理解を深め、敬意を払うことはそのための第一歩であると思う。

一方で、日本政府などにとってはガザの問題を含む中東問題の核心であるパレスチナ問題について、イスラエルやアメリカ、あるいは歴史的に一番責任の重いイギリスに対して言うべきことをちゃんと言うことが必要だ。あちら様に対して「うちうちのことはしっかり頼みますよ」という以上、「こちら側」(?)の不始末には、こちら側で落とし前をつけさせていただくのが仁義ってもんでしょう。

自民党のごく一部や、外務省に多くの中東問題をまじめに考え、パレスチナ支援などでもそれなりの実績を挙げてきた人々がいることは認めるが、やはり総体としての「自公連立政権」や外務省の首脳部は、あまりにアメリカ(それもブッシュ・チェイニー路線のようなアメリカ)一辺倒であり、そのアメリカに引きずられて、イスラエルに対してあまりに遠慮しいしいだ。

次期政権をめざす民主党などの野党には、こういった問題についても新機軸を明確に打ち出し、日本外交の「チェンジ」を図って欲しい。

【以下、関連記事切貼】

ガザ攻撃で訴追の可能性も=本格捜査には前提条件-国際刑事裁

時事通信2009年2月5日

 1300人以上の死者を出したイスラエルのパレスチナ自治区ガザへの軍事行動が、大量虐殺や人道に対する罪を犯した個人を裁く国際刑事裁判所(ICC)の「捜査対象」となるかどうかが注目されている。パレスチナ当局は1月、ICCにイスラエルの関係者らの訴追を申請し、既に「予備段階の分析」が始まった。だが、本格捜査には制度上の問題点など幾つものハードルがある。

 来日中のICC書記局トップのアルビア書記は5日までに、都内で時事通信の取材に応じ、イスラエル軍関係者の訴追について「進む可能性も進まない可能性もある」と指摘。捜査までに複数の前提条件をクリアする必要があるとの見解を示した。(2009/02/05-14:47)

【以上切貼】

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2009年2月 8日 (日)

注目記事-共同通信のムシャラフ前大統領インタビュー

パキスタンの内政・経済の安定がアフガニスタンを含む中東の東側ひいては世界の平和と安定の焦点であること、また核不拡散・核廃絶の問題においてパキスタンが重要なカギを握っている点から、注目せざるを得ないインタビュー。

退陣した軍人出身の前大統領とはいえ、現在の民主派政権の政権担当能力には不安が残り、ムシャラフ氏は批判を浴びつつも出してきた結果に着目すれば有能な政治家だったという点もあり、インタビューを実現した共同通信はいい仕事をしたと思う。

日本政府としては第一義的には現政権を支え、パキスタンの民生向上への協力に力を尽くすべきだが、水面下でムシャラフ氏とも接触を保ち情報取得、意見交換をしていくべきだろう。

【以下、切貼】

ムシャラフ前大統領が単独会見  「被爆国日本に全部話す」 2009/02/07 21:37

 【イスラマバード7日共同】パキスタンのムシャラフ前大統領は7日、首都近郊ラワルピンディの旧大統領公邸で共同通信の単独会見に応じ、同国からの核拡散問題について「唯一の被爆国である日本政府に対し、聞かれればすべてを話す義務がある」と表明した。また、核拡散を主導したとして在任中に軟禁下に置いた科学者カーン博士が6日に軟禁を解除されたことについては「彼が拡散した明確な証拠がある」と述べ、博士の「個人的な犯行」との見方を強調した。

 昨年8月の辞任以降、ムシャラフ氏が会見に応じるのは極めて異例。核拡散の詳細を明らかにしてこなかったムシャラフ氏が今後、日本政府に対し核拡散の経緯などを説明する可能性を示唆した。ただ実際に何を明らかにするかについては言及を避けており、実態解明にはなお時間がかかりそうだ。

 核関連技術や資機材を北朝鮮やイランに拡散させたとして2004年に軟禁下に置かれたカーン博士は軍の核拡散への関与を指摘しており、ムシャラフ氏は「彼はうそつきだ」と強く非難。軟禁解除後も双方の主張は食い違っている。

 在任中に進めた核ミサイルや核施設開発については「他国の支援はもう必要ない」と表明、現在は自力開発が可能になったことを明らかにした。カーン博士は昨年、共同通信に対し、1970-80年代に日本やドイツなどから核兵器開発に必要な「重要な部品」を入手したと証言していた。

2009/02/07 21:37   【共同通信】

【切貼、以上】

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