オーストラリア

2009年3月27日 (金)

訪米でジム・レーラーにインタビューされる豪ラッド首相、お呼びじゃなかった麻生首相

NHK・BS1で昨日放送された、アメリカの公共テレビPBSの「ニューズアワー」で、訪米して米豪首脳会談を終えたオーストラリアのラッド首相インタビューを放映していた。

PBSは内容が中立的でFOXやCNN、あるいは3大ネットほど見られていない。戸田奈津子さんの映画字幕じゃ「教育テレビ」とされていたくらいだが、そのレベルの高さは知る人ぞ知る。聞き手は大統領選挙の公開討論会司会の常連・エースのジム・レーラー。

ラッド首相が聞かれていたのは、ひとつにはG20に向けての世界金融・経済問題の解決に向けての考え方で、オバマ政権やオーストラリア政府の積極財政と、それに慎重なヨーロッパの比較などで、ラッド氏は何もしない新自由主義的な行き方と、政府が動いてショックを緩和して次のステップをめざすやり方を対比させて後の方が望ましいということを説いていた。

さらにラッド首相はアフガニスタン問題についてのオバマ大統領とのやりとりについて応える中で「すでに10人の死者を出した自国の厭戦気分」と、「9・11の原因は、この地域のテロリストを野放しにしたことにある」といった話の両方をしていた。

さらにジム・レーラー氏は「あなたは外交官出身で、中国語にも堪能なので伺いたいが、アメリカは中国とどう関わっていったよいと思うか。ご自身のことばで語っていただければ」と聞いた。

ラッド氏は予想通り、自分としては「関与」を求めていく立場で、IMFに出資を求めるとともにオランダやデンマークと同程度の発言権を、果たす役割に見合ったものに見直し、いわば中国を「良い大株主」になるように導くべきだ。そうなるかどうかは中国の出方を見なければいけないといった意見を述べていた。

このインタビューを聞いていて思ったのは、現状においてはアメリカの良質なメディアが世界経済、アフガニスタンでの国際協力、しまいには「アメリカは中国とどう関わっていったらいいか」ということを聞く相手は、日本の首相ではなくオーストラリアの首相なのだなということだ。ちょっとガッカリだが現状を考えれば仕方がないか。

もちろん、ラッド政権の政策指向がオバマ政権の政策指向と重なる部分が多いこと、総選挙で選ばれた正統性と勢いのある政権であること、ラッド氏が中国専門家であるという条件もある。しかし、「ジャパンパッシング」などと騒ぐ日本のこれまでの首相たちは、ジム・レーラーのニューズアワーが呼びたいと思う程度の、独自の中国理解や対中政策論を持っていただろうか。

自民党政権のここ15年ほどの首相は皆失格だろう。山本一太ならいいかと言えば、かえって日本が馬鹿にされることになるだろう。次期、民主党主導政権の首班指名候補についても、まずは内容だけれども、ついで外国語能力はともかくとしても、日本語においても口が重い人はちょっとなあと思う。こういった場面でも、日本の存在感が損なわれるリスクがあるのだ。

なお、在米日本大使館も3大ネットばかりでなく、PBSともコンタクトを密にすべきだと思う。いろいろな国の大使が出てくるが、日本大使で印象に残るのは、ずっと前に斉藤大使がアイリス・チャンと対決した時のことくらいだ。

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2009年3月 5日 (木)

イミョンバク大統領の多国間軍縮交渉の提案

NHK・BS1で見た韓国KBSのニュースによると、オーストラリア訪問中のイミョンバク韓国大統領はオーストラリアの新聞に寄稿し、東アジアにおいても「多国間の交渉の枠組みを推進することで、北東アジアの軍備競争を抑制していくべきだ」との見解を示しているそうだ。

わが国の自公連立政権や外務省、防衛省から聞こえてくるのは「中国は軍事力を強化している」という話ばかりだ。せめてイミョンバク大統領の今回の発言程度の建設的な発信はできないものだろうか。

ただ騒いでいるだけでは、現実を変えることはできない。

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2009年3月 3日 (火)

東京に赴任2度めのオーストラリアの友人へ

AR様

 まずは2月の山火事のお見舞いを申し上げます。それにしてもこの前は六本木ヒルズが無かったというのだから、久しぶりの東京赴任ということになりますね。僕の英語はあいかわらずなので、日本語で書きます。難しいところは秘書の方に聞いてください。

 僕は最近ブログなるものを書いているので、この手紙はそこに「東京に赴任2度めのオーストラリアの友人へ」という題で写しを載せるつもりで、今日はオーストラリアと聞いて思い浮かぶ感想を書き連ねてみようと思います。

 21世紀に入り日豪の協力は前に進んだと言えるでしょう。アメリカがブッシュ・チェイニー時代だったときに、ハワード政権、小泉・安倍政権などは世界の中にあってもアメリカと足並みが揃い、イラクでの協力などはその象徴だったと思います。

 しかし、イラク問題の推移からアメリカの「単独行動主義」への批判が強まり、山火事や干ばつとなると二酸化炭素排出問題にも注目せざる得ず、さらにリーマンショック以来の世界経済の変調を考えるとオーストラリア、日本とも政策の転換が求められました。米オバマ政権の誕生は決定打でした。

 この状況の中で、オーストラリアはオバマ政権誕生に先駆けてラッド政権を誕生させて対中国積極外交などマルチ外交を推進し、京都議定書に復帰するなど「転換」の先取りに成功しています。それに対して日本は自民党も政策の中味を静かに転換させつつあるけれども、野党は政権の座を奪うことによって転換を図ると主張して激しく争っているわけです。僕はすっきり政権交代した方が、いろいろな意味でいいと思うのですが、選挙でどちらが勝つにせよ、オーストラリア政治のようなハッキリした転換が必要な場面だと思います。                                                   

 僕は核軍縮の重要性を長年主張してきたので、ラッド首相が昨年初来日に際してまず広島を訪問されたことを高く評価しています。ウラン輸出国であるオーストラリアの動向は、世界の核不拡散体制の行方に大きな影響を与えますが、現在「NPTに加盟しないインドにウランを輸出することはしない」としておられることを高く評価しています。

 一方、日本の戦後の教育は自国の忌まわしい歴史をしっかり教えることが充分でなかった面があり、例えば日本の若い人々の多くが、先の大戦でわが国がオーストラリアを空爆したり、ニューギニアの密林で死闘でオーストラリア兵と白兵戦を繰り広げ、多くの捕虜に苦難を与え死に至らしめたことを知らないという問題がある。こうしたことには、わが国自身がしっかり取り組んでいかなければならないと思います。

 オーストラリアが「ニュージーランドとの協力を前に進める」という報道を見ました。一般の日本人から見ると、地理的に同じ方角にあり国旗も似ているオーストラリアとニュージーランドはほとんど同じに見えるわけですが、以前、ニュージーランドの女子高生がわが家に短期滞在したことがあるんだけれども、話しを聞くと、どうもオーストラリアのことが好きではないらしい。お隣どおしは例えば「日本と韓国」の関係を思わせるような難しい面もあるのかもしれないと感じました。

 韓国と言えば、安倍首相(当時)が安全保障の「日本、アメリカ、オーストラリア、インド」の四カ国の連携構想を提唱したことがありますが、私自身はあの構想は「中国排除」の意図が明白だということもさることながら、日本が提唱する地域提携構想に「韓国」が含まれないことが一番の問題点だと思っていました。私自身は韓国との実質的な連携がまだまだ足りない。むしろこれからは「まず韓国と話す」といったことが世界政治の中で足場を固める上でいちばん重要だとすら思っているからです。
  
 日本は東アジアの伝統と、欧米型の民主的な体制の「ハイブリッド国家」であり、一方、オーストラリアは生まれは欧米の民主主義国家だけれども、80年代からは白豪主義を捨て、いわば東アジアの国として生きていくことを決意した、日本とは裏返しの東西ハイブリット国家であるということができると思います。

 その意味で、ソマリア沖の海賊の問題などでは、安倍構想とは組み合わせが異なるけれども「日本・韓国・オーストラリア」といった常設の救難・犯罪取り締まりの協力関係といったやり方を模索することは意味があると思います。アメリカや中国に対してもオープンにしておくことはいいけれども、中くらいの国同士がマルチの関係を造ることには意味があると思います。また、日本と韓国が二人だけで向き合ってしまうと、ちょっとお互い緊張してしまうこともあります。この前は、韓国からソマリア派遣の給油の打診があったけれども断ったという記事が出ていて、僕は派遣自体にあまり賛成ではないけれども、派遣するなら韓国からの申し出は無碍にしない方がいいのになと思いました。

 ところで、オーストラリアでも経済対策としての国民一人一人への給付金が今月から支給されるという話しを耳にしたが、金額や規模はどれくらいのものですかか。国民やメディアの評判は?参考までに教えてください。

 バズ・ラーマン監督の豪映画『オーストラリア』が東京では今週から上映が始まっているわけです。日本の明るい話題の一つは『おくりびと』のアカデミー外国語映画賞の受賞です。時代劇ではないけれども、それがかえって日本の文化の根底にあるものを紹介する結果になっていると思う。一見をお勧めしたい。

 オーストラリアは「外国語映画賞」を狙えないのはお気の毒ですね。もっとも、司会者を輸出している(ヒュー・ジャックマン)わけですが。

 全く思いつくままのに書き連ねてしまいました。また10年(?)前のように、時々話しましょう。それでは。

【以下、切貼】

オーストラリア:NZと経済緊密化協定の発展で合意     共同通信2009年3月2日

 オーストラリアのラッド首相は2日、同国を初訪問したニュージーランドのキー首相と会談、両国間の自由貿易協定(FTA)である経済緊密化協定を発展させ、モノの貿易だけでなく投資なども自由化して「単一市場」づくりを目指すことで合意した。
 1年以内に入管・税関手続きなどの規制緩和で合意を目指す。(共同)

李大統領、6泊7日の日程で海外訪問    韓国中央日報 2009年3月2日

  李明博大統領がニュージーランド、オーストラリア、インドネシア訪問に向けて2日午後、出国する。6泊7日間の日程で8日、帰国の予定だ。
  青瓦台関係者は「新しい成長動力創出及び経済回復に寄与するための経済・エネルギー・資源外交が中心だ」と説明した。ジョン・キー・ニュージーランド首相(3日)、ケビン・ラッド・オーストラリア首相(5日)との首脳会談で李大統領は、韓・ニュージーランド、韓豪自由貿易協定(FTA)交渉開始を公式宣言する。
  最後にインドネシアを訪問する李大統領は6日、スシロ・バンバン・ユドヨノ大統領との首脳会談でインドネシア内造林地追加確保と地下資源開発プロジェクトをはじめ、エネルギー・資源・森林協力増進を模索する予定だ。
  李大統領は出国に先立ち、韓昇洙(ハン・スンス)国務総理と関連部処長官が出席する外交・安保関係大臣会議を主宰し、最近、北朝鮮のミサイル発射などの懸案を点検した。

東アジア首脳会議、4月開催=ASEAN+3も-タイ    時事通信 2009年2月27日

 【ホアヒン27日時事】東南アジア諸国連合(ASEAN)は27日、タイの政情混乱で昨年12月から延期されていたASEANと日本、中国、韓国(ASEANプラス3)首脳会議と、この会議参加国にオーストラリア、ニュージーランド、インドを加えた東アジア首脳会議を4月10日から12日までの間、タイ国内で開くことを決めた。開催場所は未定という。タイ政府当局者が明らかにした。(了)
(2009/02/27-22:46)

WHO「アジア全体で統一対策を」 03/03 12:10 

 発生が懸念されている新型インフルエンザについて、アジア・太平洋地域の担当者が一堂に集まる世界保健機関=WHOの国際会議が、きょうから福岡市で始まりました。福岡市のホテルできょうから始まったWHO主催の会議には、アジア各国やオーストラリアなど16か国の新型インフルエンザ担当者ら、およそ60人が参加しています。
 ヒトが免疫を持たない新型のインフルエンザが発生して、爆発的な感染=パンデミックが起きれば、死亡者は世界で1億5000万人に達すると国連は試算しています。感染の広がりを最小限に封じ込めるため、国境を越えた対策が求められています。
 この会議は6日まで4日間の日程で開催され、各国のガイドラインをもとに、アジア・西太平洋地域全体の行動指針の策定を目指します。

女性の社会進出度、日本の指数が大幅低下 マスターカード調査 日経 2009年3月2日

 米マスターカードは「女性の社会進出度」に関してアジア・太平洋地域を対象にした調査結果をまとめた。それによると日本の総合指数は54.53となり2008年の前回調査から8.84も低下した。調査対象の14の国・地域のなかでは、前回に引き続きインド、韓国に次ぐ3番目に低い水準となり、女性の社会進出が進んでいないことを示す結果となった。指数が最高だったのはオーストラリアの96.1だった。
 同調査は「雇用市場への参加」「学歴」「管理職」「平均収入」の4項目について各国の男女差を指数化したもの。指数が100だと「男女平等」を示し、100未満は男性優位の男女不平等を示す。日本では今回、平均を超える年収を得ていると感じる人数の男女差が拡大し、指数が低下した。
 指数の上位はオーストラリアに次ぐ2位はタイで91.5、3位はニュージーランドで90.5だった。(10:35)

オーストラリアの山火事と広島、そして核問題(3)   ブログ「萬晩報」より
                                                        2009年02月16日(月)
異文化コミュニケーション財団 引地 達也

 1941年12月8日に日本軍がハワイの真珠湾を攻撃して始まった太平洋戦争は約1年の間、日本軍は快進撃で南方へ進出、1942年2月から43年11月までにオーストラリア北部の都市や基地などを空爆、機銃掃射するなどの攻撃を加えた。特に42年2月19日のダーウィン空爆で死者は約250人を数え、同3月3日には西オーストラリア州ブルームで9機の戦闘機が機銃掃射し88人が死亡し、作戦機二十四機を破壊したた。42年5月31日にはシドニー沖の潜水艦から発進した特殊潜航艇4隻がシドニー湾に侵入、うち1隻が停泊中の巡洋艦などを魚雷で攻撃した。

 これらの攻撃はオーストラリアの本土が危機にさらされた初めてのケースであり、国防姿勢を根底から練り直さなければならない事態となり、人々の間に戦争への恐怖が実感として認識された。

 日本軍はオーストラリアを孤立させるために米国との海上航路を封鎖しようとフィジーとサモアを攻略するFS作戦を実施する。この過程で42年1月23日ににラバウル、同5月3日にはソロモン諸島のツラギを攻略した。そして8月にパプアニューギニアのジャングルで日本兵とオーストラリア兵が壮絶な戦いを繰り広げる「ココダの戦い」に至る。劣悪な環境で敵兵と対峙し、この戦いでの勝利が攻勢への足がかりの一つにもなったとされ、オーストラリアでは対日戦争の象徴となり、後に本や映画などで語り継がれている。

 一方、東南アジアではマレーシア全土を掌握した日本軍は1942年に英国軍の東南アジア最大拠点であるシンガポール基地を攻略し約1万5000人のオーストラリア兵を含む13万人以上を捕虜にするなど捕らえられた計約2万2000人のオーストラリア兵のうち3分の1が収容所で死亡したという。日本との戦争で死亡したのは計1万7501人に上る。

 この太平洋戦争を含む第二次世界大戦で勝利した連合国のうちオーストラリアの貢献は大きく、戦後の国際的地位も飛躍的に高まった。ただしその痛みも大きい。戦争に送った90万以上の兵士は18-35歳までの男子の10人中7人が出征する数である。比率は当然、連合国中最高だった。空爆、ジャングルでの戦い、そして捕虜収容所での扱い。この三点がオーストラリアの対日戦争への印象であり、これを処罰という形で具体化するのが極東国際軍事裁判、いわゆる東京裁判の裁判長を務めたオーストラリア人のウェッブ判事である。連合国司令官マッカーサーに指名された米、英、ソ連、中華民国、フランス、カナダ、オランダ、オーストラリア、ニュージーランド(後にインド、フィリピンも加わる)の裁判官のうちウェッブ判事は最もラディカルで日本に厳しく天皇までも追求していたとされる。各裁判官の意見が合わないまま裁判は進行し、結局28人が起訴され東条英機ら7人が絞首刑、16人が無期禁固刑、2人が禁固刑、2人が公判中に病死、1人が精神障害のため免訴された。さらに49年9月に他の連合国が一斉に終了した日本戦犯裁判をオーストラリアだけは50年6月から51年4月にかけて実施、5人の死刑を執行したのも他国との対日観の温度差を強調している。

 さらに付け加えれば現代でもオーストラリアは日本の戦時下における従軍慰安婦をめぐる問題でも厳しい目をそそぐ。時にそれは被害者の多い中国、韓国をしのぐほどである。2007年 3月13日に安倍晋三首相とハワード首相は東京で会談し両国の「安全保障協力に関する日豪共同宣言」に署名した。二国間の相互安全保障と協力強化をうたう宣言は日本にとって米国との安全保障条約に次ぐ二国間の安全保障協力、オーストラリアにとっても米国を含めた太平洋の三角点を結ぶ協力の意義は両国ともに大きいはずだが、署名を受けた有力紙エイジの社説は「未来に目を向ければよく見えるが、過去の問題はまだ残っている」とし、いわゆるタカ派のイメージである安倍政権を「正しい歴史認識を拒否している」などと批判し、従軍慰安婦の「真摯な謝罪」を求めている。

 米下院で従軍慰安婦問題への謝罪を日本に求める決議をめぐり、2007年初めに米下院の外交委員会で元従軍慰安婦として当時の様子を証言したオランダ人、ジャン・ラフ・オハーンさんは南オーストラリア州アデレード在住。これも少なからず慰安婦問題に敏感な世論を形成する要素とも言える。

 日本の冬はオーストラリアの夏。リゾート地ゴールドコーストの足の長い波は海の壮大さを感じるし、暖かい水は気持ちがよい。だから、多くの日本人が訪れる。オーストラリアからはスキー客が日本へ、日本からはサーフィンやゴルフにオーストラリアへと渡航者数は増加したが、オーストラリアに関する歴史は置き去りにしたままのような気がする。日本にコアラが初上陸したのが1984年。それ以来、オーストラリア観は進歩したのだろうか。(了)

【以上、切貼】

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