雇用・労働

2009年2月23日 (月)

内橋克人氏インタビュー全文(『朝日新聞』2009年2月23日付朝刊オピニオン欄掲載)

【以下は、『朝日新聞』2009年2月23日付13面オピニオン欄掲載の経済評論家・内橋克人氏のインタビュー記事の全文写しです】

資本主義はどこへ
協同考え新たな基幹産業を

競争と共生

内橋克人さん 経済評論家

  内橋さんは市場万能主義、競争至上の新自由主義経済に異議を唱え、90年代から「このままでは雇用が破壊される」「社会のきずなが断たれる」と警鐘を鳴らしてきました。現状をどう見ますか。
 「今の日本は一番大事なものを失いました。それは、人間の尊厳と景気の自律的回復力です。これまでは景気が悪くなっても設備投資が動き出し、やがて働く人びとの所得が増えて好況になった。しかし、日本はいびつな不均衡国家になってしまった。過剰な外需依存と格差拡大、簡単に職を奪われ、安心して消費もできず、景気変動に耐える大事な力を失ってしまったのです」
    なぜ極端な不均衡国家に。
 「日本はグローバル化に『対応する』べきところを『適応する』ことばかり考えてきました。外資を稼いでもらおうとトヨタやソニーなど『グローバルズ』(日本型多国籍企業)に政策支援を集中させ、同時に国内ではリストラが進んだ。小泉構造改革の下で始まったいわゆる『いざなみ景気』の中で、製造業への派遣労働が自由化され、海外に進出していた工場が『日本回帰』と絶賛されて帰ってきた。つまり、国内でも低賃金で雇用できるようになり、輸出によって海外で稼ぎまくった。一方、多くの派遣労働者は社会保障の枠外に置かれ、クビを切られている。賃金、社会保障、地方、農業、あらゆる面で格差が拡大した。グローバルズが稼いだ外貨は十分還元されず、米国の浪費にすがることもできなくなって操業停止です」
    雇用問題は深刻です。
 「市場万能システムでは人間は単なる労働力であり、経営者も景気の条件反射のように労働力を切る。もともと雇用を減らすのは最後の選択だから、例えば雇われている人の数を示す雇用指数は、足元の景気よりやや遅れて動く『遅行指数』とされています。それが今や、景気の先行きを示す『先行指数』のような状況です」
                      
 ■企業化した「公共」

    内橋さんたちの異議は、しかし市場主義の潮流の中では力を持たなかった。
 「過去30年に及ぶ新自由主義政策は周到につくられています。時の権力者たちは、一つの思潮を広めるのに必ず学問とマスコミを動員します。アメリカでは『シカゴ学派』を、日本では規制緩和の諮問会議などを通して、『官から民へ』『働き方の多様化』『努力した者が報われる社会を』などとあおった。私は、こう問うてきました。『民』は民間巨大資本の民ではないか。働き方の多様化ではなく、働かせ方の多様化ではないか。努力が報われる社会は結構だが、競争社会では最終的に一人勝ち、敗者は努力不足だからあきらめろというのか、と」
 「日本人は、時流に乗る熱狂的等質化の傾向が強く、強い者に弱く、弱い者には強いという特性があって、少数の異議申し立てが排除されやすい。これは危険だと思います。『公共』という意識も弱く、公共の企業化という流れの本質もなかなか見抜けなかった」
    現在の資本主義は破綻しかけている、との見方があります処方箋はありますか
 「世界の国内総生産(GDP)の合計は54兆ドル(約5千兆円)ほどなのに、金融市場を暴走するホットマネーは最大で約540兆ドルともいわれます。利が利を生む虚のマネーが巨大化して実体経済を振り回してきた。もはや制御不能です。ホットマネーはいずれ自滅すると思いますが、実体経済を救うためにも、国境を越えて本当の専門家を集め、真剣に国際協調に取り組む必要があります」

 ■分断から連帯へ

    内橋さんは「共生経済」、具体的には「F(食料)E(エネルギー)C(ケア)自給圏(権)」を提唱しています。
 「競争の原理は分断です。分断して対立させ、競争させる。切磋琢磨は結構ですが、共生は連帯と参加と協同を原理として食料、エネルギー、介護など人間の基本的な生存権を大事にする。FとEとCを自給し、消費するだけでなく、そこに雇用を作り出す。その価値観の下で新たな基幹産業を創出し持続可能な社会に変える。経済効果は大きいはずです」
  「オバマ大統領は『無保険者に保険を』と公約し、財源として富裕層優遇減税を見直す考えです。所得再配分政策の復活です。FEC自給圏に通じます」
  国内経済優遇は保護主義につながるという意見や、逆に江戸時代のような自給経済に戻ろう、といった声も出てます。
 「とんでもない。FEC自給圏は人間の安全保障です。私は古き良き日本がいいなどとは思いません。差別や身売りがあり、基本的な生存権が奪われていた時代ではなく、人間を第一義とする共生経済をめざしているのです。それは小さな地域や若者たちの間で、すでに始まっている未来です」
                               
(聞き手 都丸修一)

内橋克人(うちはし・かつと)
 32年生まれ。神戸新聞記者を経て67年から経済ジャーナリスト、評論家として活躍。日本の技術者たちを描いた「匠の時代」シリーズをはじめ、「規制緩和という悪夢」「経済学は誰のためにあるのか」「共生の大地」「悪魔のサイクル」など、現場主義と実証に力を入れた著書多数。

【以上、写し】                                 

※森田コメント:『朝日新聞』経済部は、一貫して新自由主義路線=小泉・竹中路線=を支持し煽ってきた。リーマンブラザース破綻と世界経済変調という事態を経て、昨年10月に突然、サミュエルソン氏の新自由主義批判の寄稿を掲載して総括なき部分的方向修正を示している。 小泉・竹中時代に内橋氏の大型インタビューなどを掲載してきたのは朝日ではなく、読売だった。今回のインタビューもWEB版には不掲載。
 ところで、森田が期待する政権交代後の内閣像は「内橋克人財政経済担当大臣」「財政経済諮問会議の民間委員の一人は神野直彦氏」といった姿だ。「チェンジ」しかも「明確なチェンジ」が必要なのだ。

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2009年2月16日 (月)

「GDP、年率換算マイナス12.7%」-騒ぐより、プログラムを出せ

与謝野財経担当相も、就任当初言っていたことの不明を恥じるのは結構だが、この際は渋面作って俯いているよりも、日本経済の未来をどうするのかプログラムを出して欲しい。

政治家も、政党も、官庁も、学者も、メディアも、銭形平次の八五郎じゃあるまいし「たいへんだ、たいへんだ」と言っているだけではダメだ。

特に、自民党では次の財務相を担うつもりのある政治家とその仲間たち、そしてもちろん、次期民主党連立政権の中枢を担うべき人々とそのアドバイザーたちの時代に負う責任は大きい。

だいじょうぶ。なんと言っても、我々は日本人なんだから、きっといい知恵を出して切り抜けることができるさ。

イメージだが「原資は100兆の無利子国債の日銀引き受け、それで現在38万人分不足しているという特別養護老人ホームを一挙に建設し、看護師や介護ヘルパーの給料を倍にする。国立大学と公立高校の学費を5年間無料にし、福祉・環境・教育分野の職業教育・人材育成を徹底する」といったことをやったらどうか。5年とか10年の時限で農業や林業の「人民公社」を作って雇用を作り出すと共に食糧自給率や木材の自給率も一気に引き上げるという意見が出てきてもいい。

「かんぽの宿」の話などは徹底して解明することが必要だが、マクロ的には与野党とも、小泉純一郎ごときに振り回されてコップの中の嵐のような政局ごっこをやっている暇はないはずだ。

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2009年2月 3日 (火)

【切抜貼付】増える離職者を介護職に。国の支援策の内容は。=毎日新聞より=

大量失業発生と、介護の人手不足。自民党政権の施策を【切抜貼付】。実際の動向、改善が必要な点などフォーローしていく必要ありと思う。記事中にもあるが、食べていくことができなければ人材が定着するわけがない。

【以下、切抜貼付】

働くナビ:増える離職者を介護職に。国の支援策の内容は。

 ◆増える離職者を介護職に。国の支援策の内容は。

 ◇職業訓練を充実 返還免除設け月10万円貸し付けも
 ◇現場の待遇改善も不可欠

 派遣労働者の契約の中途解除による離職者の増加など非正規労働者の雇用が社会問題化する中、さまざまな雇用対策が講じられている。中でも介護・医療分野は人手不足感もあり、厚生労働省は、この分野の雇用拡大プロジェクトチームを設置した。介護職への誘導では特に手厚い支援が準備された。支援の内容を報告する。

 介護職に携わる労働者は、00年の約55万人から06年には約117万人と2倍以上に増えているが、試算によると高齢化の進行で14年には160万人が必要になるとみられる。また、介護職の有効求人倍率は04年度の1・14倍から、07年度には2・10倍に伸びており、人手不足が深刻化している。

 そこで、厚労省は雇用問題と人手不足の同時解消を目指し、離職者の職業訓練を充実して介護職への誘導を進めることにした。離職者の訓練で、即戦力としての3カ月訓練(ヘルパー2級)を拡充し、より高度な技能を養成する6カ月訓練(ヘルパー1級)と2年訓練(介護福祉士)を新設。訓練の受講は、ハローワークの福祉人材コーナーであっせんする。

 より高度な訓練を受けられることは望ましいが、その間の生活費が問題となる。これまで、フリーターや非正規労働者の職業訓練では、訓練を受けている間、収入が途絶えて生活できなくなるため、受講する人がなかなか増えなかった。新制度は、離職者が訓練期間中、生活費として月10万円(扶養家族がある場合は12万円)の貸し付けを受けられる。貸し付けを受けられるのは、年収200万円以下。雇用保険給付を受けている人は、給付期間が延長される。

 さらに、貸し付けには返還免除制度を設けた。年長のフリーター、雇い止めや解雇で職を失った派遣労働者、母子家庭の母親などは、介護職に就職した場合は全額、求職活動を行っていれば約8割が免除される。失職した派遣労働者で雇用保険の受給資格のない人でも、10万円の貸し付けを受けながら、介護の資格を取得できる。

 雇う側にも、未経験者を雇用した場合、1人当たり50万円を支給する。希望者を受け入れやすくすることで、就職を後押しする。

 東京介護福祉労働組合の清沢聖子書記長は、「介護労働者を計画的に、地域にバランス良く配置できれば、地域の宝になる」と語る。だが、「過去の不況の時も、離職者は介護職に誘導された。だが入り口を広くしても、低賃金・重労働など労働条件が悪いために、多くの人が離職した。同時に、仕事の安定にも取り組むべきだ」と注文を付ける。

 介護職の離職率(仕事を辞める割合)は07年度で21・6%と、全産業平均の16・2%を上回り、勤続1年未満で退職する割合は約4割に上る。昨年末には、待遇改善のため介護報酬の3%アップが決まったが、どの程度、労働者の賃金上昇につながるのかは不明だ。

 厚労省は支援の実施で約2万人の介護労働者の就職につなげたいとしている。担当者は「離職者と、人材が不足している所へマッチングするため、支援制度の内容に配慮した。介護の仕事の在り方も見直しつつ、人材養成を進めたい」と話している。【東海林智】

毎日新聞 2009年2月2日 東京朝刊

【以上、切抜貼付】

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2009年1月 9日 (金)

学校で労働基準法など生きるための基礎知識を-NHK早川解説委員の意見に賛成

ここ2年ほどのことだろうか、年に何回かNHKの解説委員たちが一堂に会して、また視聴者の声も募ってあれこれ議論する「双方向解説・そこが知りたい」という番組がある。最近は昨年12月27日深夜から翌早朝にかけて、世界経済情勢や雇用や若者の状況などを含む話題での放送があった。

ながら視聴で録画を見ていたら、教育担当の早川信夫解説委員がある調査によると「若者の4割が労働基準法の内容を知らなかった」という数字を紹介し、例えば「非正規雇用でも休暇が取れるとか、残業代を請求できるといったことは学校でちゃんと教えるべきではないか」「キャリア教育というと、起業家養成など派手な話題に目がいくが、むしろ生きていくために必要な基礎知識をしっかり教えることが大切ではないか」と発言していた。

その通りだと思う。証券会社の人を学校に呼んで投資のゲームを習うというようなことをやっているところがあるようだが、労働組合の人や弁護士を呼んで、こうした基本的な社会のルール、それも生きていくために大切な知識を学べるようにすることが大切だと思う。公立学校教育の役割はますます大きい。

番組に話題を戻す。NHKの解説委員を集めても、あたりさわりのない話に終始すると思われるかも知れないが、このように教育担当解説委員が経済、社会の問題という文脈の中で意見を聞かせてくれたり、あるいは解説委員同士で出ているので、ある意味カッコつけたいという心理も働くのか、いつもより大きな構えでハッキリと意見を聞かせてもらえるので面白い。視聴率がどれくらい出ているか知らないが、ぜひ続けて欲しい番組だ。

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2009年1月 4日 (日)

年越し派遣村、K-20、品格なき新年ゴミ出し

昼前に、黒川氏のきょうも歩くで日比谷公園の年越し派遣村に行ってカンパしてきたという話を読み、そうか、森田ものんきにしてばかりではいけないと家族を誘って出かけてきた。高校生の息子にも趣旨を話すと「僕も寄付したい」ということで、彼も小遣いから1000円出して同行。

たくさんの人々が食事の提供の列に並び、いくつものデスクが出されて相談の面談が行われていた。わずかばかりのカンパをしたが、同じ受付で衣類を寄付している人もいて、ボランティアの人が新品でなくても良いと言っていた。この年越しを、こういうところのボランティアで過ごした人々に頭が下がる。今年は少し行動する年にしなければと思う。

実は映画が1000円になる元日の午後は、新宿ピカデリーに「K-20」という金城武主演の怪人二十面相や明智小五郎が活躍する活劇映画を見に行った。正月にピッタリの映画だったが、設定は「日米開戦が回避された昭和20年代後半の日本」というおとぎ話で、町中に軍人が歩いていて、警察の取り調べでは暴力の行使が当然といった様子と共に、親を失った貧しい子どもたちの、言ってみれば貧民窟のようなものが出てきて、そこで財閥令嬢が炊き出しをするといった場面が出てくる。

松たか子さん演じる令嬢が、資本家がカネをため込むばかりではいけない。それを社会のために使わなければといって啖呵を切る場面や、登場人物のやりとりに「お前が支配層と戦うのは、結局は自分が力を得たいというだけの話じゃないか」というような、民主党内の松下政経塾出身の新自由主義派を揶揄したようなセリフも出て来るわけだが、映画で見た場面がおとぎ話ではなく、それと同様な場面を、2009年年明けの日比谷公園で現実として目の前にするとやや目まいを覚える。

帰り道に『女性の品格』というベストセラーを出した元高級官僚の女性宅前を通る。心のこもった贈りものを奨励している人だけに、頂き物が多かったのだろうか、もう家の前にゴミを出している。当然、世田谷区のゴミ収集はまだ始まっていない。品格も何もあったものではない。

ますますこの国は「本当が嘘で、嘘が本当」のような気がしてきてきてしまうが、まあとにかく、自分が真実と信じるところに従って、発言し、行動していくようにしたい。そうするしかない。

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2008年10月14日 (火)

クルーグマン氏のノーベル経済学賞受賞を喜ぶ

クルーグマン氏は「経済政策がやるべきことは二つだけある。一つは失業を減らすことであり、もう一つは富の再配分である」という論者だ。

世界金融情勢の現実と、これからやってくる大不況により、レーガン政権以来30年猛威を振るったインチキ錬金術経済学=日本では竹中平蔵氏が代表的論者=にいよいよ終止符を打つべき場面でのノーベル経済学賞はまことに時宜にかなっている。最近、もっとも嬉しかったことの一つだ。

新聞コラム執筆、ABCの日曜番組「ジスウィーク」のラウンドテーブル常連と、一般向けにも活発な発言を続け、「だから有力と言われているノーベル賞がとれない」などと言われたクルーグマン氏はもともとオバマ次期政権の経済諮問委員長の有力候補だっただろうが、政策転換を印象づける点からも就任が有力になったのではないか。

世界経済は当面最悪の状況に進むだろう。わが国の経済政策もある意味「何でもあり」ということになるだろう。そのような中で、同じ過ちの芽を摘み、良い方向への軌道修正を行うことで災い転じて福となすためには、われわれもクルーグマン氏のような本質を突いた発言に注目していきたい。

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2008年5月18日 (日)

堤未果『ルポ貧困大国アメリカ』(岩波新書) =”読むべき”ベストセラー=

手に入りやすいコンパクトな本でありながら、アメリカ社会の知られるべき一面を良く整理して教えてくれる良書。すでにベストセラーになっているが、いろいろな国の事情に少しでも通じておきたい人にとって、アメリカについては真っ先に読むべき本だと思う。

アメリカは徴兵制ではないのに、イラク戦争などを戦う兵員の確保が可能なのはどうしてか。それは、所得格差が大きく、軍隊の給料でもそれまでの年収の2倍になるという若者がたくさんいて、軍に入れば大学進学が可能になるという話が流布されているからだ。

堤未果さんの「ルポ貧困大国アメリカ」は、そうしたことも含め、アメリカ、の経済社会の実際の姿をケースを通じ身近なものとして理解させてくれる。森田もこれまでは「軍に入れば大学に行ける」という話を鵜呑みにしていたが、それすら詐欺まがいの話であることをこの本を読んで知った。

「借金が返せるいい仕事がある」と民間軍事会社によってイラクに送り込まれた中年アメリカ人男性が、劣化ウラン弾か何かの放射線障害らしきものに苦しみ、酷い目にだけあって帰国後も苦しんでいる話など、本当に酷い話だと思う。同じような立場で現地で戦闘により死亡した人々も多いのに、これは戦死にカウントされない。こういったことについても、アメリカの本当の姿として知られるべきだ。

格差と食生活の連関など、ABCの『ナイトライン』などを見ているような人には常識となっている話題が多いと言えるかも知れないが、とにかく高校生や大学生にはぜひ読んでみてほしい本だ。自民党の小泉・竹中「構造改革路線」はアメリカ礼賛路線と言えるが、こうした路線で企業「競争力」だけを追求する路線が何をもたらすか想像してみるべきと思う。

ベストセラーに読むべき本は実に少ない。最近の『女性の品格』といった頂き物大好きの元官僚が書いた一種の「盗作本」のことなどが話題に上ると、高校生の頃読んだバートランド・ラッセルの『幸福論』に今のベストセラーに後年読み継がれる本は全くないので、そんな本は読まずに古典を読むべきだという話が書いてあったことを思い出す。しかし、この『ルポ貧困大国アメリカ』は全く例外だ。大きな本屋のベストセラーコーナーに下らない本と一緒に並んでいてもどうか敬遠されずにお読み下さい。

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2008年5月10日 (土)

「フリーチベット!」より、日本企業による人権侵害=外国人研修・実習 不正=を糺すべき

「フリーチベット」を叫ぶ人々を見て、人権問題に関心を持ち、行動する若い人々がたくさんいることを知り、たいへん結構なことだと思う。

こういう人々には、外国の政府がやっている人権侵害を安全地帯から批判するだけではなく、ぜひ自国の企業がやっている、また自国の政治・行政がそうした行為を事実上作り出したり、放置している「外国人研修・実習の不正」といった問題にも目を向け、行動してほしい。

その辺が、本当に「人権」に関心があるのか、ただ安倍晋三たちのように外国の悪口を言って劣情を満たし、あるいは「右」の世論に阿って政治基盤を拡大しようとしているだけなのかのリトマス試験紙になるだろう。

チベットの人権について、人類社会の一員として発言し、行動することはよいことだ。しかし、それ以前に、日本企業が行っている、また日本政府がそれを事実上手助けしている問題については、日本国の主権者である日本国民は、直接に責任を負っているからである。

こうした人権侵害を放置しているのは日本の恥だ。外国人労働者の処遇問題は、経済がらみで自己の利害にはねかえってくる可能性があるからと目をそらし、自分は何の痛みも感じない「フリーチベット」にのみ狂奔するのは、愚かなだけでなく、卑怯だ。

【以下はNHKニュース原稿貼り付け】

外国人研修・実習 不正が急増

5月10日 6時32分
法務省は、外国人が日本の技術を学ぶ「外国人研修・実習制度」で、研修生らを不当に安い賃金で働かせるなどの不正行為があったとして、去年1年間で前の年のおよそ2倍の449の企業や団体に処分を行いました。

「外国人研修・実習制度」は、平成5年に、日本の技術や技能を発展途上国などへ移転するために設けられましたが、安い労働力を確保する手段として使う企業があとを絶たず、法務省入国管理局は、企業への立ち入り調査を増やすなど指導を強化しました。法務省のまとめによりますと、その結果、去年1年間に不正行為があったとして処分を受けたのは449の企業や団体に上り、前の年のおよそ2倍に増え、過去最高となりました。このうち、残業の割増賃金を支払わないなど不当に安い賃金で働かせていた企業などが175と最も多かったほか、中には、研修生らが逃げ出すのを防ぐためにパスポートや預金通帳を強制的に取り上げるなど、悪質な人権侵害に当たるケースもあったということです。政府は、現在の制度には問題が多いとして来年までに見直すことにしていますが、法務省は「制度の見直しと並行して、企業側に対する指導もさらに強化していきたい」と話しています。【NHK】

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2006年10月 3日 (火)

経済財政諮問会議では、八代氏の雇用労働政策が特に要警戒~「きょうも歩く」より

「きょうも歩く」の黒川氏が、経済財政諮問会議では、とりわけ八代尚宏氏の雇用・労働政策に警戒が必要という指摘をしている。

これまでもオリックスの宮内氏が率いた規制改革会議の下で、雇用の「市場化」ということだけを訴えてきた由である。要注目の論点提示だと思う。

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2006年9月 4日 (月)

「自動車を輸出して、ぜいたくブランド品を輸入」でいいか?~寺島実郎氏のNHKラジオ「ビジネス展望」での発言

2週間ほど前の、寺島実郎氏のラジオでの発言に共感する。自民党総裁選で、このような大事な議論が全くなされていないことに大いに不満を感じる。以下は放送録音を森田がメモ化。

「貿易構造の変化に見る日本産業の実像」
財団法人日本総合研究所理事長 寺 島 実 郎
(2006年8月18日、NHKラジオ「ラジオ朝いちばん」~ビジネス展望~)

 寺 島 日本産業の自画像ということを申し上げたいんですが「日本という国はどうやって生活してるんだ」、「どうやってお金を稼いで、どうやって使っているんだ」ということをもう一回冷静に考えてみようということなんです。
 かつて大阪万博の頃までは、よく経済白書なんかにも「国際収支の天井」なんていう表現が出てきてまして、どういうことかというと「外からお金を稼ぐ力、つまり輸出力がないから、買いたいものも買えない」という時期が続いてたんですね。
 ところが日本産業大きく変わってきていてですね、昨年の貿易統計の数字を見ていて、実に考えさせられることが多いんですね。
 まず、日本産業いったい「何で稼いでいるのか」ということなんですが、昨年「輸出66兆円」ということになっているんですが、1位、稼ぎ頭が「自動車産業」ですね。2位が「半導体等電子部品」、3位が「鉄鋼」、4位が「自動車部品」、5位が「化学光学機器」という、この五つの品目で日本は輸出の35パーセントを支えているんですね。
 特に、30年近くも輸出のトップ品目を占めてきているのが「自動車産業」なんですね。「自動車」と「自動車部品」で日本の輸出の2割を支えていると。
 実は、昨年の日本の自動車メーカーは国内で1,080万台生産してですね、海外で1,060万台と、ほぼ海外生産が国内生産の台数と肩を並べたんですね。
 にもかかわらず、あいかわらず輸出のトップを支え続けているということは、輸出している車の中味が変わってきててですね、高級車だとか、ハイブリッドカーだとかですね、1台で多くの外貨を稼げるような自動車の輸出に切り替えてきているからなんですね。
 いずれにしましても、そういう産業力を蓄積することによって、66兆円の輸出力=外から稼ぐ力を持っているから、こんどは「輸入できる力がある」というわけです。
 それでは「何を日本は輸入してるんだ」というと、昨年は「57兆円」輸入しているわけなんですけれども、よく言われるように「エネルギーと食料」をですね、外から買って、それに「原材料」を買って経済を成り立たせている国ということになっているんですけれども、「エネルギー」が日本の輸入の25パーセント、「食料」が10パーセントで、このふたつで35パーセントの輸入をしているということなんてすね。
 ところが、去年起こった出来ごとの中で、非常に注目すべきだと思うのが、この何年かの傾向でもあるんですけれども、着るもの「衣料品」が、輸入の9分類品目の「第2位」になってきてるんですね。
 これはどういう意味かっていうと、もちろん近隣のアジアからの比較的安い下着とかそういうものの輸入も含まれているのですが、大きく伸びている理由は実は「ファッション」なんですね。つまり、欧米の「ブランド商品」なんです。
 調べ直してみると、衣料品に「バッグ」だとか「靴」などの履き物、「時計」、宝石のような「貴金属」を合わせると、去年日本は「4兆5,000億円」、海外から輸入しているわけです。要するに、昔のことばで言えば「ぜいたく品」と言えるようなものですね。 ブランド商品というのは、それなりに魅力があることは僕もよくわかるわけですが、とにかく「ブランド商品を外からどんどん、どんどん輸入するような国」になっているという数字がはっきり出てくるわけです。
 要するに「外から稼ぐ力を利用して、エネルギーと食料を外部に依存して、加えていよいよファッション性のあるブランド商品のようなものを海外から輸入している国」、そういう自画像になってきたわけですね。
 一家の家計のイメージで言えば、自動車産業に象徴されるような「外から稼ぐ力のあるお父さん」が活躍しているもんだから、それに依存して、生活の基盤であるエネルギーと食料をどんどん海外に依存してですね、さらに加えていよいよ、生活そのものに関わるわけではない、より付加価値の高いブランド商品なんかを買うようになっていることが確認できるわけなんです。
 ひとことで言うと、産業構造の歪みとまでは言いませんけれども、せっかく「外から稼ぎ出す力」というものを、「産業力」、「技術力」という形で持ちながら、それを「本当にうまくこの国は使っているのかなあ」という問題意識がでてくるんですね。
 例えば今後の方向として「産業力を活かして、産業構造の危うさに対応する」路線といったものが僕は今後必要になるんじゃないかと思うわけです。
 「エネルギーと食料」も、欧米の先進国と比べて、日本くらい外の国に依存する危うい構造になっている国は少ないわけですね。
 食糧なんかでも、アメリカはもちろん100パーセントどころじゃない、食糧の最大の輸出国ですし、「日本の食料自給率はカロリーベースで40パーセント程度」といわれてますけれども、欧州の主要国はことごとく食糧自給率100パーセント以上ですので、そういうことを考えると、日本の「技術」を活かして、問題を解決していくような方向っていうものが重要になってくるだろう。
 たとえば、いま話題になってきている「バイオ燃料」っていう世界があるんですけれども、要するに「植物からとったエネルギー源を、より活かしていこう」という考え方なんですけれども、これは「エネルギーの中東に対する依存度が極端に高い」というのが「日本の危うさ」の原因の一つだということに対応することになる。
 「食糧の自給率が極端に低い」ということが日本の危うさの原因であることについて、例えば日本の技術力で、再生可能なバイオ、植物を使って農業を活かしてですね、エネルギーを生み出して、それで海外に対するエネルギーの依存なども解決していく。
 つまり日本にとってやはり「虎の子」は「技術力」なんですね。産業を今日のような形にまで育ててきた。そういうものを活かして問題を解決していく力が、産業構造の歪みを考えたときには必要だなあと思います。
 もう一つは、変な言い方ですけれども「がまんのシナリオ」といいますか、さっきの「ぜいたく品」の話しじゃないですけれども、ファッションも大事なことだし、「豊かな生活」のためにはブランドも意味のあることだとは思うけれども、やはり「産業力」が結局そういう形にだけ使われていっているということであれば、非常に「空しさ」もあるわけですね。
 ですから「日本産業のあり方」というものを、よく考え直すべきだと僕は思います。ここ5年くらいですか、「金融」というか「マネーゲーム」的な議論ですね、昨今でいえば「村上ファンドだ」、「やれホリエモンだ」なんて格好の話しにだけ、血道を上げている風情が日本の場合ありますけれども、やっぱり「産業」なんですね、この国の重要な課題は。「どうやって日本の産業力というものを活かし、育てていくか」ということに、真剣な問題意識がなければ、生活の「基盤」そのものを見失っていく、そんな気がしてならないです。
 アナウンサー お話伺いながら、国内で「経済格差」が広がっている、その背景に雇用の問題、非正規雇用といった問題がある。ブランド品が、ある意味では寺島さんも言われるように悪いことではないでしょうけれども、格差が広がって「お金持ちはブランド品に向かう」と。この「格差の広がりと産業力の連関」についても、産業の歪みというところで非常に考えさせられるところですね。
 寺 島 まったくその通りだと思います。  

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