経済・財政

2009年4月30日 (木)

「小泉・竹中構造改革」ばかりでなく、「中曽根臨調路線」との明確な決別、チェンジが必要である。

はじめに
1.世界経済に起こっていること
2.日本経済の状況
3.経済対策の評価
4.今後の見通しと論点
しめくくり

はじめに

今後時々、経済についての見方を披瀝したい。まず、総論として現在の経済状況をもたらしている原因と打開の方向性について巨視的に捉えることを試みたい。

1.世界経済に起こっていること
                                                                  
「100年に一度」と言われる危機の核心は、アメリカの住宅バブルが崩壊する中で低所得者を対象とした「サブプライムローン」にもともと問題債権が多いことが露見し、さらにそれがデリバティブなど「一部危険な債権が分割され組み合わされることで、危険性が見えにくい高利回りの金融商品」として世界中の金融機関に保有されていたため、2008年9月の「リーマンショック」がさらなる引き金となって欧米を中心とした世界に起こった金融パニックである。

さらに金融機関の経営悪化は信用収縮を引き起こし、実体経済に深刻な影響を及ぼしている。端的に言えば、アメリカの消費者がこれまで何の問題もなく組んでいたローンが金融機関によって提供されなくなってしまったために、例えば自動車の販売が落ち込み、ディーラーをはじめ電機など関連する内外の産業全ての経営が悪化するといった具合である。そうして実体経済が落ち込めば、金融機関の業績はさらに悪化して貸し渋りが起こり‥と事態は悪循環に陥っている。

国際通貨基金(IMF)は4月22日、世界全体の2009年国内総生産(GDP)の実質成長率見通しを、1月の前回予測時の0・5%から1・8ポイント引き下げ、マイナス1・3%と大幅に下方修正している。世界のマイナス成長予測は、第二次世界大戦後では初めてのことだ【記事1】。

2.日本経済の状況

当初、わが国の金融機関はサブプライムローン関連の金融商品をあまり買っていないので「経済の落ち込みは欧米より小さい」と予測され、リーマンブラザースが破綻した際に財政経済担当相が「ハチに刺された程度」と形容していたが、先に掲げたIMFの最近の世界経済見通しでは1月の予測時より3・6ポイント引き下げてマイナス6・2%と予測され、見通しを示した対象国の中では引き下げ幅が最も大きかった【同】。

日本政府も最近、昨年12月に発表した2009年度をゼロ%成長としていた経済見通しを大幅に下方修正して、マイナス3パーセント超とする発表を行っている【記事2】。

日本経済の落ち込みが諸外国よりも大きいのは、輸出依存度高いためである。アメリカ向け輸出が経済の大きな柱であることは中国も同様であるが、中国には巨大な内需があり、それもまだまだ成長余地が大きい。わが国の経済がより成熟したものである=多くの人がモノをすでに持っている=ことは内需が伸びない背景の一つとなっている。

しかし、内需の低迷にはこれまでの政策の累積が原因になっているという側面も看過できない。まず、1980年代の中曽根内閣当時からのわが国の経済政策は、繰り返された「内需拡大」のキャッチフレーズと裏腹に、一部のグローバルな輸出企業の「競争力強化」に偏ってきた。中曽根内閣の「臨調路線」は福祉国家の建設よりも財政均衡のかけ声を優先したもので、高い為替レートの設定により、貿易摩擦を回避して一部の超優良の輸出企業のための良好な貿易環境の確保に努めたことは事実だが、そのことが結果として全国の地場産業や多様な中小企業の存在をより難かしい立場に追いやったことも否めない。

1990年代の土地・金融バブルの崩壊も「天から降ってきた災難」のように言われるが、実際には通貨供給政策の失敗(=第二次石油ショック後の不況、プラザ合意後の円高不況に対し、「臨調路線」の呪縛で財政出動をせず、過度の金融緩和にしわ寄せした)と、資産保有における土地の有利性、都心部再開発の推進など不動産バブルには「政権が政策の結果として作り出したもの」という側面があり、さらにバブル崩壊後の不況長期化の原因の一つは先に述べたように、バブル崩壊以前の「臨調路線」が「内需拡大」のかけ声とは裏腹に、外需依存体質を改める効果的な手だてを怠ったことにある。

回復軌道に乗りかけると拙速な緊縮政策で腰折れをもたらし、税収も減らすなどジグザグコースをたどった日本経済も、90年代の宮沢政権、小渕政権などの大規模な財政出動によりようやく安定軌道に戻りつつあったが、2000年代初頭の小泉内閣における「小泉・竹中構造改革路線」は再度日本経済を「一部優良企業による輸出への過度な依存」「金融バブル指向」「福祉軽視」の誤った方向にリードした。一時的には世界経済のバブル的な好況に乗り、また労働規制の緩和=実質的な賃下げ=によって見かけ上の企業業績は絶好調という一時期があったが、いま現実となっていることは「世界で一番の経済落ち込み」「金融立国の幻想崩壊」「将来不安による内需萎縮」だ。

小泉・竹中路線は「格差拡大」「非正規雇用の増大」といった点から批判されることが多い。それもその通りだが、そもそも英サッチャー政権による「金融ビックバン」や、米経済のITバブルや住宅バブル、さらには複雑な金融商品の生み出す金融バブルに幻惑されて「金融立国」などという誤ったキャッチフレーズが踊り、また「規制緩和」の大合唱の下、中曽根臨調路線時代からの「大規模な優良輸出産業の競争力強化に過度に偏った政策」を継承することで、地方の疲弊、中小企業の衰退をもたらしたことをも批判されるべきである。小泉・竹中政権が現実にもたらしたものは「経済の落ち込み=税収減および経済対策の必要」による「財政赤字の大幅な拡大と日本経済の脆弱化」なのだ。

3.経済対策の評価

麻生内閣の2009年度予算の補正予算における15兆円とも言われる財政出動についての評価はさまざまだが、何もしなければマイナス6パーセントとも言われる今年度の経済成長をマイナス4パーセントにまで、2パーセント程度引き上げる効果があると期待できる。数字としては2パーセントに過ぎないが、いわば金魚鉢の水位が下がって多くの金魚が息もできないような状況になっているところに、水を注いでやるという作業であり、一面では理にかなった政策である【記事3および4】。

ただし、仮に10兆円の国債増発となれば、その分、国民の借金が増えることになることは念頭に置いておかなければならない。「国民全体としては、国に対して10兆円の債権を新たに持つことにもなるのでトントンだ」という見方もできるが、それでも「10兆円分の国債の利子は、国民全体が負担して支払い、受け取るのは直接間接に国債を保有する高額所得層」という所得の逆方向への再配分という問題が拡大する。

さらに15兆円の使い道についても指摘されるとおり、賢明なものであるかどうか吟味することが本来必要だ。「乗数効果(=カネを注ぎ込めば何倍にもなって帰ってくる)」の大きい、成熟度の低い経済であればケインズが指摘したとおり「労働者を雇って穴を掘らせ、さらにそれを埋め戻させることに給料を払うことだっていい」ということなのだが、借金を上回る効果が期待しにくいとなれば、将来の経済成長にプラスになるような使い方を工夫しなければならない。

わが国の内需拡大のためには、社会保障・福祉を充実し国民の将来不安をやわらげることが必要であり、効果も大きいと思われる。環境問題への世界大の関心の高まりに応えること、将来の競争力強化のために教育予算を欧米並みに引き上げる努力が必要だ。今日の状況をもたらした「元凶」とも言えるアメリカでは、オバマ政権の誕生後、このような指向性を持った「チェンジ」が推進されつつある。こういった点から今回の補正予算案を見渡せば、「ハイブリッド車購入への支援」などは同分野のわが国の競争力強化にもつながる政策として期待できる。しかし例えば「介護」従事者の報酬アップは単年度の措置に限られており、教育への予算シフトはないなど、充分な未来志向、充分なチェンジが含まれていると評価することはできない。

さらに政策推進のための「新たな基金を設ける」という手法が目立つ。これは「直ちに支出するわけではない」という点で景気対策の規模を大きく見せる水増しであり、「官僚の裁量に任せる」「天下り団体の活躍の場を広げる」という要素が大きい点で、政官財癒着構造への逆行だ。

4.今後の見通しと論点

まず世界の金融がいつ立ち直るかどうかといった点については「かなり時間がかかる」と予測せざるを得ない。焦点のアメリカ銀行政策は「一時国有化、不良債権の切り離しによる再生」という手段をとらず、結局のところ「官民で基金を作り、不良債権を買い取る」という方式を採用することになった。

これは、当初「日本の失われた10年は繰り返さない」と言っていたオバマ政権が、実際にはかつての日本と同様、ドラスティックな政策はとらず、いわば兵力の漸次投入のようなよく言えば穏健な、悪く言えば中途半端な対策を採用したことになり、時間を空費する恐れが大きくなったと言える。「来年度からの回復」「それを織り込んで、この夏から株価回復」という声も聞かれるが、無理なのではなかろうか。

日本経済も「財政出動」は必要だが、それが問題の解決になるということではない。むしろ「中曽根内閣の臨調路線」、「小泉内閣の構造改革路線」から明確に決別し、「多少税負担が増えても安心できる福祉を構築することを通じて内需拡大を図り、また日本の未来を切り開ける公立学校教育の再建をする」といった方向への「明確なチェンジ」が行われるかどうかが、日本経済が力強く再生できるかどうかの決定的な分かれ目だ。

もしそのようなチェンジが行われるとすれば、どのような分野でどのような変化が、どのようなスピードで起こるかをいかに見極めていくことが投資家や事業家にとっての勝負所となる。一方で、そのような明確なチェンジがなければ、今と同様な状況がだらだらと続き、わが国の経済回復は主要国の中で一番遅れると判断して良いだろう。

しめくくり

次の機会には、今回のレポートのような問題意識を根底に置きつつ、世界の森羅万象に目配りしながら、日本経済・首都圏経済の動向と見通しについての意見を述べていきたい。

                                                                   
【 記事1】                                                                  
                                                                   
IMF:世界経済見通し 戦後初、マイナス1.3%成長 日本も6.2%--09年

 【ワシントン斉藤信宏】国際通貨基金(IMF)は22日、最新の世界経済見通しを発表した。昨年秋の金融危機以降、世界規模で急激な景気悪化が続いていることを受けて、世界全体の09年国内総生産(GDP)の実質成長率見通しを、1月の前回予測時の0・5%から1・8ポイント引き下げ、マイナス1・3%と大幅に下方修正した。
 世界のマイナス成長予測は、第二次世界大戦後では初めて。日本については3・6ポイント引き下げてマイナス6・2%と予測し、見通しを示した対象国の中では引き下げ幅が最も大きかった。
 日本以外にドイツもマイナス5・6%とマイナスの幅が大きく、不況による世界的な生産・貿易の急縮小の影響が、輸出依存型の経済大国を直撃した形となった。
 米国はマイナス2・8%、ユーロ圏もマイナス4・2%とそれぞれ大幅なマイナス成長を予想。先進国全体では前回のマイナス2・0%から1・8ポイント引き下げられマイナス3・8%と予測された。
 一方、高成長で世界経済をけん引すると期待されていた新興国も、ロシアが5・3ポイントの大幅引き下げでマイナス6・0%と日本並みに落ち込むとされ、中国が6・5%、インドも4・5%とそれぞれ成長率が鈍化する見通しとなった。
 IMFは、10年については世界全体で1・9%、日本は0・5%とプラス成長への回復を予測しているが「見通しは前例がないほど不透明であり、大幅な下振れリスクが存在する」との危機感も表明。さらに「金融市場の安定化には想定よりはるかに長い時間がかかる」と明記し、金融機関への公的資金の投入や大規模な財政出動を伴う景気対策の実施を加盟各国に促した。

毎日新聞 2009年4月23日 東京朝刊

                                                                   
【 記事2】                                                                   
                                                                   
GDP、2年連続で3%超減に 内閣府見通し下方修正 朝日新聞2009年4月27日

 内閣府は27日、08年度と09年度の国内総生産(GDP)の実質成長率見通しを公表した。08年度は前年度比3.1%減、09年度は3.3%減と、昨年12月にまとめた政府経済見通しを大幅に下方修正。世界的な景気悪化を受け、2年連続で戦後最悪のマイナス成長となる。
 見通しは与謝野経済財政相が同日午前の臨時閣議で報告した。昨年12月の政府経済見通しでは、08年度の実質成長率を前年度比0.8%減、09年度をゼロ%としていた。

 08年度については、09年1~3月期の実質成長率が年率換算で14%程度のマイナスになるとして、マイナス幅を拡大。09年度も、過去最大規模となる15兆円の経済対策が成長率を1.9%程度押し上げるが、それでも過去最悪だった98年度の1.5%減を超える落ち込みとなる。
 景気を引っ張った自動車などの輸出産業は08年秋から急速に業績が悪化し、経済全体に波及。09年度は輸出が前年度比27.6%減、民間設備投資は14.1%減と、比較できる55年度以降で最悪のマイナスだ。
 09年度のその他の指標は、完全失業率が5.2%と過去最悪だった02年度の5.4%に迫り、雇用者数も前年度比0.9%減と悪化する見通し。消費者物価指数はマイナス1.3%と05年度以来のマイナスで、物価下落が景気悪化を加速させる「デフレ」が懸念されている。

                                                                   
【 記事3】                                                                  
                                                                   
政府、09年度補正予算案を閣議決定 一般会計13兆9256億円  日本経済新聞

 政府は27日午前の臨時閣議で追加経済対策の裏付けとなる一般会計の歳出規模で13兆9256億円に上る2009年度補正予算案を決定した。ただちに国会提出し、午後の衆参両院の本会議で与謝野馨財務・金融・経済財政相が財政演説を行い、審議入りする。麻生太郎首相は補正予算案への野党の対応によっては衆院解散・総選挙に踏み切る構えをみせており、補正審議は政局含みだ。
 補正予算案の歳出規模は過去最大。当初予算と合わせた09年度の一般会計総額は102兆4736億円に達し、2度にわたる大型景気対策を実施した1998年度の89兆円を大きく上回る。4月中に補正予算案を国会提出するのは初めて。
 補正予算案の歳出として追加対策の関連経費14兆6987億円を計上。財源の一部に当初予算で設けた1兆円の経済緊急対応予備費のうち8500億円を取り崩したことから歳出規模は差し引き13兆円台となった。(09:13)
                                                      
【記事4】                                                                   
                                                                   
追加経済対策に一定の評価、需要喚起は今のところ限定 朝日新聞2009年4月24日

 政府が「不況脱出の4段ロケット」と呼ぶ過去最大の追加経済対策が決まった。住宅購入者にとっては、09年度予算と関連法の成立ですでに実行段階に入っている過去最大規模の住宅ローン減税とならんで贈与税の非課税枠拡大や住宅金融支援機構の長期固定型住宅ローン「フラット35」の10割融資などが追い風になる。
 住宅・不動産業界からは「若年層の住宅取得をバックアップすることになる」(岩沙弘道・不動産協会理事長)などと、政府による追加経済対策の早期実現に期待を寄せているが、足元の住宅マーケットは分譲住宅の供給抑制傾向や戸建て住宅の受注不振などが継続し、政策効果がまだはっきりと表れていないのが現状だ。
 予算と関連法の成立で、10年間で最大500万円(一般住宅)の税額を所得税・住民税から控除できる住宅ローン減税について、ある大手不動産の幹部は「販売現場で具体的にセールストークができるようになったことは大きい」と一連の景気対策を評価する。また、今回の追加経済対策で盛り込まれた贈与税の減税(住宅の購入や増改築が条件で、非課税枠を現在の年110万円から610万円に拡大)にも一定の評価を与えているが、「いかんせん親世帯のマインドは厳しく財布のひもは固い」と見ている。
 足元の住宅マーケットだが、首都圏の分譲マンションは3月の契約率が7カ月ぶりに70%台に回復し、販売在庫も昨年末の1万2427戸から8846戸に減少してきた。価格の下落などが奏功したためだが、その一方で新規供給の抑制傾向は今年に入ってからも収まらず、3カ月連続で前年同月比2ケタの減少が続いている。
 一方、戸建て住宅の受注も低迷が続く。大手住宅メーカーの受注状況をみると、昨年の“リーマンショック以降”、10月から2ケタの減少が続いており、例年だと受注が大きく伸びる年度末の3月期も同じように2ケタ減という状況になっている。
 家計への影響が大きい住宅ローン減税だが、分譲マンションの新規供給や住宅受注の現状を見ると、本格的な回復にはほど遠く、一連の政策効果もまだ限定的といえそうだ。
 元々大きな借金を抱えることになる住宅の購入や建設にとっては、将来不安に対するウエートが相当重く出る傾向がある。企業の業績悪化からボーナスだけでなく、ベースアップも期待できない景気の現状では、先行きに対する確信が持てないということだろうか。 いずれにしても、大型連休に向けてディベロッパー各社や住宅メーカーは販売攻勢をかけることにしている。野村不動産は首都圏で約500戸のマンション販売を予定しているほか、三井不動産など他の大手各社も軒並み新規物件を投入する。
 一方、住宅メーカー各社も太陽光発電システムを搭載した住宅など、政府や自治体の補助金などを追い風に“環境系”を切り口にキャンペーン活動を本格化させる。また、長期優良住宅普及促進法が6月4日に施行されることから、こうした施策もテコに受注活動を強化し、集約につなげる。
 今回の追加経済対策については、住宅・不動産業界だけでなく、電機・自動車といった産業界の反応もいい。住宅需要は景況感にリンクするといわれているだけに、今のところ政策効果は限定的だが、プラス材料であることは間違いない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年3月31日 (火)

究極の格差固定政策である「贈与税減免」が、どうして「景気対策」なのか。全部カネ持ちの子の世代の貯金になって、相続税分だけ財政に穴が開くだけではないのか。

麻生政権や自民党の「経済対策」の中には、お年寄りの資産が貯蓄されたままになっているので、贈与税を減免することで「相続税でとられるよりは」と子の世代への資産移転を促し、景気回復につなげようという話が出ているらしい。

これこそ、どさくさまぎれの「格差固定」政策だ。金持ち親子の財産の合計は、記帳する通帳が変わるというだけの話で、結局は蓄財だろう。どこが消費拡大になるというのだろうか。

マスメディアも相対的に所得の低い人々に手厚いと言える「定額給付金」を「ほとんど貯蓄にまわる」と騒いでいるのに、相続税がかかるような大金持ちの相続税を負けるだけの話を「景気対策」と強弁するような話しになぜ文句を言わないのか。メディア関係者も相続税減免で利益を受けるような金持ちが多いからか?

08年度2次補正の「史上最大規模の住宅ローン減税」だって、巨大な別荘を建てれば税金で1割近く(?)を割り戻そうという金持ち優遇そのもので、庶民とは無関係なものだ。

「バラまきより、的を絞った支出を」というのは正論だが、低所得者にも行き渡る「定額給付」を批判し、「的を絞った金持ち優遇」である数々の施策を見逃しているのでは本末転倒だ。

それにしても、09年度補正とか、2010年度予算編成をまた自民党中心の政権、お金持ちの麻生総理がやる可能性があるかと思うとぞっとする。

【以下、切貼】

首相、贈与税の大幅減免表明  追加経済対策で

 麻生太郎首相は28日午後、追加経済対策の一環として、高齢者が持つ金融資産を消費拡大に振り向けるため、住宅などの購入資金を生前に援助する際の贈与税を期限付きで大幅に減免する考えを表明した。

 高知市内で記者団の質問に「高齢者が息子や孫に(お金を)渡して家や車を買ってくれたら贈与税を安くする、ゼロにすることは、年数を区切って検討する値打ちがある」と答えた。

 首相は31日、2009年度補正予算編成を念頭に追加経済対策の策定を与謝野馨財務相に指示する方針だが、贈与税減免を追加対策の目玉政策にしたい意向とみられる。ただ、贈与税を減免しても恩恵は富裕層にとどまり、景気刺激効果は限定的との指摘もある。

 首相は、日本の家計の金融資産総額が1400兆円に上るとし「そのまま置いておいたら景気と何ら関係ない。お金は使わないと値打ちがない」と指摘。住宅建設や自動車購入を例に挙げて「ちゃんと消費したと証明できるものは(減免の)対象になる」と述べた。

 首相はこれに先立つ自民党高知県連の講演でも「家を建てるなら贈与税をただにすると言えば家を建て、景気が良くなるのではないか」と述べ、贈与税減免の有効性を強調した。

2009/03/28 22:20   【共同通信】。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年3月22日 (日)

「竹中氏の持論 現実離れでは」(朝日「声」欄投書)

少し前に朝日新聞が内橋克人さんのインタビューを掲載し、朝日も反省声明なき方向転換かといったことを書いたが、その後、竹中平蔵氏が正反対の持論を全開する大型インタビューが掲載されていた。

ここでは触れずにいたが、17日付「声」欄に、そうだ、と思う一文を発見したので以下ご紹介。朝日の学芸部にも経済部にはあきれている向きもあるのか。

竹中氏の持論 現実離れでは

会社員 古屋 喜基 (山梨県笛吹市 57)

 「資本主義はどこへ」(9日朝刊)で、竹中平蔵氏はグローバル資本主義や構造改革が格差拡大などの副作用をもたらしたとの指摘を一蹴する発言をしていた。世界大不況に突入した時期だけに、私は気になった。

 構造改革に着手のころ、皆が貧乏になるのか、一部の人が金持ちになり経済の底上げをするかのいずれかとすれば選択肢は一つ、との趣旨の竹中氏の発言を記憶している。確かに一部の人たちは金持ちになった。他方、日本が先進国の中では米国に次ぐ貧困大国になるほどの格差を生んだ。そして、経済の底上げは実現されていないのではないか。

 竹中氏は一人ひとりが勉強して稼ぐ力を身につければ解決するとしている。しかし、頑張って働いても収入が伸びないのが現実だ。こんな閉塞感が、不可解な犯罪や自殺者の増加を招いているのではないか、と思う。

 地方の郵便局を効率優先で廃止した件でも、過疎地の老人には困難な自立生活を強いる言及をしており、暗然たる思いを禁じ得なかった。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年3月 9日 (月)

【切貼】中谷巌氏、転向の弁(2009年3月9日付「毎日新聞」朝刊)

「何をいまさら」「今度は転向で本を売って儲けるつもりか」というご批判もあるかと思うが、そこは雲南の山賊の親玉を何度も許した諸葛孔明の寛容を見習って、いよいよわが陣営の陣容を厚くすることが賢明だろう。

以下、毎日新聞2009年3月9日付の記事の切り貼り。

語る:中谷巌さん 『資本主義はなぜ自壊したのか』を刊行

 ◇改革の副作用を懺悔した後に
 経済学者、中谷巌さんの『資本主義はなぜ自壊したのか』(集英社インターナショナル、1785円)が話題だ。アメリカ流の経済学を武器に構造改革を推進した中谷さんによる「懺悔(ざんげ)の書」。格差拡大など改革の副作用を分析して、日本経済再建の方向性をも示している。【鈴木英生】

 新自由主義=市場原理主義は今、金融危機、あるいは格差拡大や地球環境破壊の元凶として批判されている。本書も、新自由主義を放置すれば日本社会が棄損されると警告している。だが中谷さんは元々、新自由主義を日本に持ち込もうとした一人でもあった。

 1969年から米ハーバード大に留学した。<第一印象は「素晴らしい」の一語だった>。新古典派と呼ばれる経済学に心酔し、同国の豊かさをその理論の結果と信じた。

 「米国経済学の世界観は『マーケット』と『民主的政府』の2本の柱でできている。マーケットは資源配分を参加者の民主的なお金による『投票』で決める仕組み。他方、環境や格差拡大などマーケットで解決できない問題は、民主的投票で選ばれた政治家が政府を動かし、問題解決にあたる。経済と政治の両面で民主主義が貫徹すれば、社会は進歩してゆくとされています」

 帰国後、この考え方に基づいて日本社会の既得権打破、規制撤廃、市場の活性化を訴え続けた。90年代に入って細川内閣、小渕内閣で首相諮問機関の委員になり、小渕内閣の「経済戦略会議」の提言は小泉内閣に引き継がれた。だが、本人が米国流経済学から距離を置くきっかけは、このころの首相官邸通いにあった。

 「現場で、政治家や官僚の猛烈な利害調整のせめぎ合いに直面しました。米国経済学の世界観とは相いれない世界が、ここには厳然と存在していました。米国の経済学は、完ぺきに自己完結する世界を作っています。しかし、その外に広がる現実の社会は、しばしば合理的には説明できない不条理な世界であり、経済学の論理だけでは論じ切れないと思うようになりました。歴史や文化、宗教などもきちんと勉強したいと思い始めました」

 こうした勉強を続けるうちに、「やはり、経済学的世界観だけで政策を作るのは危ないと改めて思うようになりました。なぜなら、マーケットと民主政治に任せれば自然に良い社会が作られるという考え方では、日本社会がおかしくなってゆくと感じるようになったからです」。<人心の荒廃や、貧富の差の拡大は、(略)グローバル資本主義やマーケット至上主義そのものにビルト・インされたものではないか>という疑問が生まれたのだ。

 この疑問は、市場経済を限定的にしか導入していないキューバやブータンを訪れて再確認した。「両国とも貧乏ですが、人々は非常に穏やかで明るく見えた。もっと高所得国でも、貧困層は多くの場合、心が荒(すさ)んでいる。これは市場経済の副作用ではないのか」

 もちろん、日本が両国のようになれるわけもなく、市場経済を全面的に拒否すべきでもない。ただ、「日本がどんな国で日本人はどんな生活をしてきたかを考え、その価値観に合った市場の使い方をすべき」だと考えるようになった。

 本書は、日本の特徴を<世界でも類を見ない平等主義的な社会>だったことに見る。だから、目先の金融危機克服以上に<貧困層の底上げ、所得格差の是正によって、日本という「国のかたち」を整え直すこと>の必要性が導かれる。

 ここから、経済学者としての面目躍如の議論を展開する。「還付金付き消費税」の提言だ。まず、福祉目的で消費税を20%まで引き上げる。この時、年間消費200万円の世帯の消費税負担は40万円となるが、貧困世帯には、<毎年四〇万円ずつ還付する>仕組み。こうすれば、この世帯の実質税負担はゼロとなり、それ以下の年収の世帯は、むしろ還付金の方が多くなる。「日本の平等的な社会が欧米のように階級的に分断されたら、この国にはなんの強さも残らない」

 「改革のすべてが悪かったとは思いません。ただし、マーケットは万能ではない。使い方を間違えれば副作用が噴出する。私の主張は、配慮が足りなかったと認めざるを得ないのです」

 ◇マルクスの分析を評価
 <人間は仕事から疎外されたのである。資本主義社会における「人心の荒廃」はこのあたりに根源的な原因がある(略)><エリートたちが上手に一般大衆を支配し、搾取することが可能な、もっともらしい制度や仕組み、ルールを作ること、それこそ階級社会におけるエリートたちの暗黙の思惑(略)>。本書には、初期マルクスやレーニンが書きそうな言葉がある。経済学の中で最もマルクスと遠いはずの新古典派だが、「マルクスの資本主義分析には、正直なところ、学ぶべきものがあります」と中谷さん。最近、貧困問題に絡んでマルクス経済学の入門書が次々に刊行されている。この事実と合わせて考えると、中谷さんの発言は、更に重く感じられる。=「語る」は随時掲載します。

==============

 ■人物略歴

 ◇なかたに・いわお
 三菱UFJリサーチ&コンサルティング理事長。1942年生まれ。米ハーバード大博士号取得。一橋大教授など歴任。細川内閣で経済改革研究会委員、小渕内閣で経済戦略会議議長代理。著書に『入門マクロ経済学』など。

毎日新聞 2009年3月9日 東京朝刊

【以上、切貼】

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年3月 5日 (木)

長谷川憲正議員の「竹中参考人招致」要求を支持する

午後の参院予算委質疑の最後は、国民新党の長谷川憲正議員だった。朝日の記事も紹介しているが、長谷川議員は竹中平蔵氏が鳩山邦夫総務相によるかんぽの宿払い下げ問題に関連して「与野党の郵政族議員が結託して」などの非難を繰り返していることについて、竹中氏を参考人招致して見解をただすことを要求し、北沢委員長も「理事会で協議する」と引き取った。

聞いていてなるほどと思ったのは、政府が100パーセント株を持っているのだから、あまり日本郵政がおかしなことやっているならば、臨時の株主総会を開かせて、役員全部入れ替えてもいいのだし、外国にはういう前例もあるという話しだった。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年2月26日 (木)

「商品券(地域振興券)は効果が無かった」というのも本当か

きまぐれな日々」で森永卓郎氏の定額給付金は本当に意味のない政策かを知って読み、全く同意見であると共感する。テキストファイルにしておいて、いろいろ説明するときに使わせていただきたいと思う。

関連してだが、森田はテレビでこうした問題を解説したり、コメントを述べる人々の大半が「定額給付金」構想を批判するときに「小渕内閣の時に商品券(地域振興券)を配ったが、これもGDPを押し上げる効果はほとんどなかったことが政府自身の統計で明らかになっている」というセリフを異口同音に語っていることについても、ちょっと待って欲しいと思っている。

たとえ話だが、「かぜをひいて、風邪薬を飲んで、直った」としよう。さてこの場合、風邪薬を飲んだから直ったのか、それともひょっとして飲まなくても直ったのか、どっちだろうか。

もしある程度確からしい実証をしたければ、同じような症状の人に「かぜを飲ませたケース」「かぜ薬を飲ませなかったケース」、それと心理的効果を測るために「風邪薬と同じ形状の、例えば小麦粉を加工したものを飲ませたケース」などについてデータをとり、それぞれのケースを比較しなければ本当のところは判らないと思う。

小渕内閣の「商品券」の経済効果があったか、なかったかについては、同様に本当は「商品券を配った場合のデータ」「配らなかった場合のデータ」を比較しなければ、効果があったのか、なかったのかはわからないはずだ。たしかにあの規模では焼け石に水だっただろうが、そうした裏付けなしに「経済持ち上がらなかったですよね」「やっぱり効果なかったんですかね」というような話であれば、その辺のおじさん、おばさんのおしゃべりと変わらない。

それを、役所のブリーフィングを鵜呑みにしてか、竹中平蔵さんがスマステーションに出て「鮮やかに」説明して若いタレントやスタジオ参加者を感心させている姿に感動してか、それとも「みんなが言っているから」という理由からか、壊れたレコードのように「かつての商品券も全く効果がありませんでした」としたり顔で繰り返すのは愚かなことだと思う。

「商品券」。実行したのはかつての自民党首班内閣で、強く求めたのは連立与党の公明党だった。しかし、この人々を批判して政権与党の座から引きずり下ろすということと、個々の政策の実証的な評価は峻別して考えるべきだろう。

「給付金」も、麻生内閣が提案しているとはいえ、マクロ政策としても、あるいは結果として消費税の逆累進性を緩和する手段の一つとしても正しいと思う。

問題は、森永氏のいうように今回の措置としては規模が小さすぎることと、毎日新聞2009年2月22日付朝刊1面の記事が報じたように、ワーキングプアーとなって住民票を置いていた場所から移動して住所不定になったような最も困窮した人々に対し、給付をゆき渡らせるための手だてを事務を丸投げされた自治体の大半は行っておらず、麻生自公連立政権の側からその問題についての責任ある対応が打ち出されていないことだ。

リーマンショックから5ヶ月。成果はともかく、欧米の政権や、自民党政権の多くの連中が馬鹿にしている中国も大規模な政策をとっくに実施に移している。オバマ政権と米民主党議会指導部は法案成立に必要な3票のために、たった3人の共和党上院議員の提案を丸呑みにして2週間で法案を成立させている。結果を出せない政治家、政権はダメだ。

自民党、公明党は「野党の抵抗」というが、「どう野党の言い分を飲み、法案や予算を必要なスピードで成立させるか」は、政権与党の責任であり、能力のバロメーターだ。

【以下、上記毎日新聞記事の切貼】

定額給付金:ネットカフェ難民らへ届かない 自治体9割、対策なし

 ◇3億円宙に? 総務省「仕方ない」
 生活困窮者支援を目的の一つとする定額給付金について、給付窓口となる全国の市区町村の9割が、住まいを失った非正規社員やホームレスなど、住民登録の困難な人に対する通知方法を検討していないことが毎日新聞の調査で分かった。厚生労働省の統計では、「住居喪失者」は2万4000人以上いるとされ、景気の悪化でさらに増えると予想される。3億円規模の給付金が生活困窮者に届かない恐れが強まっている。【まとめ・篠原成行】

 総務省が1月28日付で通知した「定額給付金給付事業費補助金交付要綱」では、「市区町村は受給申請に必要な書類を、2月1日までに住民登録を完了した住民に配布する」としているが、住居喪失者への通知義務は定めておらず、通知方法も示していない。

 今回の調査は要綱通知後の2月初旬、各都道府県を通じて実態を調べた。その結果、住居喪失者への配布方法について「何らかの対応を検討中」としたのは全国1804市区町村のうち横浜市、千葉県船橋市、神戸市、岐阜県多治見市など12市にとどまり、少なくとも1573市町村(87%)は検討していなかった。東京、茨城、山形、兵庫、奈良の5都県は「各自治体の方針は把握していない」と回答した。

 検討中と答えた12市のうち、具体的な通知方針を示したのは埼玉県蕨市と大分県国東市の2市。蕨市は「ネットカフェに1カ月以上滞在している人には、店舗を住所として給付する」、国東市は「住民登録のない人に対しても、指定した地区の全戸に郵便物が届くタウンメールを使う」と回答した。

 岐阜市の担当者は「住民登録してない人への対応まで手が回らないのが実情」、広島県福山市の担当者は「住居喪失者を確認しようとすると市の負担が増える」と話した。

 総務省定額給付金室は「給付金は住民登録に基づく事業なので、通知は自治体に任せている。住民登録がなければ給付できなくても仕方ない」としている。

 ◇混乱予想できた--政治アナリストの伊藤惇夫さんの話
 実施までの過程をすべて地方に丸投げした施策で、自治体が混乱するのは最初から予想できた。国の政策なのだから、「住民登録に基づく事業で、通知は自治体に任せる」という言い方には、自治体も納得しないだろう。

毎日新聞 2009年2月22日 東京朝刊

【以上、切貼】

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2009年2月23日 (月)

内橋克人氏インタビュー全文(『朝日新聞』2009年2月23日付朝刊オピニオン欄掲載)

【以下は、『朝日新聞』2009年2月23日付13面オピニオン欄掲載の経済評論家・内橋克人氏のインタビュー記事の全文写しです】

資本主義はどこへ
協同考え新たな基幹産業を

競争と共生

内橋克人さん 経済評論家

  内橋さんは市場万能主義、競争至上の新自由主義経済に異議を唱え、90年代から「このままでは雇用が破壊される」「社会のきずなが断たれる」と警鐘を鳴らしてきました。現状をどう見ますか。
 「今の日本は一番大事なものを失いました。それは、人間の尊厳と景気の自律的回復力です。これまでは景気が悪くなっても設備投資が動き出し、やがて働く人びとの所得が増えて好況になった。しかし、日本はいびつな不均衡国家になってしまった。過剰な外需依存と格差拡大、簡単に職を奪われ、安心して消費もできず、景気変動に耐える大事な力を失ってしまったのです」
    なぜ極端な不均衡国家に。
 「日本はグローバル化に『対応する』べきところを『適応する』ことばかり考えてきました。外資を稼いでもらおうとトヨタやソニーなど『グローバルズ』(日本型多国籍企業)に政策支援を集中させ、同時に国内ではリストラが進んだ。小泉構造改革の下で始まったいわゆる『いざなみ景気』の中で、製造業への派遣労働が自由化され、海外に進出していた工場が『日本回帰』と絶賛されて帰ってきた。つまり、国内でも低賃金で雇用できるようになり、輸出によって海外で稼ぎまくった。一方、多くの派遣労働者は社会保障の枠外に置かれ、クビを切られている。賃金、社会保障、地方、農業、あらゆる面で格差が拡大した。グローバルズが稼いだ外貨は十分還元されず、米国の浪費にすがることもできなくなって操業停止です」
    雇用問題は深刻です。
 「市場万能システムでは人間は単なる労働力であり、経営者も景気の条件反射のように労働力を切る。もともと雇用を減らすのは最後の選択だから、例えば雇われている人の数を示す雇用指数は、足元の景気よりやや遅れて動く『遅行指数』とされています。それが今や、景気の先行きを示す『先行指数』のような状況です」
                      
 ■企業化した「公共」

    内橋さんたちの異議は、しかし市場主義の潮流の中では力を持たなかった。
 「過去30年に及ぶ新自由主義政策は周到につくられています。時の権力者たちは、一つの思潮を広めるのに必ず学問とマスコミを動員します。アメリカでは『シカゴ学派』を、日本では規制緩和の諮問会議などを通して、『官から民へ』『働き方の多様化』『努力した者が報われる社会を』などとあおった。私は、こう問うてきました。『民』は民間巨大資本の民ではないか。働き方の多様化ではなく、働かせ方の多様化ではないか。努力が報われる社会は結構だが、競争社会では最終的に一人勝ち、敗者は努力不足だからあきらめろというのか、と」
 「日本人は、時流に乗る熱狂的等質化の傾向が強く、強い者に弱く、弱い者には強いという特性があって、少数の異議申し立てが排除されやすい。これは危険だと思います。『公共』という意識も弱く、公共の企業化という流れの本質もなかなか見抜けなかった」
    現在の資本主義は破綻しかけている、との見方があります処方箋はありますか
 「世界の国内総生産(GDP)の合計は54兆ドル(約5千兆円)ほどなのに、金融市場を暴走するホットマネーは最大で約540兆ドルともいわれます。利が利を生む虚のマネーが巨大化して実体経済を振り回してきた。もはや制御不能です。ホットマネーはいずれ自滅すると思いますが、実体経済を救うためにも、国境を越えて本当の専門家を集め、真剣に国際協調に取り組む必要があります」

 ■分断から連帯へ

    内橋さんは「共生経済」、具体的には「F(食料)E(エネルギー)C(ケア)自給圏(権)」を提唱しています。
 「競争の原理は分断です。分断して対立させ、競争させる。切磋琢磨は結構ですが、共生は連帯と参加と協同を原理として食料、エネルギー、介護など人間の基本的な生存権を大事にする。FとEとCを自給し、消費するだけでなく、そこに雇用を作り出す。その価値観の下で新たな基幹産業を創出し持続可能な社会に変える。経済効果は大きいはずです」
  「オバマ大統領は『無保険者に保険を』と公約し、財源として富裕層優遇減税を見直す考えです。所得再配分政策の復活です。FEC自給圏に通じます」
  国内経済優遇は保護主義につながるという意見や、逆に江戸時代のような自給経済に戻ろう、といった声も出てます。
 「とんでもない。FEC自給圏は人間の安全保障です。私は古き良き日本がいいなどとは思いません。差別や身売りがあり、基本的な生存権が奪われていた時代ではなく、人間を第一義とする共生経済をめざしているのです。それは小さな地域や若者たちの間で、すでに始まっている未来です」
                               
(聞き手 都丸修一)

内橋克人(うちはし・かつと)
 32年生まれ。神戸新聞記者を経て67年から経済ジャーナリスト、評論家として活躍。日本の技術者たちを描いた「匠の時代」シリーズをはじめ、「規制緩和という悪夢」「経済学は誰のためにあるのか」「共生の大地」「悪魔のサイクル」など、現場主義と実証に力を入れた著書多数。

【以上、写し】                                 

※森田コメント:『朝日新聞』経済部は、一貫して新自由主義路線=小泉・竹中路線=を支持し煽ってきた。リーマンブラザース破綻と世界経済変調という事態を経て、昨年10月に突然、サミュエルソン氏の新自由主義批判の寄稿を掲載して総括なき部分的方向修正を示している。 小泉・竹中時代に内橋氏の大型インタビューなどを掲載してきたのは朝日ではなく、読売だった。今回のインタビューもWEB版には不掲載。
 ところで、森田が期待する政権交代後の内閣像は「内橋克人財政経済担当大臣」「財政経済諮問会議の民間委員の一人は神野直彦氏」といった姿だ。「チェンジ」しかも「明確なチェンジ」が必要なのだ。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2009年2月19日 (木)

NHK総合「地域発!どうする日本『危機の自治体』」(2009年2月13日放送)

先週金曜日放送の「地域発!どうする日本『危機の自治体』」はなかなかよい番組だった。

春に「自治体財政健全化法」が施行されるに向けて、地域社会でどんなことが起きているかが紹介され、その背景、問題点をわかりやすく紹介していた。

早い話、法律を作った趣旨は「第三セクターなどの隠れ借金をあぶり出すため、自治体に公営事業なども含めた連結決算の公表を義務づけ、それについて総務省が作る判定基準に基づいてイエローカード、レッドカードを出していく」というものだ。

それでは現実にどういうことが起こっているか。例えば、仙台近郊の自治体で児童館による就学前の子どもを預かる事業が今年度限りで廃止されるということが一方的に保護者に通知された事例や、去年の地震で一部破損しているような公立中学の耐震補強工事もできないといったことが紹介されていたが、もともと財政が厳しい自治体の福祉・教育関係の予算の切り詰めが起こっている。

こうしたこともきっかけとなってか、住民の委員会による財政の洗い直しが行われ、町役場の職員のボーナスに当たる手当が地域の民間企業よりうんと高いことが明らかにされたといったプラス効果もあるようだ。

しかし、起こっていることをマクロ的に見れば以下のような流れになるということだ。

「90年代の景気対策において中央から『どんどん公共事業をやってほしい。あとで地方交付税で穴埋めする』という話があったので、銀行からたくさん借金をした」

「ところが小泉内閣の『三位一体の改革』で地方交付税が削減され、財政がひどく悪化してしまった」

「ここで『連結決算』という話で、赤字を小さくすることが迫られる。そうすると、とにかく銀行への返済は優先し、また歳出の切り詰められるものは切り詰めることになる。そのような中で、医療・福祉・教育など、人々がいちばん重要な公的なサービスが切り詰められる」

もちろん、出演した片山善博前鳥取県知事が言うように「借金まみれのおじさん(霞ヶ関)が『どんどん借金しなさい。あとで穴埋めするから』というのを信用してしまった」と言う問題があるわけだが、無駄なハコモノなどのために自治体に貸し込んだ銀行にはとりはぐれがおこらないのに、福祉など人間存在にとっての「聖域」(内橋克人氏)はどんどん切っていくことを迫る、この小泉改革が作り出したワク組みには大きな問題がある。

生活者目線で踏み込んで意見を言う星野知子さん、片山善博氏、内橋克人氏、松本和也アナウンサーという顔ぶれもとても良かった。

※「自公連立政権・麻生内閣」のこの問題に対する回答は、「1兆円を自治体に配るが8割は道路、残りも道路関連に限定」だ。民主党はじめ野党の、明確なオールタナティブをぜひ聞きたい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年2月16日 (月)

「GDP、年率換算マイナス12.7%」-騒ぐより、プログラムを出せ

与謝野財経担当相も、就任当初言っていたことの不明を恥じるのは結構だが、この際は渋面作って俯いているよりも、日本経済の未来をどうするのかプログラムを出して欲しい。

政治家も、政党も、官庁も、学者も、メディアも、銭形平次の八五郎じゃあるまいし「たいへんだ、たいへんだ」と言っているだけではダメだ。

特に、自民党では次の財務相を担うつもりのある政治家とその仲間たち、そしてもちろん、次期民主党連立政権の中枢を担うべき人々とそのアドバイザーたちの時代に負う責任は大きい。

だいじょうぶ。なんと言っても、我々は日本人なんだから、きっといい知恵を出して切り抜けることができるさ。

イメージだが「原資は100兆の無利子国債の日銀引き受け、それで現在38万人分不足しているという特別養護老人ホームを一挙に建設し、看護師や介護ヘルパーの給料を倍にする。国立大学と公立高校の学費を5年間無料にし、福祉・環境・教育分野の職業教育・人材育成を徹底する」といったことをやったらどうか。5年とか10年の時限で農業や林業の「人民公社」を作って雇用を作り出すと共に食糧自給率や木材の自給率も一気に引き上げるという意見が出てきてもいい。

「かんぽの宿」の話などは徹底して解明することが必要だが、マクロ的には与野党とも、小泉純一郎ごときに振り回されてコップの中の嵐のような政局ごっこをやっている暇はないはずだ。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

本当は「アル中不祥事で辞めるか、辞めないか」より、「就任前に言っていた財政出動をするのか、財務省の役人の言いなりで結局できないか」が問題だ。=中川昭一財務相=

表題以上に何も付け加えることなし。

森田とはイデオロギー的に真逆の人だが、麻生さんと組んで、財務省を抑え込んで適切な財政政策を実施するのではないかという一点で密かに「期待」したのだが。

結局、かつて歴史教科書問題で騒いだり、NHKに圧力をかけて「従軍慰安婦」に関する番組をトーンダウンさせた右翼の政治家ということ以外に何も実績なしで終わるのか。

いつか、週刊誌のインタビューのあとがきで、林真理子女史が中川昭一氏を持ち上げまくっていたが、彼女の眼力も知れたものだな。

| | コメント (0) | トラックバック (2)

より以前の記事一覧