国際刑事裁判所

2009年3月 5日 (木)

政治的判断が稚拙に見える「バシル大統領訴追」だが、世界の人道と人権の歴史にとっては必要な蛮勇かもしれない

「国際刑事裁判所(ICC)がスーダンのバシル大統領を起訴」というニュース(後掲)があった。

ある国の国家元首による残虐な行為に対し、国際社会が法に基づいて人権を守るための措置を執行するという、大きくはこれからの世界が進むべき方向に則ったことである。

もちろん、執行にあたっては実際には難しい問題がある。「スーダンの主権の独立」との関係で、誰がどうやってバシル大統領を逮捕できるのかという問題がある。ダルフール紛争には大きく言ってイスラム教徒のアラブ人勢力による、キリスト教徒の黒人勢力の弾圧という構図があり、また中国がバシル政権に肩入れしてきたという側面もあるため、他の同様な問題よりも欧米のメディアなどの注目を集めているという見方もある。

さらに言えば、今回の訴追により国連や各国のダルフールの難民支援活動がバシル政権側により脅威にさらされることにつながるといった問題もある。

ダルフールのいままさに迫害されている人々の状況が実際に良くなることと、新しい国際刑事機関により、普遍的な正義が実現される手だてが整えられること。一度に両立することが難しい問題にも見えるが、世の中のことで簡単に解決できることなどない。関係者の努力と知恵により人道と人権を守る国際機関が成長するステップとなってほしい。手をこまねいていては歴史は前に進まない。

【以下、切貼】

スーダン大統領に逮捕状  ダルフール紛争でICC  共同通信 2009年3月4日

 【ブリュッセル4日共同】スーダン西部ダルフール紛争をめぐり、国際刑事裁判所(ICC、オランダ・ハーグ)は4日、戦争犯罪と人道に対する罪などで、スーダンのバシル大統領(65)に対する逮捕状を発付した。2002年に設立条約が発効したICCにとって現職の国家元首に対する初の逮捕状。同法廷のモレノオカンポ主任検察官が昨年7月に請求していた。

 ダルフール地方では03年2月、アラブ系の中央政府に対する黒人系勢力の反政府活動が激化、政府軍はアラブ系民兵と協力して、黒人系住民の村などを無差別に襲撃した。国連によると、約30万人が死亡した恐れがある。

 検察官は、大統領が軍などを指揮して少なくとも3万5000人の市民を殺害したほか、約250万人を難民キャンプに送り、無差別に強姦したなどと主張している。

 ICCは自前の警察力を持たないため、逮捕状執行は外遊先の国が身柄を確保した場合などに限られる見通しだ。ICCは07年5月にもスーダン政府高官ら2人に対する逮捕状を出したが、政府は引き渡しを拒否した。

【以上、切貼】

| | コメント (3) | トラックバック (0)

2009年2月10日 (火)

マレーシアのヤティム外相も「ガザ攻撃を国際刑事裁判所は訴追すべき」

最近NHK-BS1で見たシンガポールCNAが、マレーシアのヤティム外相がイスラエルのガザ攻撃は人道に対する罪であり、国際刑事裁判所は訴追に動くべきであるとし、集められた署名をもって同裁判所に強く働きかけるとまくし立てる映像を流していた。怒りを露わにした映像だった。

ダボス会議ではトルコのエルドアン首相が、出席したパネル討論の司会者がイスラエルのペレス大統領が20分以上にわたって延々と「ロケット攻撃するハマスが悪い」という演説をすることを認めながら、「時間が来たから」と自らの反論を封じられたことに激怒して「2度と来ない!」と啖呵を切ってペレス大統領の前を横切って退席する様子は方々で紹介されている。

イスラエルの非人道的な攻撃、しかも与党の選挙目当てという要素の強い攻撃には、イスラム教徒ならずとも怒りを禁じ得ないが、同時にイスラム圏の人々の怒りが「アラブ」の枠を越えてEUに加盟したいと言っているトルコ人、東南アジアのイスラム国家にも共鳴していることを軽視してはならないと思う。

やはり、ヒラリー・クリントン国務長官の初外遊となる東アジア訪問に日中韓に加えてインドネシアがセットされているのは、こうした戦略上の配慮だろう。

われわれは、イスラム系の過激派の活動を抑えることについてはイスラム圏内における穏健な人々との連携、協力を強めるべきだ。外から力で押さえ込むには限度がある。やはりイスラム世界内部の自制にこれまで以上の期待をしなければならないし、協力を得るために必要な手は打たなければならない。イスラームについて理解を深め、敬意を払うことはそのための第一歩であると思う。

一方で、日本政府などにとってはガザの問題を含む中東問題の核心であるパレスチナ問題について、イスラエルやアメリカ、あるいは歴史的に一番責任の重いイギリスに対して言うべきことをちゃんと言うことが必要だ。あちら様に対して「うちうちのことはしっかり頼みますよ」という以上、「こちら側」(?)の不始末には、こちら側で落とし前をつけさせていただくのが仁義ってもんでしょう。

自民党のごく一部や、外務省に多くの中東問題をまじめに考え、パレスチナ支援などでもそれなりの実績を挙げてきた人々がいることは認めるが、やはり総体としての「自公連立政権」や外務省の首脳部は、あまりにアメリカ(それもブッシュ・チェイニー路線のようなアメリカ)一辺倒であり、そのアメリカに引きずられて、イスラエルに対してあまりに遠慮しいしいだ。

次期政権をめざす民主党などの野党には、こういった問題についても新機軸を明確に打ち出し、日本外交の「チェンジ」を図って欲しい。

【以下、関連記事切貼】

ガザ攻撃で訴追の可能性も=本格捜査には前提条件-国際刑事裁

時事通信2009年2月5日

 1300人以上の死者を出したイスラエルのパレスチナ自治区ガザへの軍事行動が、大量虐殺や人道に対する罪を犯した個人を裁く国際刑事裁判所(ICC)の「捜査対象」となるかどうかが注目されている。パレスチナ当局は1月、ICCにイスラエルの関係者らの訴追を申請し、既に「予備段階の分析」が始まった。だが、本格捜査には制度上の問題点など幾つものハードルがある。

 来日中のICC書記局トップのアルビア書記は5日までに、都内で時事通信の取材に応じ、イスラエル軍関係者の訴追について「進む可能性も進まない可能性もある」と指摘。捜査までに複数の前提条件をクリアする必要があるとの見解を示した。(2009/02/05-14:47)

【以上切貼】

| | コメント (0) | トラックバック (0)