2008年5月 9日 (金)

メドベージェフ大統領はいつまでもプーチン傀儡ではないかもしれないというNHK石川解説委員の意見

ニュースが胡錦涛主席来日と重なったが、ロシアのメドベージェフ大統領の就任式があった。クレムリンの側で売られているプーチン・メドベージェフのツーショットの肖像を表面に描いているマトリューシカ(次々に中から小さなものが出てくる人形)を見ても、プーチン前大統領がやや前面に出ている様子をテレビでも紹介していた(NHK・BS1「今日の世界」)が、事実上、前大統領の指名による選出であり、「新大統領はプーチン氏の傀儡」という見方が多いようだ。

もっとも、「アジアクロスロード」(NHK・BS1)での石川解説委員は、そういう面は当初は否定できないにせよ、ロシアの大統領権限は極めて強大であり、首相に就任するプーチン氏に対して忠臣とはいえ世代による感覚の違いがあるメドベージェフ氏が、やがてフリーハンドを確保しようとする方向性が出てくるのではないか。その場合に摩擦が起こることも否定できないという見通しを語っていたのが印象に残る。

ブッシュのアメリカがイラク戦争にかまけているうちに、ロシアはチェチェンの人権問題などでの欧米の批判をすり抜け、豊富な産出を誇るエネルギー価格の上昇などで「勝ち組」の様相を示している。APEC開催地に決まったウラジオストックなど極東のインフラ整備も急速に進み始めたようで、温暖化問題でも大きな存在だ。日本の近隣外交という面からも再び目が離せない存在になってきている。領土問題など、歴代自民党政権のようなアプローチではなく、早めに「お互いの主張の真ん中あたり」で折り合うのが合理的な考え方のように思うけれど。

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2008年4月12日 (土)

「物価高はしょうがない」(福田首相)は間違い。過去10年の主要国指導者が引き起こした人災だ。

福田首相が、恒例の新宿御苑における「桜を見る会」で「まあ、いろいろありますよ。物価が上がるとか、しょうがないことはしょうがないのだから、耐えて工夫して切り抜けていくことが大事だ」と発言したそうだ(共同)。

「しょうがない」は間違いだ。食料品価格の上昇、エネルギー価格の上昇と、欧米の金融危機と信用収縮による景気後退などには、はっきりした原因がある。

端的に言えば、アメリカの「戦争」と「バイオ燃料推進」、またいかがわしい金融システムが生み出すバブルに依存した経済システムの破綻が原因となり、無責任な投機マネーにコントロールがきかないことが状況の悪化に拍車をかけているのだ。

日本など主要国の首脳は、それに歯止めをかけることができず、オールタナティブを示すことができなかった。特に日本は、今でも「イラク戦争支持」は間違っていなかったと公言し、「金融立国」なぞ幻想に過ぎないというしっかりした整理を打ち出せずにいる。いまだに「改革が充分でないからだ」などと寝言を言っている人がいる。

アメリカがITバブル崩壊後も続けた、住宅バブルと「証券化」などのテクニックを悪用した信用創造による好況は、破綻した。このアメリカのバブルと中国経済の成長に便乗するだけで、中身のない、あるいはせいぜい労働分配率を下げて企業の見かけ上の業績を上げただけの「改革」騒動の一方で、「内需拡大」につながる必要な政策展開を全くさぼってきた日本の政府与党中枢と霞ヶ関の罪は重い。

主犯はブッシュ政権と、小泉・安倍政権だが、「しょうがない」などと言って、起こっていることの原因についていい加減な情勢判断で済ませていては、わが国の将来はたいへんなことになる。ここは厳しい分析によって、何が間違っていたのかをまずハッキリさせるべきだ。

外交も、内需拡大に主眼を置いた経済政策も、そして現実に起こっている弱い立場の人々の状況深刻化にセーフティーネットをしっかり張ることについも、必要なことは「原理をハッキリさせた上での『転換』」だ。これは、総選挙で「なんとなく民主党中心の政権が出来ました」というだけでは充分ではないだろう。

「食料、エネルギー価格の高騰」、「金融システム動揺と世界大の景気後退」「日本の内需主導への転換の遅れ」「社会保障政策の機能不全」などについて、現状を厳しく分析し、「次の政権の4年間」で成し遂げる「転換」のゴールとプログラムを明確にし、自民党に変わる政権を形成する人々にそのような政策の採用を迫り、新しい政権に対する国民的な支持をとりつけるよう力を尽くす。

日本のリベラル派言論人、政治に関わるリベラル派の一人一人が、いま大きな使命を負っている。

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2007年11月 8日 (木)

漁業資源枯渇?-ノルウェーの資源保護に学ぶべき

店先にはたくさん並ぶサカナたち。しかし、サバなどの資源量は激減しており、漁業者は早い者勝ちの「総量規制」のルールの下で、本来は将来の「親」になってもらうために獲り残すべき、また値段の安い小型のサバでも、いまの収入を確保するために根こそぎとってしまっている。

現行の「総量規制」というのは、漁船ごとの漁獲量を規制するのではなく、例えばサバについて、ある水域で今年獲っていい「総量」を決めるもので、各漁船がどれだけ獲るかは決めていない。早い者勝ちだから、大きいものが獲れる水域を選んだり、目の大きい網を使っていては、他の漁船が先にシェアーを奪ってしまい取り分がなくなってしまう。

7月に放送されたNHKの「クローズアップ現代」、9月放送の「サイエンスゼロ」などで紹介されたが、ノルウェーは「総量規制」ではなく、厳格な漁船ごとの漁獲量の割り当てを行い、網目も大きめなものに規制している。行政当局の監視も厳格で、抜き打ち検査で漁獲量の申告に虚偽が発見された場合は、警察に告発している。

その結果、漁業者はあわてなくてもシーズン中に自分が漁獲できる量が決まっているので、あわてて小さなものを獲る必要がない。じっくり大型のものがいる漁場を探し、網目の大きな網で狙えば、大きく育った、高値で売れるものが手に入る。

その結果、日本のスーパーでも脂の乗った大きなサバはノルウェー産だったりする。一方で、ノルウェーの漁業資源は、この規制を導入してから劇的に回復している。

政治や、行政はこういった外国の成功例については謙虚に学び、スピード感をもって導入すべきだ。「アメリカやイギリス並みの金融市場の規制緩和を」などという、金持ちをますます金持ちにして政治献金をいっぱいもらおうといういった話しばかりに熱心で、国民生活や環境にかかわるようなこういった問題にしっかり取り組んでもらわなければ困る。

今年、新しい「水産基本計画」を作ると聞いたが、農水省は補助金付きの外郭団体に天下り先を確保することや、ウィキペディアにガンダムに関する書き込みばかりやっている場合ではないのだ。

さらに、海はつながっているので、この話しには韓国や中国、ロシアとしっかり話しをすることが大事だ。小泉氏のように「靖国参拝」などで対話の基盤を破壊し、ロシアをことさら無視したり、安倍氏のように「米豪印と結んで中国を牽制しよう」などとトンチンカンなことをやっていては、現実的な国益も、地球環境も守れない。

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2007年6月25日 (月)

2050年までに世界の軍備の半減を

今日付の『毎日新聞』の読者投書欄に、阿部敏夫さんという75歳の男性による「『温暖化防止に軍縮』日本主導を」という意見が掲載されている(2007年6月25日)。

阿部さんは武力紛争、軍事力保持そのものが二酸化炭素排出に拍車をかけており、温室効果ガス排出に歯止めをかけるには、軍拡競争をやめさせるのが先決ではないかと言っている。

なるほど、その通りだ。森田も、安倍首相はアメリカの賛成することの尻馬に乗ることばかり考えるなという視点から「温暖化対策」だけではなく、「軍縮」を忘れるなという意見を書いたが、阿部さんの「2050年までに軍備半減」というのはキャッチフレーズとしてもいいし、故マクナマラ元米国防長官らの「戦略核をまず半減」という具体的な提案とも符合している。

今後、使わせていただきたい。

「2050年までに、軍備も半減を!」

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2007年5月24日 (木)

「温暖化ガス削減」も大事だが、「核軍縮・不拡散」を忘れるな!=猪口邦子代議士などもっと働くべし=

ニュースを聞いていると、安倍内閣は今年のドイツでのサミットと、来年わが国で開催されるサミットの中心テーマは「温暖化ガス削減問題」であると考え、わが国が「主導権」を発揮すべく削減目標設定に取り組んでいるそうだ。

もちろん、温暖化ガス問題は重要であり、そのことに異論はないが、ブッシュ政権がソッポを向いているときには主要課題としてまじめに取り組むことをせず、「イラク戦争」の世界政局が終局に向かう中、EUが先手を取り、イギリスのブレア政権がイラク戦争毒消しのために、より意欲的な数字を打ち出し、件のブッシュ政権ですら6年間無視していたのに、風向きが変わったかのようにバイオエタノールを柱に意欲的な目標を打ち出した後になって尻馬に乗って騒いでいるに過ぎない。「主導権」とはちゃんちゃらおかしい。

「温暖化対策」が世界政治のなかで動き出そうとしているのは、「9.11同時多発テロからイラク戦争、イラクの泥沼化」という大政局の中で、一時的に凍結されていた、本来取り組まれるべきテーマが再浮上しているというように捉えるべきだ。

それなら、「ブッシュ様のお許しが出たから、温暖化問題に取り組もう。格好だけでも主導権をとっているようなポーズをなんとか決めよう」といったいつもの対米盲従ばかりでなく、「9.11以来の一時的大逆流」の中で、背景に押しやられていたテーマの中で、日本が、わが国が、自分の頭で考えて、何が再び優先的に取り組まれなければならないかについて、イニシアチブを発揮すべきである。

「共和党主導の米上院、ブッシュ政権、9.11からイラク戦争」という流れの中で、温暖化ガス規制問題が進まなかった構造を象徴したのが、共和党主導の米上院の決定による、アメリカの京都議定書離脱だった。

同様に思い出すべきは、クリントン大統領が世界の首脳に先駆けて署名した全面的核実験禁止条約の批准が、共和党主導の上院によって阻まれたという事件である。

冷戦終焉後、父ブッシュ大統領、クリントン大統領の下で推進された国際協調と核軍縮・不拡散のそれなりに誠実な追求と対照的に、ご承知の政権の下、ご承知の事情によって逆流の中にあったのだ。2005のニューヨークでのNPT再検討会議におけるブッシュ政権代表の悪態と、会議の不首尾は、その最たるものだった。

日本政府は、ポチのようにアメリカ政府に追随して「温暖化ガス削減」を叫ぶばかりでなく、アメリカ政府に対して「核軍縮・不拡散も忘れないでくださいよ」と強く言うべきだ。温暖化ガス対策が2007のドイツサミットの売りなら、2008日本サミットは本来ならば「核軍縮・不拡散の新たなステージへ」をテーマまとするべきである。

野党は、ぜひそのような課題設定を打ち出してほしい。自民党でも、軍縮問題に詳しいはずの猪口邦子代議士などは朝日新聞に立派な意見も発表しているのだから、口先だけではなく、政府の政策に反映するようもっと働いたらどうなのだろうか。評論家ではなく、与党の政治家なのだから。結果を出さねば存在価値なし。

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2007年2月11日 (日)

六本木東宝シネマズの『不都合な真実』チケット売り切れ

明日、家族を連れて六本木東宝シネマズにゴア元副大統領の『不都合な真実』を見に行こうと思ったけれども、前売り券は夕方までの4回までは全て売り切れ。来週以降にすることに。

12月30日の午後に『硫黄島からの手紙』を見に行った時には(たまたま安倍総理の前日だった)、ずいぶん入っていたけれども前夜の予約でいちばんいい席だったので、なかなかの人気のようだ。これは嬉しいニュース。

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2006年9月 4日 (月)

「自動車を輸出して、ぜいたくブランド品を輸入」でいいか?~寺島実郎氏のNHKラジオ「ビジネス展望」での発言

2週間ほど前の、寺島実郎氏のラジオでの発言に共感する。自民党総裁選で、このような大事な議論が全くなされていないことに大いに不満を感じる。以下は放送録音を森田がメモ化。

「貿易構造の変化に見る日本産業の実像」
財団法人日本総合研究所理事長 寺 島 実 郎
(2006年8月18日、NHKラジオ「ラジオ朝いちばん」~ビジネス展望~)

 寺 島 日本産業の自画像ということを申し上げたいんですが「日本という国はどうやって生活してるんだ」、「どうやってお金を稼いで、どうやって使っているんだ」ということをもう一回冷静に考えてみようということなんです。
 かつて大阪万博の頃までは、よく経済白書なんかにも「国際収支の天井」なんていう表現が出てきてまして、どういうことかというと「外からお金を稼ぐ力、つまり輸出力がないから、買いたいものも買えない」という時期が続いてたんですね。
 ところが日本産業大きく変わってきていてですね、昨年の貿易統計の数字を見ていて、実に考えさせられることが多いんですね。
 まず、日本産業いったい「何で稼いでいるのか」ということなんですが、昨年「輸出66兆円」ということになっているんですが、1位、稼ぎ頭が「自動車産業」ですね。2位が「半導体等電子部品」、3位が「鉄鋼」、4位が「自動車部品」、5位が「化学光学機器」という、この五つの品目で日本は輸出の35パーセントを支えているんですね。
 特に、30年近くも輸出のトップ品目を占めてきているのが「自動車産業」なんですね。「自動車」と「自動車部品」で日本の輸出の2割を支えていると。
 実は、昨年の日本の自動車メーカーは国内で1,080万台生産してですね、海外で1,060万台と、ほぼ海外生産が国内生産の台数と肩を並べたんですね。
 にもかかわらず、あいかわらず輸出のトップを支え続けているということは、輸出している車の中味が変わってきててですね、高級車だとか、ハイブリッドカーだとかですね、1台で多くの外貨を稼げるような自動車の輸出に切り替えてきているからなんですね。
 いずれにしましても、そういう産業力を蓄積することによって、66兆円の輸出力=外から稼ぐ力を持っているから、こんどは「輸入できる力がある」というわけです。
 それでは「何を日本は輸入してるんだ」というと、昨年は「57兆円」輸入しているわけなんですけれども、よく言われるように「エネルギーと食料」をですね、外から買って、それに「原材料」を買って経済を成り立たせている国ということになっているんですけれども、「エネルギー」が日本の輸入の25パーセント、「食料」が10パーセントで、このふたつで35パーセントの輸入をしているということなんてすね。
 ところが、去年起こった出来ごとの中で、非常に注目すべきだと思うのが、この何年かの傾向でもあるんですけれども、着るもの「衣料品」が、輸入の9分類品目の「第2位」になってきてるんですね。
 これはどういう意味かっていうと、もちろん近隣のアジアからの比較的安い下着とかそういうものの輸入も含まれているのですが、大きく伸びている理由は実は「ファッション」なんですね。つまり、欧米の「ブランド商品」なんです。
 調べ直してみると、衣料品に「バッグ」だとか「靴」などの履き物、「時計」、宝石のような「貴金属」を合わせると、去年日本は「4兆5,000億円」、海外から輸入しているわけです。要するに、昔のことばで言えば「ぜいたく品」と言えるようなものですね。 ブランド商品というのは、それなりに魅力があることは僕もよくわかるわけですが、とにかく「ブランド商品を外からどんどん、どんどん輸入するような国」になっているという数字がはっきり出てくるわけです。
 要するに「外から稼ぐ力を利用して、エネルギーと食料を外部に依存して、加えていよいよファッション性のあるブランド商品のようなものを海外から輸入している国」、そういう自画像になってきたわけですね。
 一家の家計のイメージで言えば、自動車産業に象徴されるような「外から稼ぐ力のあるお父さん」が活躍しているもんだから、それに依存して、生活の基盤であるエネルギーと食料をどんどん海外に依存してですね、さらに加えていよいよ、生活そのものに関わるわけではない、より付加価値の高いブランド商品なんかを買うようになっていることが確認できるわけなんです。
 ひとことで言うと、産業構造の歪みとまでは言いませんけれども、せっかく「外から稼ぎ出す力」というものを、「産業力」、「技術力」という形で持ちながら、それを「本当にうまくこの国は使っているのかなあ」という問題意識がでてくるんですね。
 例えば今後の方向として「産業力を活かして、産業構造の危うさに対応する」路線といったものが僕は今後必要になるんじゃないかと思うわけです。
 「エネルギーと食料」も、欧米の先進国と比べて、日本くらい外の国に依存する危うい構造になっている国は少ないわけですね。
 食糧なんかでも、アメリカはもちろん100パーセントどころじゃない、食糧の最大の輸出国ですし、「日本の食料自給率はカロリーベースで40パーセント程度」といわれてますけれども、欧州の主要国はことごとく食糧自給率100パーセント以上ですので、そういうことを考えると、日本の「技術」を活かして、問題を解決していくような方向っていうものが重要になってくるだろう。
 たとえば、いま話題になってきている「バイオ燃料」っていう世界があるんですけれども、要するに「植物からとったエネルギー源を、より活かしていこう」という考え方なんですけれども、これは「エネルギーの中東に対する依存度が極端に高い」というのが「日本の危うさ」の原因の一つだということに対応することになる。
 「食糧の自給率が極端に低い」ということが日本の危うさの原因であることについて、例えば日本の技術力で、再生可能なバイオ、植物を使って農業を活かしてですね、エネルギーを生み出して、それで海外に対するエネルギーの依存なども解決していく。
 つまり日本にとってやはり「虎の子」は「技術力」なんですね。産業を今日のような形にまで育ててきた。そういうものを活かして問題を解決していく力が、産業構造の歪みを考えたときには必要だなあと思います。
 もう一つは、変な言い方ですけれども「がまんのシナリオ」といいますか、さっきの「ぜいたく品」の話しじゃないですけれども、ファッションも大事なことだし、「豊かな生活」のためにはブランドも意味のあることだとは思うけれども、やはり「産業力」が結局そういう形にだけ使われていっているということであれば、非常に「空しさ」もあるわけですね。
 ですから「日本産業のあり方」というものを、よく考え直すべきだと僕は思います。ここ5年くらいですか、「金融」というか「マネーゲーム」的な議論ですね、昨今でいえば「村上ファンドだ」、「やれホリエモンだ」なんて格好の話しにだけ、血道を上げている風情が日本の場合ありますけれども、やっぱり「産業」なんですね、この国の重要な課題は。「どうやって日本の産業力というものを活かし、育てていくか」ということに、真剣な問題意識がなければ、生活の「基盤」そのものを見失っていく、そんな気がしてならないです。
 アナウンサー お話伺いながら、国内で「経済格差」が広がっている、その背景に雇用の問題、非正規雇用といった問題がある。ブランド品が、ある意味では寺島さんも言われるように悪いことではないでしょうけれども、格差が広がって「お金持ちはブランド品に向かう」と。この「格差の広がりと産業力の連関」についても、産業の歪みというところで非常に考えさせられるところですね。
 寺 島 まったくその通りだと思います。  

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2006年8月 7日 (月)

イスラエル軍のレバノン侵攻-小泉内閣、外務省は何をやっているのか

イスラエルのレバノン侵攻、ヒズボラやハマスとの「戦争」によって多くの人命が損なわれ、中東ひいては世界の安全が脅かされているのに、小泉内閣も外務省もいったい何をやっているのだ。

小泉総理はイスラエル等の訪問の後、暢気にラクダに乗って記念写真をとって欧米、イスラム圏で笑いものになっていたというし、帰国しては外交などは放り出し、国内遊説で松下村塾などを訪ね、自らを偉人になぞらえてかキングメーカーを気取っているだけだ。世界のGDPの1割を占める国家の指導者として無責任きわまりない。

麻生外相も、総裁選向けPRでバクダットなどに出かけているのでなく、今回の状況打開の鍵になる「米ーイラン」対話、「米ーシリア」対話を斡旋すべくテヘランやダマスカスにこそ出向くべきではなかったか。

けが人も出ていない北朝鮮のミサイル発射には騒ぎまくり、死者が多数出続けている世界情勢の中心テーマには手をこまねいてアメリカの出方待ちでは、国連安保理の常任理事国を目指すなんてちゃんちゃらおかしい。

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2006年7月24日 (月)

ロサンゼルスでアル・ゴアの映画を観る

「百聞は一見に如かず」と思い、ロサンゼルス出張の機会にウエストハリウッド、センチュリープラザホテルそばのショッピングモール内にあるAMC Century City 14という映画館で”An Inconvenient Truth”を観てきた。

ゴア氏にも触れながら「地球温暖化問題」を取り上げた映画と想像していたが、そう言うよりは「ゴア氏の地球温暖化問題行脚のドキュメンタリー」と言った方が実際に近いかもしれない。

全米各地、また世界各地を自分で車輪付きのバッグを引っ張りながら移動し、自分でリモコンを操作しながらスクリーンに資料映像、アニメーションなどを写しながら講演するゴア氏の「草の根運動」のスタイルが印象深く、ゴア氏の伝記的な要素も、6年前の大統領選挙の接戦も含めてたっぷり盛り込まれている。

京都議定書に賛成した国名の一覧表を並べて映し出し、それに対して「反対したのはアメリカとオーストラリアの二国だけ」と言い、逆に、アメリカの都市で京都議定書を支持している都市名を多数列挙して「アメリカでもこれだけの都市が議定書を支持している」と、議定書拒否がアメリカのたった一つの声ではないことを具体的に示しています。

「カリフォルニアでは」「トヨタとホンダは」と積極的、肯定的なデータを、都市や企業名に具体的に触れてとりあげ、二酸化炭素削減に反対する業界のPRを批判するために、かつてタバコ産業が禁煙キャンペーンに反対していた時の宣伝映像を引き合いに出すなど、選挙を考えたコンサルタントの意見から解き放たれた内容と言えるだろう。

「アメリカ人なら排出ゼロも実現可能だ」と理想主義に訴える大詰めの演説は力強く感動的であり「この映画を境に世界は変わるかもしれない」「少なくとも、この映画を観た自分は変わるだろう」と大きな刺激、励ましを与えてくれる映画だ。

エンディングの字幕は「この映画を一人でも多くの人が見ることに力を貸して欲しい」と訴えている。日本では上映されるのだろうか。その価値は十分にあるし、骨を折ってみたい。上映が無理ならNHKの海外ドキュメンタリー枠で放送して欲しいものだ。

なお、平日の昼間のせいか、観客は何組かだけ。映画館は椅子も大きく快適だが、上映映画の主張と違って冷房はかなり寒く感じるまで効かせている。地球温暖化に手を貸しているのは画竜点睛を欠いていた。

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2006年7月17日 (月)

ゴア元副大統領制作の映画「不都合な真実」をめぐって

アメリカのゴア元副大統領が制作し、5月に公開した「地球温暖化問題」をテーマにしたドキュメンタリー映画は、大きな話題になるとともにそこそこヒットし、現在も一部の都市の一般の映画館で上映されているようです。

以下、これについて最近必要があって資料としてメモ化した5月放送の米PBS「ニューズアワー」の番組のNHKによる日本語音声を文字化したものをご紹介します。

今秋の米中間選挙は、1994年の逆パターンで民主党が上下両院の過半数を奪う地滑り勝利の可能性を孕みながらも、1994年の共和党のギングリッジにあたる求心力のあるリーダー不在などによりまだ結果は見通せないようです。

2008年大統領選挙の民主党候補はヒラリー・クリントン本命、エドワーズ前副大統領候補のような南部出身の中道派が対抗というパターンでしょうが、最左派にはもともと中道派だったゴア氏に対する待望論が強く、中道左派の党のストラテジストたちも、もしヒラリーが途中で降りざる得なくなったときのスペアーとしてゴアをキープしておきたいというムードがあるようです。

このPBSの番組の直後、ゴア氏がインタビューで出演した米ABCの『ジスウィーク』のラウンドテーブルでも、ヒラリー支持と見られる二人の女性出演者は「やはり退屈」などとくさしていましたが、ライシュ元労働長官は「ジョージ(ステファノプロス氏、インタビュアー)が『出馬しますか』と3度聞いたのに、3度とも『絶対出馬しない』とは言わなかった。これは出馬するということ」とコメントしていました。

【以下、PBS番組のNHKによる日本語音声の起こし】

ゴア副大統領の地球温暖化問題に関するドキュメンタリー公開

2006年5月24日放送
米PBS『ニーズアワー』より

 ジム・レーラー 次はアル・ゴア氏の復帰についてです。グエン・アイフル記者の報告です。
 ゴア大統領候補(当時)「友人の皆さん、かつて他の人に対して言ったことばを、今度は自分に対して言います『去るべき時が来ました』」。
 アイフル 2000年の大統領選挙で敗れたのは手痛い打撃でした。ほんのわずかな差。大いに議論を呼びました。それから何年もの間、ゴア氏は沈黙してきました。しかし、慎重に一歩づつ、最近はゴア氏は「自分は次のアメリカ大統領になるはずだった人物」だと言いつつ、再びスポットライトを浴びる場に戻ってきました。
 2004年にブッシュ大統領がイラクで戦争をすることを決定したことに反論しました。 ゴア元副大統領 「ブッシュ政権のイラク政策の何が間違っていたかを具体的に突き詰めると、ごく簡単なことです。ブッシュ大統領はイラクについて思想的に偏った見方をしていて、これは現実と残念ながら全くそぐわなかったのです」

アイフル ゴア氏はまた「カレントテレビ」などの新たなビジネスベンチャーを始めました。これは若い人々に狙いを絞った、新しいケーブルテレビのサービスです。
 そして映画『"An Inconvenient Truth"=不都合な真実=』を公開しました。元副大統領は、かねてから情熱を傾けてきた「地球温暖化の脅威」を語る新たな場を得ました。
  映画を公開したことで手厚い待遇を受け『ニューヨークワイアード』『バニティフェア』などの雑誌の表紙にも登場しました。
 ゴア氏が主任進行役を務める中で、長編の話題作は地球温暖化の科学と政治、またゴア氏自身に焦点を当てています。
 ゴア氏(映画の中で)「観測史上、最も気温が高かった10年間を探すと、それはすべてこの14年間のことです。いちばん暑かったのが2005年です」                  
 アイフル マルチメディアを使ったゴア氏のプレゼンテーションは、自分でラップトップを持って世界中を回ったものですが、去年ハリウッドの注目を集めるところとなりました。
 しかし、ゴア氏がこの問題を扱ったのはこれが初めてではありません。1992年の『地球の掟』はベストセラーになりました。
 ゴア氏「世界中の科学者の言うこと注意深くはっきりと聞くのであれば、いまやただ『語る』のではなく、『叫んで』います。『目を覚ませ』『この惑星の危機だ』と叫んでいるのです。私たちはこんな警告や注意を聞き慣れてはいないのです。仮面を引き剥がさなければなりません」「これを『政治問題だ』とレッテルを貼ってしまうと『たいしたことないよ』と片づけてしまうことになります。これは私たちが直面している課題の中で、最も重要な課題です。私たちの生きている間に起きていることなのです」
 アイフル 一部ではゴア氏は人騒がせな予測をとばす人だと批判しています。例えばワシントンのシンクタンク「ザ・コンペティティブ・エンタプライズ・インスティテュート」が作った広告です。
 テレビCM「二酸化炭素は『公害』と言われますが、これは『生命』であると私は言います」
 アイフル アル・ゴア氏の人物とその映画についてゲストにお話をうかがいます。ロイ・ニールさん、ゴア副大統領の主席補佐官を務められ、今はゴア氏の上級アドバイザーです。そしてジョン・ヘイルマンさん。『ニューヨークマガジン』誌の編集長で、ゴア特集を組まれました。
 ヘイルマンさん、11年前あなたはゴア氏について書かれた記事の中で「アル・ゴアの持続的雄弁に心の準備をしない人は、コーヒーをブラックで注文することになる」と書かれていますね。それは変わりましたか。 
 ヘイルマン 11年間で、ここまで変わるものなんですね。この映画、私は3回見ました。またアメリカ中をまわって、ゴア氏が上映会に出席しているのを見てきました。これへの圧倒的な反応というのは、映画に出てきている科学は怖いものですし、それに説得力があるということです。
 2番目にこれは「新しいゴア氏」なんです。2000年の大統領選挙の時のゴア氏とは違うんです。面白いし、自由で情熱的で、自信があって、本当に本物なんです。それがこの映画を見る人に強い印象になって残っていきます。今後もそうであり続けると思います。
 アイフル 昔「新しいニクソン」という言い方があったと思いますが、「新しいゴア」の誕生でアメリカ人は大統領選挙の結果のポジティブな面を思い出すのではないですか。
 ヘイルマン たしかにですね、6年前にゴア氏が一般票で(総得票数で)勝利を収めたのは事実なんですね。何千万人もがゴア氏に票を入れたんです。しかし、ゴア氏に票を入れた人でさえ「今まで現れた候補者の中で最も説得力のある候補者」とまでは思っていなかったでしょう。
 今のゴア氏が完全に新しい姿かというとそうではないと思います。いま見せている情熱はもう何年も前から持ち続けている情熱です。しかし違う点というのは、政治的な計算から解き放たれたということです。役職をねらう政治家が、いつも背負わされている計算、計算づくの行動から自由になったと言えるでしょう。自分の考えを話せるようになりました。また、先ほどのレポートにあったように、自分自身が発する声を見つけたように思います。
 アイフル ニールさん、あなたはゴア氏と何十年もつきあいがあり、そして今もよく話をし一緒に仕事をしているわけですけれども、大統領選挙に敗れてからゴア氏はどういうことをしてきたんでしょう。
 ニール 人々の間で、同じ主張を訴え続けていました。少し控えめなやり方ではありましたが、世界各地で何百回も講演をしてきました。今日公開された『不都合な真実』というこの映画、そしてこの映画と同じタイトルの本も今日発売されたのですが、地球温暖化に対するゴア氏の取り組みに対して世間の関心が頂点に達したことの現れです。
 アイフル 1992年に出版された『地球の掟』という著書は、評判は良かったものの92年の大統領選挙の材料のような見方をされました。今回、映画が公開され、雑誌でこの本が取り上げられるなどしていますが、ゴア氏が、前回とは違ったタイプの候補者として再浮上する可能性はあるんでしょうか。
 ニール これは政治キャンペーンではありません。地球温暖化に対するアメリカの関心の高まりを表しているのです。ゴア氏がこの本を書いたのは91年で、92年の大統領選から脱退した後でした。息子の事故以来、地球温暖化問題に打ち込んできました。
 それは、今回のことと共通点があります。ゴア氏はずっと熱心にこの問題に取り組んできましたが、ゴア氏の講演を聞いた人以外にはあまり注目されませんでした。ですから「新しいゴア氏」と言えるかどうか分かりません。その意味で、ハイルマンさんのおっしゃり方はいいと思いますが、私が30年間見続けてきたゴア氏と、同じ情熱を持った同じ人物です。ゴア氏が常に正しかったと世間が認めたということでしょう。
 アイフル 2000年の選挙に敗れて過激になったというわけではないんですね。
 ニール その通りです。これまでのような懸念や、コンサルタントからのプレッャーから自由になり、選挙キャンペーンの制約に縛られることなく活動していると思います。だからこそ、この数ヶ月でこれほどの信頼が寄せられたのでしょう。人々の関心が集まって映画が公開されたのです。
 アイフル ハイルマンさん、ゴア氏はハリウッドに進出したんでしょうか。
 ハイルマン 興味深い点ですね。さきほどロイ・ニールさんは「2000年の大統領選挙で敗れたから過激になったのではない」とおっしゃいましたが、そうでしょうか。
 スタイルの変遷を別にすれば、ゴア氏は中道の穏健派の民主党員として知られてきました。2000年の敗北以来、民主党の左派のチャンピオン、英雄となったんですよね。民主党員の大部分に先駆けて、まずイラク戦争への反対を表明し、国内の盗聴問題やアブグレイブ収容所、グアンタナモ基地についての批判を先駆けて行いました。ゴア氏はハリウッドという民主党の左派に近い傾向の人たちの英雄になったんですよね。
 サンフランシスコや、環境保護論者の社会や、反戦主義派の「左」、リベラルなブログを書く人たちがいま最も熱心なゴア氏の支持者になっているんですよね。ゴア氏が2008年に立候補する見込みについて検討しているんです。これは以前のゴア氏の支持基盤と全く違う人たちなんです。
 アイフル この映画を3回見たと言われましたが、私は1回しか見ていないんです。この映画は、副大統領として8年間で成し遂げられなかったことと関係があるんでしょうか。
 ハイルマン まずこの映画のタイミングが重要でありまして、絶妙なんです。政治的文脈だけではなく、この問題そのものにとってもそうなんです。この映画がハリケーン・カトリーナの1年後に封切られたことは多くの人の見方を変えました。この問題の重要性を再認識させているんですよね。これは15年前とは全く違う状況なんです。
 当時は地球温暖化について科学界のコンセンサスがありませんでした。ですから、ゴア氏は副大統領であったとしても、この問題で今ほど支持をえられなかったんです。
 アイフル ロイ・ニールさん、あなたはゴア副大統領の首席補佐官だったわけですけれども、ゴア氏は非常に力を持つ副大統領でした。「歴史上、最も影響力を持つ副大統領」と言われたものです。チェイニー副大統領と比べれば陰が薄くなってしまうわけですけれども。「いま言っていることを、何で任期中にやらなかったのか」という疑問の声もあるかと思いますが。
 ニール 当時ゴア氏は出来るだけのことはしました。当時は今とかなり状況が違っていたのです。地球温暖化に対する世間の関心も、議会の意識も低く、地球温暖化はあまり国民の関心事ではありませんでした。そんな中、ゴア氏はクリントン政権の下で、環境問題への取り組みを精力的に進め、京都議定書の締結に向けて努力しました。しかし残念なことにブッシュ政権はそれを拒否してしまったのです。環境保護派の副大統領として、ゴア氏の業績は誰にも劣らないものです。
  ゴア氏が急進的になった、過激になったとおっしゃいますけれども、2000年の大統領選挙以降、ゴア氏がどんな立場を表明してきたのか振り返ってみてください。イラク戦争や、ブッシュ政権の違法な国内盗聴についてどんなスピーチをしたか、振り返ってみてください。ゴア氏の考えは決して極端な左寄りではなく、まさに国民の感情を代弁しているものです。
 この地球温暖化に関する指導力や情熱、そしてこの映画が公開されたことを見ると、ゴア氏は単に先見性があるだけでなく、ビジョンを持った人であることであることがわかります。
 アイフル ハイルマンさん、ゴア氏について「人騒がせな人間」「言っていることに正確さを欠く」という評価がありますが、その点はいかがですか。
 ハイルマン たしかに映画を見るとある意味、ゴア氏が「自分の言うことを聞け、さもなくば世界はおしまいだ」という救世主のお告げをしているように聞こえるんですよね。しかし同時に、この問題について不必要に不安をかきたてているという批判はますますむなしく響くようになっています。
  
(ここまでNHK・BS1で放送された同時通訳音声。以下、英語の番組ホームページより要旨)
 
 アイフル ゴア氏は2008年の大統領選に出馬しますか?
 ニール その意図はないと思います。またこのような方法は大統領を目指す伝統的な方法ではありません。
 ハイルマン 伝統的な方法ではありませんが、映画の公開がいいタイミングです。この映画はゴア氏にオーラを作り出しており、ゴア氏は上映会を歩きながら、アメリカ中の出馬を熱望する声を聞いています。民主党系の人々の多くは、ヒラリー・クリントンが大統領候補になるだろうと見てはいますが。
 アイフル お二人ともありがとうございます。
 

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2006年6月24日 (土)

米印原子力協定支持表明「保留」方針の報道

日米首脳会談に向けて「米印原子力協定への支持表明は保留」という記事が出ていた。将来支持する可能性を強くにじませている点大きな不満が残るが、ブッシュ政権のやることには国家原則を曲げても全部賛成という流れが、部分的に正常化しつつある兆しとして歓迎したい。

わが国は広島・長崎で核攻撃を経験した民族的な体験を世界に伝える使命を持ち、実際の政策としても「核不拡散体制」の強化をめざしている。日本とインドの相互理解の深化、関係強化は必要であるが、「核不拡散体制」の弱体化に直結する合意を支持することで国家原則を曲げるべきではない。

【以下は上記『朝日新聞』記事のコピー】

米印の原子力協力合意 日本、支持表明せず
2006年06月24日06時25分

 政府は、米国とインドの原子力協力合意について29日の日米首脳会談で支持表明を求められた場合、明確な支持表明はしないものの「前向きに検討していく」と言及する方向で調整に入った。首脳会談までに、合意実施に必要な米議会の結論や、国際原子力機関(IAEA)の保障措置が決まる見通しが立たないためだ。ただ、反対はしないことで将来的に条件が満たされれば支持する可能性を示唆している。

 複数の政府関係者が明らかにした。

 日米首脳会談で米印原子力協力が話題になった場合、首相は「インドは民主主義という共通の価値観を共有しており、日米両国にとって重要な国である」と指摘。(1)インドの急激な経済成長に伴うエネルギー需要に対応する必要がある(2)インドを核不拡散体制に組み入れることにつながる――などとして反対はしない考えだ。

 ただ、(1)米議会が結論を出していない(2)IAEAの保障措置の具体的内容が決まらず、民生用技術が軍事転用される可能性が否定できない(3)6月初めの原子力先進国など45カ国でつくる原子力供給国グループ(NSG)の年次総会で慎重論もあり、合意が先送りになった(4)日本は被爆国である――などの理由から、明確な態度表明は先送りする。最終決断は米議会の動向などを見極めてからになるとみられる。

 英仏ロなどはすでに協力を進めている。米政府はNSGでの承認も目指しており、日本政府は「NSGでの全会一致を日本だけが止めることはしない」との立場を米側に伝えることも検討している。

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2006年6月11日 (日)

イランなど途上国への核不拡散ばかりでなく「包括的核実験禁止条約批准」「検証措置つき核兵器物質生産中止」で核軍縮の推進を

イラク戦争開戦前に、国連査察チームを率いてイラクで査察にあたっていたハンス・ブリクス前IAEA事務局長(元スウェーデン外相)がイランの微量のウラン濃縮に世界の耳目が集まっているが、核軍縮についてはアメリカなど核保有国が取り組むべきもっと重要な問題があるとして、最近自ら率いた独立委員会が出した報告書のポイントを述べている。

インターナショナル・ヘラルド・トリビューンが掲載しているブリクス氏の論文は、たいへん共感できるものだったので、以下に森田が和訳を試みたものを掲載したい。

2万7000発の核爆弾の存在を忘れるな

ハンス・ブリクス
(2006年6月8日 トリビューン・メディアサービス)

 冷戦の期間には、軍縮に関する多くの重要な合意が可能であることが実証された。それがなぜ今、不可能なことのように見えるのだろうか。大国はもはや他国の脅威を感じていないのに。

 最近の協議のほとんど全てはイランや北朝鮮のような国家や、テロリストたちへの大量破壊兵器の拡散に関するものだ。外務大臣たちはイランが数ミリグラムのウランを4パーセントのレベルまで濃縮したことについて心配したびたび会合している。
 すぐにも軍事的な制裁を始めたがっている者もいる。彼らはイランがいつかは核不拡散条約の下で、核兵器を保有しないという約束を破るものと信じ込んでいる。

 外相たちがイランについて語り合うのは望ましいことだが、彼らはアメリカ、ロシアやそれ他の国々にいまだに2万7000発もの核兵器があって、それらの多くがすぐに発射できる状態にあることに、何らかの思いを致しているようには見えない。
 また外相たちは「核の脅威を減らす」という彼らの決意表明が、彼ら自身がNPTの枠組みが課している「自らの核兵器を減らし、除去する方向に向けて行動する」という義務を真摯に果たすさずにいることで損なわれていることに気づいているようには見受けられない。

 地球規模の軍縮の停滞は全体像の一部に過ぎない。アメリカでは軍部が新しいタイプの核兵器を欲しがっている。イギリス政府は莫大な経費をかけて核兵器を新世代のものに更新することを検討している。いったい誰から防衛しなければならないというのだろうか。
 昨年、国連の各国首脳サミットは「さらなる軍縮をいかに達成するか」、「大量破壊兵器の拡散をかに防止するか」についての勧告を一つも採択することができなかった。ここ十年近く、ジュネーブの軍縮会議は立ち止まったままだ。再び始動させるべき時である。

 アメリカや他のどこかの政策立案者が、核拡散防止の国際的な手段であるNPTと国際査察がイラク、北朝鮮、リビアやひょっとしたらイランの核兵器開発を止めるのには不十分であることがわかって失望を感じたり、心配を持つことはよく理解出来る。
 これは彼らがアメリカの巨大な軍事的潜在力を、核拡散防止のための脅しや直接的な手段として使いたがる傾向を説明するのに役立つかもしれない。
 しかしながら、3年にわたり大きな犠牲を払い批判を浴びたイラク戦争、これは存在しなかった兵器を破壊するための戦争だったわけだが、この戦争の後に軍事的な方法論に対する疑念が生じ始めており、大量破壊兵器を削減し、ゆくゆくは除去する地球規模での協力に、再びもう一度進んで挑戦しようとする、大きな機運が生じるのではないか。

 各国と世界が核兵器、化学兵器、生物兵器から自らを解放するためにできる60項目の具体的な勧告を含む、私が議長を務める独立の国際委員会が完成した報告書を次のページでご覧頂くことができる。                                                   http://www.wmdcommission.org/

 この報告書は、大量破壊兵器がこれまで以上の国やテロリストに広がるのを防ぐための方法についての提案とは別に、現在の軍拡競争に関する新たな不安を、共通の安全保障への新たな希望に変えることができる二つの方策を示している。どちらの場合も、成否はアメリカにかかっている。

 アメリカによる包括的核実験禁止条約の批准は、おそらく他の国々を批准に導いて全てのこのような実験を終わらせ、核兵器の開発をより困難にするだろう。条約を1996年以来そうだったように不確かな状態に留めておくことは、新しい核兵器開発の危機をもたらす。

 二つ目の対策は、兵器使用目的の高濃縮ウランとプルトニウムの生産を中止する、国際的に受け入れられた合意をまとめることだろう。
 これはどこにおいても核兵器の原料物質を供給する蛇口を閉めることになり、それは仮にインドが、アメリカとの核協力合意により目下のところより多くのウランに近づけるようになった場合にとりわけ重要だ。
 アメリカが最近、カットオフ条約の草案を提示していることは前向きなことだが、なぜこの合意案が国際的な査察を含んでいないのかは理解しがたい。草案作成者は最近の政府の情報活動の実績が、国際的な査察は余計なことであることを示しているとでも思っているのだろうか。


( ハンス・ブリクス 前国連核兵器査察官。この記事は、はじめスウェーデンの雑誌Fokusに掲載され、トリビューンメディアサービスによって配信された。)

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2006年5月24日 (水)

「二酸化炭素からプラスチック」こんな研究開発に力入れるべき

『朝日新聞』2006年5月23日付夕刊科学欄に、中国で二酸化炭素からプラスチックを作る実験プラントが作られていて、それは40年前に日本で開発された技術を使っているという記事が出ていた。「地球温暖化問題」が意識されていなかった時代に「高コスト」ということで切り捨てられた技術が息を吹き返しているわけだ。

こういった、理にかなって「こんなことできたらいいな」ということを実現する科学技術の話しはとても良いと思う。「光合成をする物質を人工的に作り出す」など出来ないものか。はじめから、無理と決めつけずに研究すべきではないかしら。きっと、どれだけカネをかけたかより、どれだけ頭を使ったかが勝負だろう。

巨額の開発費をつぎ込んで、核燃料サイクルといった古い、危険で、核武装の意思を疑われ、全体としてのコストが合うかどうかわからないことに取り組むことよりも、こういう本当に役に立ち、「環境とともに生きる」人間像に合致した研究開発の方向を考えるべきだ。

【以下は頭書の朝日新聞記事の貼り付けです】

CO2からプラスチック 40年前日本で発見、中国で工業化進む

 二酸化炭素から直接プラスチックなどの高分子をつくる技術が中国で工業化された。実は、約40年前、日本で発見された方法だ。コストの問題で実用化されなかったが、温暖化対策などで見直され、日本でも応用研究が再開した。(鍛治信太郎)

 二酸化炭素とエポキシドという炭素化合物を亜鉛化合物の触媒で反応させてつくる。高分子の重さのうち、4~5割が二酸化炭素の分だ。プラスチック容器やポリ袋などに使われるポリエチレンやポリエステルより、燃やしたときの二酸化炭素の発生量が少ない。
 この反応は68年、東京大工学部助教授だった井上祥平さん(現東京理科大教授)と大学院生だった鯉沼秀臣さん(現東京大新領域創成科学研究科客員教授)が見つけた。
 発見のきっかけは、二酸化炭素の利用とは関係がない。鯉沼さんは、外国の論文を参考に二硫化炭素という液体を使って高分子をつくる研究をしていた。高分子はできたが、非常にくさいイオウ化合物が発生する。二硫化炭素と似た二酸化炭素を代わりにできないかと考え、触媒を工夫し、成功した。
 二酸化炭素からいきなり高分子がつくれる珍しい反応だったため、学会や企業から注目された。だが、問題は触媒の効率だった。1グラムの触媒でできる高分子の量は100グラムほど。ポリエチレンはその1万倍以上で、とても太刀打ちできない。
 「当時は、石油資源の枯渇のおそれや地球温暖化といった問題がまだ認識されていなかった」と井上さんはいう。
 鯉沼さんたちは2年前、中国の内モンゴル自治区に年間生産量1千トン規模の試験工場がつくられたことを知った。中国の研究者が触媒の効率を約10倍に改良し、03年から生産を始めているという。隣接のセメント工場から出る二酸化炭素を原料にしている。
 まだ製造コストは高いが、土中などで微生物に分解される「生分解性」などの特徴を生かして食器などに利用しているらしい。さらに、海南島に年間1万トン規模の工場も建設中という。
 日本では昨年、物質・材料研究機構や高分子学会などが中心になって実用化の研究調査会をつくった。中国のさらに10倍の効率を目指す。また、生分解性や、燃えるとき発熱が少ないこと、約200度で分解してきれいになくなることなどの性質を生かした用途を考えたいという。秋ごろまでに研究をまとめ、来年度の経産省のプロジェクトに提案する考えだ。

 【写真説明】
中国の工場で二酸化炭素から直接つくられたプラスチック原料。大きく表示された「生物降解」は生分解性を意味する=04年8月、内モンゴル自治区で、井上東京理科大教授提供

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2006年4月23日 (日)

日本政府は、アメリカ政府にイランとの直接対話を呼びかけるべき

『日曜討論』(NHK総合、2006年4月23日9:00~)の後半はイラン核開発問題。司会者の「日本政府がやるべきことは」という最後の発問に対して、岡本行夫氏と田中浩一郎氏がアメリカとイランの直接対話を促すことだと発言していた。状況がどうなるかとか、諸外国の対処の方針が固まってきたらそれにどう対応するかといったことばかりでなく、いま具体的に何をなすべきかという視点でものを考えることは大切だと思う。

1979年の人質事件以来、アメリカは「イランだけは許せない」という恨みの感情が強すぎる。その時が民主党のカーター政権で、クリントン政権の国務省の中枢にも当時の人が多かったので、同政権の時も前に進めなかった。ライス長官が本当の優等生なら何とかしてもらいたいものだ。

それにしても小泉の官邸は、外交無策が招いた竹島「危機」の収拾に際してもあいかわらず「淡々と調査に出て、竹島についての日本の立場を国際的に知ってもらえばよかった。仲良くするだけが外交ではない」(『朝日新聞』2006年4月23日付朝刊2面「時々刻々」)といった調子なのも困ったものだ。『Sapio』(小学館)だの『サンデーモーニング』(TBSテレビ)だのといった、愚かな自己愛のようなナショナリズムの潮流におもねってカネさえ儲かればそれでいいといった下劣な連中はともかくとして、国家権力の中枢がこれでは日本の未来が大いに心配だ。

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2006年3月16日 (木)

NPTなし崩しの対インド核協力にストップを

先日のブッシュ・シン核合意を受けてフランスなどを含め対インド核協力の動きが広がりつつある(例えば「ロシア、インド原発への核燃料供給で合意」

NPTは「主権平等」の原理主義に立てば認められない不平等性を内包している。しかし、多くの核廃絶を求める国、また核拡散に反対する国の政府が次善の策としてこの体制を選んでいる。

体制を変更したいなら、それを論じて合意を得てからにしてもらいたい。アメリカ議会内にも反対論が強く、米・インド合意を実施に移すために必要な米国内法の改正の見通しさえ明らかでない段階でフランスやロシアがビジネスの論理と核保有国の傲慢によって事態を後戻りできないところに進めようとしている。そうした時に、「原子力供給国グループ」の一員であるわが国の政府が音無しなのはどうしたことか。「核兵器廃絶を求める」「NPT体制の強化に努める」というのはお題目だけなのか。国会内の野党からもハッキリした声が聞こえない。

これは世界政治の重要な分水嶺になり得る。関係者の奮起を求めたい。

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2006年3月 6日 (月)

米インド核開発協力合意をめぐる各紙社説

 米インド核合意についての各社社説について。

○ 『東京』が、批判的な立場を一番明快に示しており、森田の考えに近いです。

○ 『朝日』は他紙に先がけて3日付で「唯一の被爆国として核拡散に強く反対し、核廃絶を求めてきた日本としては受け入れがたい」と表明。

○ 『毎日』も「このままではNPTは空洞化」するとし、「5大国特に米国」の説明を求めています。

○ 『読売』も「NPT体制を弱体化させるものではないか。問題をはらんだ合意だ」と書き出しています。

○ 『読売』はさらに「関連物質・技術など国際的な輸出管理規制を緩和するため、日本など原子力供給国グループ(NSG)の間でも意見の一致が必要」と指摘しており、わが国政府もこの問題に無関係ではないことを示しています。さらに『日経』社説はこの問題を、核エネルギーをめぐる国際的な政策潮流の変化の中に位置付けて、日本はIAEAなどの濃縮・再処理の国際管理強化の流れに背を向けて「独自の核燃料サイクル」にこだわる姿勢をとっているが、これは見直す必要があるのではないかという趣旨のことを説いており正論です。

  「IAEAなどの国際管理強化路線に寄りそい、アメリカのインド特別扱いのお先棒はかつがない」というのが正しい選択だけれども、「核サイクル問題でアメリカに特別扱いしてもらう見返りに、インドの核についてはアメリカに協力する」という方向への圧力が、財界の一部や「原子力村」から出てくることが予想されます。

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2006年3月 5日 (日)

米・インドの核エネルギー協力合意は核不拡散条約違反

 アメリカのブッシュ大統領が今回の南アジア歴訪の際、インドのシン首相と合意し発表した核エネルギーに関する合意は、核不拡散条約(NPT)に違反する内容だ。NPTは加盟国以外への核技術供与を認めていない。

 世界政治に一番大きな影響力を持つアメリカは、イランや北朝鮮に対してNPTのルールを守らせることについても一番大きな責任を負っている。そのアメリカがルール違反を恣意的に行うというのでは国際秩序の維持が難しくなる(朝日新聞3日付社説参照)。

 それとも、またイラク戦争の時のように「俺がルールだ」というわけか。日本政府も、もし若干でもプライドというものがあるならば、この問題への対応にイラク戦争開戦支持や自衛隊派遣決定のような情けないやり方を繰り返すべきではない。

***   ***

 以下、ご参考までに3月3日(金)14時15分からNHK・BS1で放送された米PBSの「ジム・レーラー・ニューズアワー」の同時通訳音声部分を録音し、手持ち資料にするため書き留めたものを掲載します。

 ジム・レーラー 今日最初は、ブッシュ大統領のインド訪問について、ホールマン記者のレポートです。

 ホールマン アメリカのブッシュ大統領とインドのシン首相が、原子力の協力で合意に達しました。これは世界の2大民主国家の関係が劇的に変わったことを示す出来事です。中立主義とは言いながら、冷戦時代にはソヴィエト連邦寄りだったインドは、急速にアメリカと政治的、経済的パートナーシップを築きつつあります。ブッシュ大統領はこの合意により、両国は国内の政治的反対を乗り越えて、関係強化をめざす意思を示したと述べました。

 「私たちは本日、原子力に関して歴史的な合意に達しました。シン首相にとって簡単なことではなかったと思います。アメリカの大統領にとっても容易なことではありませんでした。これは必要な合意で、両国の国民の役に立つものになります。状況や時代が変われば、指導者も考えを変え、これまで人々が信じていたのとは異なるメッセージを世界に伝えることができることを示しています」(ブッシュ大統領)

 インドは1998年に核実験を行い、これまで一度も核拡散防止条約に加盟してはいません。アメリカや、国際的な原子力協力プロジェクトからも閉め出されてきました。今回の取り決めではインドが軍事用と民生用のプログラムを分け、後に22の原子炉のうち14基に対してIAEA(国際原子力機関)の査察を受け入れることになっています。これと引き替えにインドは、アメリカの原子力技術を利用することができ、増えつつあるエネルギー需要を満たすことが可能になります。

 インドのシン首相はこのように述べています。「ブッシュ大統領に対してインドは、約束通り民生用施設を分離したことをお知らせし、国際原子力機関とインドにとって適切な保障措置の実施について話し合う予定だあるということをお話ししました」

 ウィーンに本部を置くIAEAは、この合意を歓迎しています。エルバラダイ事務局長はこの声明について「核のテロリズムを予防し、原子力の安全性を高めるための核拡散防止体制にとって重要な一歩になる」と述べました。 

 この合意は連邦議会で承認される必要がありますが、反対も予想されます。マサチューセッツ州選出、民主党のマーキー議員は危険な先例を作るものと批判しています。「この合意はNPT体制にとって、災いになります。NPT体制に穴を開けるものだと思います。将来パキスタン、イラン、北朝鮮など核兵器開発を望むどの国に対しても説得力を失ってしまいます。平等に扱っているとか、本当に保障措置があるのだと言えなくなります」

 ブッシュ大統領の訪問に抗議して数千人がデモを行いましたが、政府の対応は温かいものでした。国際的な世論調査機関は、インドにおける大統領の支持率は他のどの国におけるよりも高いと言っています。11億人の人口を抱えるインドは、たいへん魅力的な市場であり、対米貿易はこの5年間で140億ドルから300億ドルに増加しました。しかし、米中貿易の2000億ドルに比べればほんの一握りです。ここからはマーガレット・ウォーナーが伝えます。 

 司会(ウォーナー) アメリカとインドの原子力協力合意と、両国の関係の変化についてお話を伺います。インドの文化と文明、政治学がご専門のインディアナ大学のスミット・ガングリー教授。インドのお生まれですが今はアメリカに帰化されています。カーネギー国際平和財団・拡散防止センターのジョセフ・シリンシオーネ所長。戦略国際問題研究所で国際安全保障プログラムの責任者、カート・キャンベルさん。クリントン政権時代に国防次官補代理を務められました。ガングリー教授、これはインドとアメリカにとって良い合意なんでしょうか。

 ガングリー はい。この取り決めはインドにとってもアメリカにとっても非常に好ましいものであることを疑う余地はほとんど無いと思います。

 司会 どうしてですか。

 ガングリー まず、インド側から見るとインドはエネルギーの需要が非常に大きく、温暖化ガスも非常に大量に排出している国ですから、この取り決めで長期的にエネルギーの安全保障を担保することになります。また温暖化ガスの排出の抑制につながります。さらにはインドの核プログラムのかなりの部分が国際社会の監視下に入ります。そのほか、これが一番重要なことだと思いますが、老朽化が進み、すぐにも改修が必要な設備が近代化できると言うことを意味しているからです。またこれはアメリカにとっても意味のある政策の転換だと思います。30年間の政策では目的を達成することが出来なかったからです。インドの核プログラムを阻止することは出来ませんでしたし、原子力事業の制約すら出来ませんでした。ですから今回の合意は、歓迎すべき政策の転換だと思います。

 司会 シリンシオーネさんはどのようにお考えですか。

 シリンシオーネ この合意が実施されるとNPT(核拡散防止条約)は崩壊するでしょう。ブッシュ大統領は歴代の大統領が30年、40年かけて作り上げてきた枠組みに穴を開けてしまったのです。インドの要求はよくわかっています。彼らは原子力技術を欲しがっているのです。

 司会 民生技術ですか?

 シリンシオーネ はい。アメリカから燃料や原子炉を買いたがっています。これまでこの要求に応えたアメリカの大統領はいませんでした。ニクソンも、レーガンも、ブッシュ元大統領もです。しかしブッシュ現大統領は核兵器は売らないまでも、それ以外の全てを与えてしまったのです。

 司会 なぜこの合意がNPT体制に穴をあけることになるのですか?インドはそもそも加盟もしていません。イランや北朝鮮のように加盟しながら脱退したり、ごまかしたりしたわけではありません。

 シリンシオーネ しかし「協力協定」には調印しました。60年代、70年代に原子炉を手に入れるためです。アメリカとカナダは平和利用を前提として原子炉を提供しましたが、インドはその協定を破り1974年、原子炉からプルトニゥムを抽出して核実験に踏み切ったのです。このようなことが二度と起こらないようNPTの枠組みが出来たのですが、今回ブッシュ大統領はそれをぶち壊してしまいました。

 司会 キャンベルさんはどう思われますか?

 キャンベル 明らかに不完全な合意です。それは疑いありません。しかし、合意した以上、受け入れるしかないでしょう。タイミング的にもまずかったですね。今後イランに圧力をかけなければならないときに、誤ったメッセージを与えると思います。今後50年間アメリカにとって最も重要な国はインドになるでしょうから、合意を取り消すことは両国の関係にとりかえしのつかないダメージを与える可能性があります。

司会 ガングリー教授、シニシオーネさんが仰るとおり「悪いことをしたインドに、褒美をあたえる」ようなことにならないのですか?NPTの国際的枠組みを損なうという意見をどう思われますか?

 ガングリー 私はもちろん、先ほどの方とは異なる意見を持っています。インドがNPT(核不拡散条約)の締約国でないということは重要な点だと思います。1968年に18の国が集まって軍縮会議を行い、これが最終的にNPTにつながっていたったわけですが、インドはその当時から「大国のエゴ」(への反対)と原則論を根拠としてこの体制に反対してきたのです。自国の安全保障を懸念し、不平等条約は受け入れられないと主張したんです。

 司会 シリンシオーネさんは、インドが西側諸国をだまして民生用の原子炉を手に入れたとおっしゃっていますが、どのように思われますか?

 ガングリー はっきり申し上げて、シリンシオーネさんの話は大げさだと思います。カナダが提供した原子炉で、そこで作られたブルトニウムが、本来の目的以外の目的で一部使用されたということはありましたが、その一方で、両国の合意文書にはインドがあの原子炉からの使用済み核燃料を取り出してはならないという条項は無かったんです。合意の精神には反していたかもしれませんが、文言には反していません。

 シリンシオーネ それは馬鹿げた考えです。ニクソン大統領はインドがしたようなことを再び許さないという法案を議会に提出して承認されました。それをいまブッシュ大統領は踏みにじっているのです。大統領は、インドの核開発を助けることを禁じているNPTを破っただけではありません。アメリカの5つか6つの国内法も改正せざるを得なくなります。

 司会 あとでもっと幅広い観点から議論したいんですが、先ほどの国際的な体制に穴が開くとおっしゃった点ですけれども、インドは軍事用と民生用を分けて、原子炉の3分の2に対して査察を受け入れることになるわけですよね。

 シリンシオーネ それはつまり3分の1の原子炉は査察を受けないということで、それは問題です。今回の合意の意味はインドの核兵器製造能力が年間2倍、3倍になることではないでしょうか。現在年間6個から10個作る能力がありますが、アメリカからの燃料が民生用の原子炉で使われるなら、それを軍事目的に転用し、核兵器製造能力を3倍にすることも可能です。そうなると、パキスタンはじっとしていないでしょう。中国や日本はどうでしょうか。アジア地域にとっても、ブッシュ政権にとっても問題です。

 司会 キャンベルさん、この合意は何を象徴しているのでしょうか。単に核の意味にとどまらないとおっしゃっていましたが、どういう意味ですか?

 キャンベル そうは言っても、原子力合意が今回のインド訪問の主な目的です。今後しばらく賛否両論うずまくでしょうが。 そのほかにも宗教指導者や政治家、財界人との会食があって、インドからのマンゴーの輸入を17年ぶりに再開する合意も成立しました。

 司会 マンゴージュースで乾杯していましたね。

 キャンベル そして、両国が意識しているのが中国です。アメリカ政府、インド政府の行動の背後には中国の存在があります。両国とも中国を「敵」とみなしているわけではありませんが、今後おもな競争相手になっていくと見ています。中国と協力できる分野もあるでしょう。そしてアメリカとインドが手を組めば、中国とよりよく協力できるという確信が、アメリカ・インド両国にあると思います。それが両国の関係強化を後押ししているんです。

 司会 ガングリー教授、これがインドやインドの対米姿勢においてどの程度大きな変化だと思いますか?また中国の存在をどの程度意識しているのでしょうか。

 ガングリー これはまさに、インドのアメリカに対する姿勢がいかに劇的に変化したかを示す出来事だと思います。実はシン首相のこの決定には、インドの科学界がかなり強く反対していたんです。「インドはアメリカに身売りをするようなものだ」と。そういう反対です。原子炉の3分の2を国際社会の監視下に置くということで合意をしているからです。しかし、もっと核心的な問題に戻って考えたいと思います。それはつまり、インドとアメリカとの関係改善という点なんですけれども、まさにこれは大々的な変化だと思います。インドのアメリカに対する姿勢が大きく変わったのです。

 そしてキャンベルさんが正しく指摘された通り、この問題では中国の存在も影響したと思います。インドもアメリカも中国がただちに脅威になるとは考えていません。しかし、それでもやはり両国は中国の軍事力、経済力の増大ぶりと、そして将来それがどのように行使されるのだろうかということについては、ある種の懸念を抱いています。その結果としてアメリカとインドは中国というアジアにおける新たな巨大な動物について、協議をせざるを得なかったと言えると思います。

 司会 これは中国に対抗するという面で、どれくらい重要なことなんでしょうか。あなたは合意に反対をしていますけれども、もっと広い視点で見るとどういうことになりますか。

 シリンシオーネ インドとアメリカの関係が急激に変わったきっかけは、2000年のクリントン大統領の訪問でした。まるで王様のようなもてなしを受け、抗議デモもありませんでした。しかし、それでもアメリカの原則を変えることはありませんでした。ところが中国の脅威が高まる中、一部のネオコンが、むしろインドの核を強化して中国に対する抑止力にしようと考えました。インドを中国に対抗するアメリカの同盟国にしようと、今回の合意のひな型を作ったのです。

 司会 キャンベルさん、アメリカはこの合意から何を得るんでしょうか。そのうち何割くらいが、経済やビジネス上の利益なんでしょうか。

 キャンベル 先ほどのリポートにもありましたが、アメリカとの貿易、アメリカからの直接投資は増えましたけれども、まだ十分ではありません。特に中国に対する貿易や投資に比べて少ないです。ですから、今回の合意をきっかけにインドとアメリカの間で、エネルギー全般やソフトウェアーの分野での協力が強まることを期待します。 また今回の合意は、アメリカにとって未来に関するものですが、インドにとっては過去に関するものでもあります。つまり、アメリカはこれまでインドに十分敬意を払ってこなかったという気持ちがインドにはあります。それを今後乗り越えていくという点が大きな意味を持ちます。次にインドと会談するとき、彼らの態度は大きく変化しているでしょう。アメリカに対する不信感が和らぎ、協力的になっているでしょう。 防衛面での協力もあり得ると思います。

 司会 それはすでに強化されていますよね。

 キャンベル しかしこの合意をもっと完全なものにするためには、さまざまな分野でインドの協力が必要でしょう。国境を越える問題、核拡散防止の問題などでインドの協力が得られれば、合意は価値あるものになるでしょう。 全般的には懸念の多い合意ですが、こうなった以上、前進するしかありません。今後の展開によっては、インドがアメリカにとって前例のない重要なパートナーになる可能性があります。

 司会 ガングリー教授、インドはもっと幅広いパートナーシップを目指しているんでしょうか。そして、やがてアメリカの小売業界にも市場を開くと思いますか?

 ガングリー インドはアメリカとの間でより広範な関係の強化を求めていることは明らかだと思います。アメリカと聞くだけで拒否反応を起こしていた、そういう嫌悪感といったものとは決別したと思います。もちろんブッシュ大統領の訪問中に一部でまだそのような反応が出たことはありました。しかし、そういう人たちはかなり減ってきていると思いま