ロシア

2009年4月 2日 (木)

米ロ首脳、はじめて「核兵器の最終的な除去」に合意

世界金融・経済問題に対処するためロンドンG20首脳会合を契機に、各国の首脳会談が開かれているが、ブッシュ・プーチン時代に本質的な前進がなかった米ロの核兵器削減問題で、「期限を迎えるSTARTⅠについて今年中に後継条約を締結する。夏までにだいたいの成案を得て、首脳会談を行う」という具体的な進展が見られた。

米ロのあらゆる対立点に触れた会談だったようで、米ロ関係の世界政治に占める相対的な位置はかつてのように巨大なものではないけれども、こと核不拡散問題と表裏一体の核軍縮問題については、米ロ関係に左右される要素は大きい。

メドベージェフ大統領は、昨年の南オセチア・グルジア問題などに際しては強硬姿勢に終始し、やはりプーチン前大統領(現首相)の傀儡かと見られていたものの、最近は司法問題などでリベラル色を覗かせているので注目したい。

朝、NHK-BS1でやっていた米ABCの「ワールドニュース」では、ホワイトハウス担当のジェイク・タッパー記者に続いて、ジム・シュートー記者が軍縮交渉のエキスパートとしてコメントしていたが「はじめて両国首脳が核兵器を究極的に廃絶する(eventual  eliminate)ことに触れた」と興奮気味に話していたのが印象に残った。

メディアによっては、ロシアが新たな軍縮条約締結の条件と主張しているアメリカのミサイル防衛(MD)システムの東欧配備の中止について、具体的な成果がなかったのではないかと言われているが、アメリカはこれを「イランの核の脅威に対抗するため」と主張してきたいきさつがあり、おそらく今後、イランの非核化ということとこれをリンクさせた、米ロのせめぎあいが展開するのだろう。

米政権がイランの核開発の問題を決して容認できないのは、実はイスラエルとの抜き差しならない関係ということが背景にある。余計なことだが、近々予定されている北朝鮮の「人工衛星打ち上げ」など、順調に成功する方が良いとも言える。

一部に北朝鮮の核保有は容認するのではないかと言われている米政権が「やっぱり、北が核を持つことは認めてはならない。イスラエルどころか米本土が危険だ」と真剣に考えるようになるからだ。

気象情報の提供とか、協力してやったらいいんじゃないか。落下物がそんなに大騒ぎするほど危ないというのなら、日本を飛び越えずに発射できる種子島の発射場を提供してやったらいいんじゃないかといった発言は、やはり不謹慎だろうか。

米露首脳会談:新核軍縮交渉、開始で合意 北朝鮮に自制求める

 【ロンドン草野和彦】欧州歴訪中のオバマ米大統領は1日、ロンドンでロシアのメドベージェフ大統領と会談した。両大統領は、今年12月に失効する第1次戦略兵器削減条約(START1)の後継となる新たな核軍縮条約の交渉を直ちに開始することで合意。新条約は、12年までに双方の配備核弾頭を1700~2200発まで削減するとしたモスクワ条約(02年)を下回るレベルを目指すとしている。北朝鮮のミサイル発射については「地域の平和と安定を損なう」と憂慮を表明、北朝鮮に発射自制と国連安保理決議順守を求めることで一致した。(7面に関連記事と共同声明要旨)

 両首脳は共同声明で「我々は冷戦思考を乗り越え、新たな米露関係を開始する」とし、ブッシュ前政権時代に悪化した関係の「リセット」を宣言。大量破壊兵器拡散防止やテロ対策などでの協力を打ち出した。オバマ大統領が7月にモスクワを訪問することも合意した。

 新たな核軍縮条約に関する共同声明では、「記録的な削減を目指す」とし、効果的な検証方法の導入や、年内の交渉妥結に向け進展状況を7月までに報告させることを盛り込んでいる。現在の核弾頭の実戦配備数は米国が約4100発、ロシアが約5200発といわれ、新条約が実現すれば画期的な核削減に道が開ける。

 首脳会談では、米露関係を悪化させる要因となった米国の東欧ミサイル防衛(MD)計画や、昨年8月のグルジア紛争についても協議されたが、双方の見解の相違は解消されなかった。ただ、ミサイル脅威に対処するためMD分野での相互協力の可能性を協議した。

 このほか両大統領は、アフガニスタン復興やイランの核開発問題などで協調する方針を確認した。

毎日新聞 2009年4月2日 東京朝刊

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2009年3月29日 (日)

オバマ大統領、核軍縮・核不拡散で動く=自公政権は何を発信したか=

米オバマ政権はアフガニスタン、パキスタンにかかわる包括的な政策を発表したことに続いて、4月はじめにロシアとの間の核軍縮、さらに世界大の核不拡散にかかわる動きを見せるようだ。

このことについて麻生内閣や自公連立与党から何か有益な発信があったか?。全く何もない。

核軍縮については「既存の条約が今年で期限切れになることについて、わが国はかくかくの所感を持ち、これこれの内容を含む条約の締結を求めたい」とか、「核軍縮にはずみをつけるため、アメリカを含む全ての核兵器国に『先制不使用』の宣言を求める」といった程度の発信があって然るべきだ。

今のような音無では、麻生政権も、自公連立与党も、外務省も「核軍縮などには全く関心がない」と言っているに等しい。やっていることは、北朝鮮の「『人工衛星発射』はミサイルで迎撃する」といった話ばかりなのに、「唯一の被爆国だからIAEAの事務局長のポストをよこせ」など図々しい話だと受け止められるだろう。

核不拡散については、自国の安全に直結する「北朝鮮の核放棄の実現」が最初の関門だ。ところが、6カ国協議においてアメリカ、韓国、中国、ロシアが駆け引きで北朝鮮に対するエネルギー供与をすると言うときに「俺はやらない」と足を引っ張っているのである。

次期総選挙において、民主党を中心とする野党勢力には、これまでの政権の核軍縮・核不拡散への無関心、無責任を払拭する、平和憲法を持つ国にふさわしい外交・安保政策を打ち出してほしい。

オバマ政権は、ブッシュ前政権よりはるかにましな政権だ。しかし、アフガン支援で「軍民一体」を打ち出しているのは、わが国の実績を上げてきた民間支援の当事者の実感とかけはなれた政策だ。「同盟国」などといいながら、日本政府はアメリカにしっかり情報を提供し、親切な助言をするといった努力すらせず、ただ後をついていくつもりらしい。

核軍縮で声明採択へ=来月の米ロ首脳会談で

 【モスクワ28日時事】ロシアのプリホチコ大統領補佐官は28日、主要20カ国・地域(G20)金融サミット(首脳会合)に合わせて4月1日にロンドンで行われるメドベージェフ大統領とオバマ米大統領の会談で、核軍縮条約と米ロ関係全般に関する2つの共同声明が採択される見通しであることを明らかにした。
 米ロの主要な核軍縮条約である第一次戦略兵器削減条約(START1)は今年12月に失効する予定。両大統領の声明は、これに代わる新たな条約の交渉本格化をうたう内容になるとみられる。
 米ロ関係は昨年8月のグルジア紛争などを受けて、冷戦後最悪の水準にまで冷え込んだが、オバマ政権の登場で改善に向かうとの期待が高まっている。(2009/03/28-21:40)

核不拡散で新構想表明へ  オバマ氏、4月5日プラハで

 【ワシントン28日共同】マクドノー米大統領次席補佐官(国家安全保障問題担当)は28日の記者会見で、31日から欧州・トルコ歴訪に出発するオバマ大統領がチェコの首都プラハで4月5日、核不拡散問題に関する重要演説を行うと明らかにした。新たな核政策構想を表明するとみられる。
 次席補佐官は演説内容を明らかにしなかった。ブッシュ前政権はチェコとポーランドにミサイル防衛(MD)配備を計画、ロシアが反発し、米ロ関係悪化の原因となっていたことから、MDに関する新政権の立場や、米側がMD配備の理由としているイランの弾道ミサイル開発に言及するとみられる。
 オバマ大統領は4月1日、金融サミットが開かれるロンドンでロシアのメドベージェフ大統領と初会談し、米ロの核軍縮問題を協議する予定。「核兵器なき世界」を追求すると公約しているオバマ大統領が米ロ会談を踏まえ、核兵器削減に触れる可能性もある。
 次席補佐官によると、オバマ大統領は2日にサウジアラビアのアブドラ国王、3日にフランスのサルコジ大統領、ドイツのメルケル首相とも会談する。【共同通信】

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2009年3月 8日 (日)

N響神田さんのフルートはアメリカ製

今週の愛川欣也「パックインジャーナル」(朝日ニュースター)は小沢秘書逮捕「陰謀論」に重点があったらしいが、本放送は息子の高校の卒業式、当日の再放送はゲルギエフ~サンクトペテルブルグ・マリーンスキー劇場のストラビンスキー「火の鳥」「春の祭典」などのオリジナルに近い形でのバレエ公演の放送を受信するのを優先して、今後の再放送を見ることに。

世田谷区にある「科学技術学園高校」の卒業式は、どちらかというと勉強の苦手な生徒が集まる学校だが、校長や理事長の挨拶もよく練られた短いもので、吹奏楽バンドもテクニックは別として心のこもった演奏。なかなかテキバキとした気持ちのいい卒業式だった。

春の祭典のあの振り付けや衣装の版は、テレビでも通しで見たのは初めてで、とても興味深く良かった。それにしても、容姿ひとつとってもロシアのバレエはまだまだ層が厚いと感じた。

ところで、日曜に2年前だかのアシュケナージ指揮・N響ロサンゼルス公演のドビュッシー『海』のビデオを取り出して観たが、前の曲との間に現地レストランで寛ぐ団員たちの様子が流れ、フルートの神田さんが「私のフルートはアメリカ製で、私自身アメリカは初めてなので、楽器も初めての里帰り」という話をされていた。

神田さんの演奏は音楽性も豊か、音がとても美しい。あの黒い木管であろうフルートも名器に違いないと思っていたが「アメリカ製」と聞きちょっと意外な感じ。フルートの事情など全然知らないが、てっきりヨーロッパ製か日本製と思っていた。

もちろん、「アメリカ製」であろうといいものはいいのは日本国憲法も同じだ。

そういえば最近、左派系ブログでは森田敬一郎の親米色が少し浮いているような気がしている。

「右」の方にも、ちょっと前の産経論壇内に「親米右翼」と「民族派右翼」の二色の違いが目立ったけれども、森田の場合は「左派だけれども、相手がブッシュ&チェイニーでは全くダメだが、アメリカのリベラルとの積極連携なら志向する親米ハト」という第4の路線なのかなあとも思う。まあ、こうした分類やレッテル貼りよりも、肝心なことは中身だと思うけれども。

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2009年3月 5日 (木)

米ロ関係、ミサイル防衛(MD)に注目

アメリカで政権交代があれば、核軍縮やMDにも良い方向への変化があり得るということをここでずっと言ってきたが、いよいよ実際に動きが出てくることになる。

予定される米ロ外相会談では期限が切れるSTARTⅠに変わる戦略核兵器削減交渉の枠組みについて話し合われるということだし、オバマ大統領がメドベージェフ大統領に「イランの核開発を阻止できれば、アメリカのMD東欧配備は不要になる」という趣旨を含んだ書簡を送ったことが報じられたりしている。

これも世界が正しい軌道に戻るために必要な作業であり、大いに注目したい。これに関わって世界の政策潮流も変化しつつあり、わが国も安倍政権の時にMD開発・配備を決めているわけだが、各党の国防族以外の政治家たちにも(国防族以外だからこそ)、大きな視点から再検討をしてもらいたい。

なお、メドベージェフ大統領の反応についてNHK・BS1の今朝の「おはよう世界」は「MDについて話し合おうというのは評価するが、イランの核開発については取引しない」と要約したが、昨夜の「今日の世界」は「イランの核開発については取引しないが、MDについて話し合おうというのは評価する」と要約していた。前後を入れ替えただけだが、後者の方が米ロ関係全般に前向きな姿勢に聞こえる。

ちなみに、番組で紹介されたロシアRTRのインタビュー映像は「イランの核開発については取引しないが、MDについて話し合おうというのは評価する」という順に言及していた。

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2009年2月 7日 (土)

「欧州MDは対イランで保持、ただしロシアと協議」-バイデン米副大統領のミュンヘン演説

バイデン副大統領はミュンヘン演説で、東欧配備のミサイル防衛構想(MD)はイランに対する抑止として維持する、ただしロシアと協議するという線で発言したらしい。

イランのこととなると、アフマディネジャド大統領がイスラエル殲滅を公言している関係上、「イスラエルの生存」がかかわるということで、アメリカの既成政治家にとっては日本の最近の「拉致問題」どころではない、パプロフの犬のようなと言っては失礼かも知れないが、棒を飲んだような反応になってしまうということは織り込んで観察しなければならない。

「ロシアと協議する」というのは、ブッシュ政権の姿勢とは全く異なりかなり含蓄がある。オバマ政権は、少なくともロシアと軍縮交渉を進めるつもりがあり、MDもカードとして使うということだ。

ミサイルをミサイルで撃ち落とす-それも核ミサイルが相手であれば100パーセントでなければ意味がない-というMD構想が現実的でコストに見合うシステムなのか疑問であり、相互核抑止を不安定にするもではないかという疑問は払拭されていないが、それをさておくとしても、本当に「対イランの核ミサイル脅威」というなら、本質的にはアメリカとロシアがミサイル防システムを共同開発し、共同配備することがベストなはずだだ。

日本の防衛大臣も初めて出席したらしいが、全く存在感がない。「対イランというなら、アメリカとロシアはMDを共同開発、共同配備したらどうか」と、知らないふりをして「王様は裸だ!」に類する演出の発言くらいしたらどうか。これくらい言えば、全体の対話を前に進める触媒くらいの役には立つ。

知ったような顔をして、ずっと黙っていて結局はひたすらにアメリカ追随を続けるだけというのでは、アメリカにとっても、お手伝いないし子分としてはともかく、国際政治上のパートナーとしては、引き続きいてもいなくても同じ存在ということになってしまうだろう。

【以下、毎日新聞記事の切貼】

ミュンヘン会議:米副大統領演説 「協力と協調」よびかけ    毎日新聞 2009年2月7日

 【ミュンヘン(独南部)小谷守彦】バイデン米副大統領は7日、ミュンヘンでの安保政策会議で演説した。オバマ政権発足後、首脳級が国際会議に出席するのは初めてで、オバマ外交が本格スタートした。副大統領はテロの脅威や金融危機、地球温暖化など共通の課題に対処するため「あなたの助けが必要だ」と欧州など各国の協力と協調を求めた。一方、イランの脅威を挙げ東欧ミサイル防衛(MD)計画継続を強調するなど、強い外交姿勢にこだわりも見せた。

 副大統領は「米国は(世界に)関与し、その声を聞き、相談する。世界が米国を必要としているように米国は世界を必要としている」と述べ、イラク戦争開戦をはじめとしたブッシュ前政権の単独行動主義から脱却、協調と責任分担を重視する外交への転換を鮮明にした。

 その一方「米国はより行動するが、パートナーにもより多くを求める」「脅威には一国だけでは対処できない」とアフガニスタンへの軍事・復興支援を念頭に各国に責任分担も求めた。

 対話路線も強調し、「イランとの直接対話を望む」「核開発を放棄すれば報奨がある」と呼びかけた。

 ただ、「軍事力が我々の自由を守ってきた。これは不変だ」と述べ、軍事力行使も排除しない姿勢を明確にした。東欧のMD計画については効果的であるという前提付きで「イランのミサイル能力増強に対抗するため」継続を表明した。これに反発するロシアに配慮し、「ロシアと協議する」と述べた。

 米露間で滞ってきた核兵器削減交渉について「米露で削減のイニシアチブを取らなければならない」と交渉再開への意欲を示した。

 会議には浜田靖一防衛相が初めて出席、駐日米大使に有力視されるジョセフ・ナイ元国防次官補と会談する。

 ◇7日のミュンヘン安保政策会議での、バイデン米副大統領演説要旨は以下の通り。
 オバマ新政権は、他国との新しい基調の構築を望む。過激主義に対し、共通の枠組みでの協力継続を追求していく。私たち米国には、あなたたちの助けが必要だ。キューバ・グアンタナモの(テロ容疑者)収容所の拘束者受け入れを、他国にもお願いしたい。

 米国はイランとの直接対話を望んでおり、その用意がある。イランは圧力、孤立を選ぶのか。核開発を放棄し、テロ支援を中止すれば、意味ある報奨があるだろう。

 私たちは気候変動に対し、積極的にリードしていく用意がある。

 北大西洋条約機構(NATO)とロシアの間に横たわる危険なわだかまりを捨てるために、リセットボタンを押す時だ。もちろん、ロシアの勢力圏拡大など、全てを容認することはしない。MD(ミサイル防衛)についても、ロシアとNATO加盟国との同意の上で決定されるだろう。大幅な核軍縮も目指す。NATOもロシアも、国際テロ組織アルカイダやアフガニスタンの旧支配勢力タリバンを打倒するため、協力していくべきだ。

毎日新聞 2009年2月7日 21時04分(最終更新 2月7日 21時57分)

【以上、切貼】

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【切貼】核軍縮交渉の推進を=米政権に呼び掛け-ロ副首相  時事通信2009年2月7日付

ロシア側からも、現段階では前向きな発言。

【以下、切貼】

核軍縮交渉の推進を=米政権に呼び掛け-ロ副首相   時事通信2009年2月7日付

 【ミュンヘン6日時事】ロシアのイワノフ副首相は6日、独ミュンヘンで開かれている安全保障会議で演説し、第1次戦略兵器削減条約(START1)が年末に失効することを指摘し、「われわれが歩を進める時だ」と述べ、米国に後継条約交渉の推進を呼び掛けた。

 同副首相は「われわれの提案に対し、米新政権の建設的な反応を期待する」と指摘。一方で、米国によるミサイル防衛(MD)東欧配備計画については、「緊張を高める結果にならざるを得ない」と警告し、ブッシュ前政権の核戦略からの転換を求めた。(2009/02/07-06:32)

【切貼ここまで】

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2009年2月 4日 (水)

「オバマ政権が野心的な米ロ核兵器削減交渉提案へ」-歓迎すべきニュース

オバマ政権が「核弾頭80パーセント削減」を目指す米ロ核兵器削減交渉開始を提案するという報道があった。

大歓迎である。広島・長崎に投下された一発の核爆弾の威力をわれわれは些か知っているわけだが、現在の世界の核兵器庫にはその数十万発分という、全人類を何度も絶滅させる核兵器が蓄積されているのである。

これを放置することは、危険なことであり、資源や財源の無駄遣いであり、米ロにとっては核拡散防止条約の「核保有国の軍縮努力」の違反であり、イランや北朝鮮、あるいはイスラエル、インドやパキスタンに「核を持つな」と言うことばの説得力を著しく損なう行為だ。

レーガン政権時代、高齢でタカ派と見られたポール・ニッツェ氏が旧ソ連との交渉でよい仕事をしたように、米政府代表に超党派の人材起用のオバマ政権としては父ブッシュ政権の国家安全保障担当補佐官を務めたスコウクロフト氏などを考えてはどうか。高齢で無理ということでであれば、ロシアをよく知る弟子のライス・ブッシュ政権国務長官の起用だっていいかもしれない。

さて、こうした時に自公連立政権や、次期政権党を狙う野党がどういうメッセージを発信するかにも注目したい。

「われわれは核の傘に守ってもらっているのだから」と無気力、無関心をさらし続けるのか、広島・長崎の被爆体験を持ち、核兵器廃絶を願う国民の意思を体してオバマ政権のイニシアチブや、もしそれにロシアが応えようとするならロシアに対しても、強い、明確な支持のメッセージを出すのか。大いに注目したい。

【以下、時事通信記事の切貼】

米ロ、核弾頭の大幅削減交渉へ=英紙  時事通信 2009年2月4日

 【ロンドン4日時事】4日付の英紙タイムズ(電子版)は、オバマ米大統領がロシアとの間で過去20~30年間で最も野心的な核兵器削減交渉を行う見通しで、両国の核弾頭を80%削減することを目標にしていると報じた。
 同紙が得た情報によると、この交渉が首尾よく妥結すれば、核弾頭はそれぞれ1000個にまで削減されるという。(2009/02/04-09:49)

【以上、切貼】

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2009年2月 1日 (日)

「007/慰めの報酬」-ブレゲンツも舞台に

「笑いが一番」のポカスカジャンの出番を見てから新宿バルト9へ。『007/慰めの報酬』を見る。流石の出来映えを楽しんだ。

「イギリスで007ブーム再燃」という話題を聞いていて、どんな具合なのだろうという関心から出かけたが、海・陸・空全部を舞台に戦うドライな感じのアクションも、中南米の政治情勢や環境・資源問題を織り込んだ舞台設定もなかなかよくできている。左翼政権に対しクーデターを企図する将軍に悪の組織が渡す資金は「ドルが下がっているのでユーロで用意した」と時事的なセリフも織り込んでいる。女性たちも、義に感じて引退先のイタリアからボリビア(ロケ地はチリなど)に同行する三国連太郎と佐藤浩市の中間のような俳優も魅力的。

一番の悪役はまあ、国際環境NGOのリーダーを偽装した秘密結社の構成員だが、米CIAもほとんど悪役。秘密結社の正体について、どうもボンドは映画の最後のほうで掴んだらしいのだけれども、観客にはわからないところが「消化不良感」という批評もあったが、森田としてはむしろ、思い返せば秘密結社の正体が「イスラム」「アラブ」といったものに連なることを示唆するような表現が不自然なほど徹底して排除されていたことに、「良心」とまではいかないにしても制作サイドの明確な意思を感じた。

英国首相に近い政治家やロシアの資源マフィアなど国境を越える悪い奴らの接触の舞台としてオーストリア西部「ブレゲンツ」の湖上オペラ公演が設定されていて、ゴージャスな感じを出している。『トスカ』という演目もシリアスな流れにマッチしていた。その後、イギリスの警護官が墜落死する場面が来る‥

ストーリーの嵐が去った後、本作のボンドガールとの別れ際のセリフは「死者は報復など望んでいない」。エンドロールの最後は「ジェームズボンドはまた戻ってくる」。また見に行くな。これはきっと。

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2009年1月30日 (金)

ラウル・カストロ議長のモスクワ訪問-日本政府の中南米戦略は?

朝のニュースでキューバのカストロ前議長の後継者で、弟のラウル・カストロ議長がモスクワを訪問している映像が紹介されていた。「冷戦終結後はじめて」と聞くと、「キューバ危機」などかつてのソ連とキューバの結びつきを考えると意外な感じがした。

ソ連崩壊で、G8のメンバーに遇されたようにいわば「西側」になったロシアが「後戻りしている証拠ではないか」という見方もあろうが、そういった歴史的な文脈とは切り離した、新しい時代のロシアのグローバルな積極外交という面もあるような気がする。

チャベス政権のべネゼエラへの初の艦隊派遣というのはちょっと極端な例としても、例えば少し前にカトリックの国・ブラジルに本国のテコ入れもあってロシア正教の寺院が建てられ、ロシア系の移民が喜んでいるといったニュースがあった。中南米でもロシア、中国などの資源や貿易をにらんだ外交が活発に展開されているということだ。

わが国の中南米外交は最近どうなのだろう。「新自由主義」で経済が破綻した先輩地域でもあるが、かつては日本からの移民の歴史があり、多くの中南米社会に「日系」という窓が開いている。これはわが国にとって財産だ。

ところが、最近の不況で日本国内各地で日系人労働者が真っ先にクビ切りされ、苦境に喘いでいるという。こういうたいへんな時に思いやりのある振る舞いができるかどうかは、日本政府にとって人道問題であると同時に外交戦略の問題だ。

政治の取り組みに注視したい。

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2009年1月28日 (水)

アル・アラビア、ナブッコ

今日の国際ニュースで印象に残ったのは、ひとつはオバマ大統領が初の海外TVメディアインタビューにアラブ首長国連邦のアラビア語放送局アルアラビアを選び「イスラム世界は敵ではない」と発信したこと。

オバマ氏がそのような考えであることを我々は知っているけれども、イスラム圏の一般の人々にしっかり伝えることの意味は大きい。まずは会うこと、相手のわかることばで発信することから始めなければならない。素早い取り組み、さすがオバマ氏である。

少し興味を引かれるのは、先発のカタール局アルジャジーラではなくアルアラビアを選んだ理由。イラク戦争中、米陸軍から蛇蝎のように嫌われたことでは同じはずだが。アメリカの一般にジャジーラは「ビンラディンの声明を放送する局」というイメージが強いのを回避したのか。

もうひとつは、コーカサス地方の天然ガスをウクライナばかりでなくロシアも回避したパイプラインで運ぼうというEUが推進する「ナブッコ・パイプライン」の国際会議がブダペストで開かれたというニュース。

東欧のニュースをこまめにチェックしていなかったが、ハンガリーは去年までにロシアがウクライナを回避する新しいパイプライン「サウス・ストリーム」を建設することに参加することで合意していたのではなかったか?

1956年のハンガリー動乱でもわかるように、もともと東欧圏でもロシアとの距離感の大きい国だけに、サウス・ストリーム合意や、昨年のロシア軍グルジア侵攻時のポーランドなどと対照的な静かな動きに「対ロシアでいろいろ考えているな」と感じてきたが。裏事情に若干の興味を引かれる。

「ナブッコ」というのは、あのヴェルディの合唱曲「行け、わが思いよ、黄金の翼に乗って」で有名なオペラ『ナブッコ』と関係あるのかしら。そこでのナブッコ王は世界史の教科書に出でくる新バビロニアのネブカドネザル2世で、このオペラでは最後にはヘブライ人たちにひれ伏す話になっているけれども‥

【以下、切抜貼付】

「米国はイスラムの敵でない」=アラブ放送局と初会見-オバマ大統領

 【ワシントン26日時事】オバマ米大統領は26日、就任後初めてアラブの衛星テレビ局アルアラビアのインタビューに応じ、「米国はあなた方の敵ではない」とイスラム世界に呼び掛けた。また、イスラエルとパレスチナの双方に対し、「交渉の席に戻る時だ」と述べ、和平プロセスの再開を訴えた。
 米大統領が就任後、初の正式なTVインタビューにアラブのテレビ局を選ぶのは異例。2001年の米同時テロ後にブッシュ前政権が推し進めた対テロ戦争で、イスラム世界との間に深まった亀裂の修復に全力を挙げる姿勢を示した形だ。(2009/01/27-13:31)

ナブッコ、上半期の合意目標に  脱ロシアのガス計画

 【ウィーン28日共同】天然ガスをカスピ海からトルコ経由で欧州に運ぶパイプライン「ナブッコ」計画を協議する国際会議が27日、ブダペストで開かれ、参加各国は今年上半期の計画合意、調印を目指すことなどを盛り込んだ声明を発表した。
 ナブッコは天然ガスのロシア依存脱却が狙いで、会議はウクライナ経由のロシア産天然ガスの欧州への供給が約2週間停止したことを受け開催された。ただ、80億ユーロ(約9400億円)を超えるとされる建設費用負担や、天然ガスの供給源確定など課題は残されており、計画実現の道は容易ではないのが現状だ。
 会議にはハンガリーのジュルチャーニ首相のほか、欧州連合(EU)議長国チェコのトポラーネク首相、ブルガリアのスタニシェフ首相、アゼルバイジャンのアリエフ大統領らが出席した。
 ナブッコは全長3300キロで、トルコからブルガリア、ルーマニア、ハンガリーを経てオーストリアまでパイプラインを建設する計画。
2009/01/28 09:55

【以上、切抜・貼付】

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「カニ漁船ロシアに拿捕」トップニュース?

朝起きると、NHKテレビの6時のニュースがトップで「鳥取県から漁に出ていたカニかご漁船が27日夜、日本海でロシア当局にだ捕された」というニュースを流していた。

聞いていると「漁の後、ロシア側に流され、戻ったところを拿捕された」ということらしい。拿捕はそう頻繁にあることではないようなので、ストレートニュースとして伝えることは良いと思うが、森田の印象としては「ロシア側に入っていた」のはこちらも認めていることであり、トップニュースで大々的に報じる内容かな?という印象を持った。

昼のニュースで家族の方が「状況が判らないので」と言っていた。森田もコメントするのはもっと状況がわかってからにすべきかとも思う。しかし、ニュースにかかわる人々に「北朝鮮やロシア、中国に甘い報道をしていると、また安倍晋三氏や菅義偉氏がうるさいから」といった惰性が働いていて、排外主義を煽ることへの戒めが欠けていると困るなあという感想。

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2009年1月14日 (水)

冷え込み、ウクライナ経由欧州向けロシアのガスパイプライン

東京はあいかわらずたいへん良い天気だが、冷え込んだ。NHK「おはよう日本」のお天気担当・渕岡さんも屋外中継で「手袋では足りない」と暖かい飲み物のカップを持って登場していた。

ウクライナ経由欧州向けのパイプラインのガスの問題、「再開」と報じられていたのに足踏み。ロシアのお客さんと会う人のために「再開は良かった」と昨夕メモ書いて出していたので、個人的には大いに困る。全く、個人的にだけれども。

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2008年10月 1日 (水)

インドなどNPT未加盟国に対する核技術協力、核物質輸出を禁止する立法を

最近、いちばん頭にきたことは、日本政府が核不拡散条約に加盟することを拒否しているインドを特別扱いすることに賛成したことだ。

核軍縮に事実上背を向けてきた米ブッシュ政権が、ここ2年来、クリントン政権時代の政策を転換してインドとの核協力を進めようとしてきた。そんなことを認めてしまえば、核兵器廃絶へ向けての現実的な手だてとしての核不拡散条約(NPT)体制が根底から崩れてしまうのに、日本政府は「全会一致を要する」、すなわち日本も「事実上拒否権を持っていた」関係国会議で沈黙を決め込み、ウラン輸出国でありながらインドの特別扱いに反対してきたオーストラリアなどの期待を裏切り、ついには賛成した。

アメリカが議会手続きで手間取っている間にフランスがインドと協定を結んだり、ロシアが大きなビジネスをするだろうなどと言われている。

しかし、他の国のことより日本政府だ。外務省の幹部職員や自民党首脳は、天下り企業の都合、正義を曲げてもアメリカに追随することでムラの中での出世と収入を確保する処世術といったことを優先して、ヒロシマ・ナガサキの体験に基づく、核兵器廃絶を希求すべき日本民族の歴史的使命、日本国憲法の理念などは完全に無視しているのだ。

そんなやつらが、勝手に恥ずべき外交政策を展開するときにわれわれは無力か?

やつらに理想を語ってもほとんど役に立たない。やはり、主権者であるわれわれが政府の役人を従わせるには、法律で縛るしかない。

とりあえず、社民党、日本共産党、民主党や自民党の心ある人々に考えて欲しいのは、「NPT未加盟国に対する核技術供与、核燃料の輸出を禁止する法律」の制定だ。やつらは「アメリカやロシアやフランスがインドでビジネスするのを指をくわえて見ているのですか」と言うだろう。日本がそうした法律を作っても、アメリカなどにブレーキをかけられるわけではない。

それでも、日本国民の一部に核兵器廃絶を指向し、そのために核不拡散体制を強化することをまじめに考えている人々がいることをハッキリ示すことが出来るだろう。少なくとも、やつらが、国民の理想を無視して、勝手にこの分野の外交を進めることにブレーキをかけることができる。

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2008年8月26日 (火)

NHK・BS1の『今日の世界』『おはよう世界』を採点する-ロシア・グルジア問題

 北京オリンピックが終わり、NHK・BS1のレギュラー報道番組も帰ってきた。南オセチアを巡るロシアのグルジア本土侵攻に関するニュースも、久しぶりに「特集」のような形でまとめられた。
 
 同じNHK・BS1でも番組による論調の違いがずいぶんある。『今日の世界』(22:15~)は袴田茂樹氏をゲストに迎え、ロシア側から見れば①NATOのグルジアやウクライナへの拡大はロシアにとって脅威、②90年代は経済低迷でアメリカに対して自己主張できなかったがエネルギーの輸出価格の上昇などで大国意識が出てきた、③メドべージェフは権力維持のために国内タカに向け強硬姿勢を示す必要があるという分析を紹介していて参考になる。

 さらに市瀬卓キャスターは、メドベージェフ大統領が休暇中で、プーチン首相がオリンピック開会式で北京にいる時を狙って南オセチアに軍事侵攻すれば、南オセチアを簡単に「解放」(実効支配回復)できると考えたとすれば、その判断は甘く、双方に大きな犠牲を生じた責任が問われるのではないかという視点を示していた。番組全体として、この問題を俯瞰する上で参考になる特集だった。

 他方、同じNHK・BS1『おはよう世界』(6:15~など)の高橋弘行キャスターは25日、26日ともこの問題について市瀬キャスターとは対照的な、浅薄な見方を語っていた。25日に同じ「判断が甘い」ということばを使いながら高橋氏が示唆したのは、今回の事態を招いたのはアメリカやヨーロッパ諸国の「ロシアの本気度」についての認識の甘さにあったのではないかという趣旨の見方だ。
                                             
 さらに26日に高橋キャスターは今回の事態を通じてロシアが得たものは、南オセチアをグルジアから切り離すことであり、さらに、そうではないかもしれないけれどもとしつつ、ロシアの次の狙いは「ロシアを通らずに、カスピ海の原油を黒海に運ぶグルジア領内のパイプライン」を手に入れることかもしれないと強く示唆した。

 『今日の世界』を見た人は、軍事力で問題を解決しようとしたことにそもそもの発端がある。複雑な問題であり、多くの要素に目配りしながら解決を探らなければならないと考えるだろう。『おはよう世界』のみ見た人は「ロシアは信用できない。われわれは甘く見られないように、アメリカを先頭にもっと強硬姿勢を強めなければ」と思うのではないだろうか。 

 『今日の世界』は英BBC、米PBSレベルの視聴価値のある番組、『おはよう世界』は米CNN、米FOXクラス、あるいは産経新聞、小泉・安倍レベルの有害番組であるというのいうのが、この二日間の番組を見ての森田の評価だ。

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2008年8月14日 (木)

ロシア・グルジア衝突の遠因は米ブッシュ政権の単独行動主義にある

 グルジアの南オセチア自治州をめぐるロシアとグルジアの軍事衝突は、EU議長国フランスの調停で停戦の合意を見たものの、8月14日朝、東京で見た各国のテレビニュースはロシア寄りの武装勢力によるグルジアへの報復攻撃が事実上続いていることを伝え、破壊された町から逃れてきたグルジア人の様子を報じている。

 ブッシュ大統領やライス国務長官の大げさな牽制発言や、ミリバンド英外相らの強硬発言とは裏腹に、今のところ米軍などがイラク派兵にも参加した「同盟国」グルジアに直接の軍事支援を行うことにはなっていない。一方、ロシアも西側の牽制に対しては鉄面皮ぶりを示しながらも、かつてソ連が50年代にハンガリー、60年代にチェコを軍事的に蹂躙したのに比べ、トビリシ軍事制圧、親ロシア政権樹立といった挙には出ていない。あたりまえといえばそうだが、メドベージェフ政権がエキセントリックな政権ではないことの証左とも言えるのではないか。

 クシュネル仏外相が、いきり立つポーランドやイギリスの外相をたしなめて「今は誰が悪いと言っているよりも、出血を止めるときだ」と言うのは当を得ており、とりあえずみなその線で踏みとどまっていると言えるだろう。

 ロシアの土産物にマトリューシカというこけし型の入れ子人形がある。大きな人形の中から、一回り小さな人形が出てきて、さらにその中に‥とどんどん小さなものが出てくる。ソ連時代は、一番大きな人形が「ソ連」で、その中に「グルジア」という人形が入っていて、さらにその中に「南オセチア」が入っていた。もうひとつ「ソ連」の中に「ロシア」が入っていて、そのなかに「北オセチア」が入っているマトリューシカもあって、オセチアはその時から南北に泣き別れになって別の人形に入っていたけれども、何せソ連というタガがしっかりはまっていたし、グルジアはソ連の独裁者だったスターリン、ゴルバチョフ政権のシェワルナゼ外相の出身国だったこともあって「ロシア」と「グルジア」の関係も、内実はともかく矛盾が表面化しにくい関係にあった。

 この比喩で言えば、今は別のマトリューシカに入っている南北オセチアが一つになりたいということで、しかも、これはどうもロシアの工作もあって全体として「南オセチアがグルジアのマトリューシカを出て、ロシアのマトリューシカに移りたい」という話しになりかけているから、グルジア政府やグルジアのナショナリストたちにとっては、同じグルジア内のアブハジア自治州の問題もあるし、これは決して容認できないという対立になっているわけだ。

 ソ連が崩壊する中でグルジアは独立を果たした。グルジアの人々の中には「ロシアはもうこりごりだ。これからはアメリカの同盟国となって自由で豊かな国になるのだ」と言う人たちがいて、サーカシビリ大統領や議会の多数派はそうした人々を代表している。一方で、おそらく「同じ国だったんだし、グルジア正教とロシア正教で、古くからビザンツ帝国の仲間じゃないか」という親ロシア派もいるのだろう。そしてどの国とも同じで、本音を言うとどっちに付くかより生活第一という人がその真ん中で一番の多数派なのではないか。ただ、いまのグルジアは郵政民営化熱に浮かされて判断停止していた時のわが国のように、反ロシア派が一時的に大多数を占めているのかもしれない。

 クシュネル仏外相が今はどちらが悪いと言うときではないというのは正しいが、敢えて分析的に言えば、8月8日に南オセチアに先制軍事攻撃を仕掛けたのはグルジア軍だ。南オセチアの市民に1,000人以上の死者が出て、駐留していたロシアの平和維持部隊にも犠牲者が出ている。

 もちろん、わが国がかつて中国東北部(旧満州)を軍事占領するきっかけを作るために、二度までも自らの手で鉄道爆破事件を起こしたように、ロシアの情報機関がグルジアに「先制攻撃」を起こさせるような挑発を工作したり、グルジア軍に工作員を送り込んでいる可能性はあるけれども、いかんせんわが国の真珠湾攻撃と同様に本来「先制攻撃」というのは劣勢になったときの責任論で分が悪い。

 さはさりながら、ロシア軍が報復と称して南オセチアの範囲を越えてグルジア領内に侵攻し、いくつかの町を徹底的に破壊したり、逃げてきた人の口から「若い人々が人質にとられた。女性たちがどういう扱いを受けているかはわからない」という話を聞くと、ロシア当局にも軍や、武装勢力に対する手綱はしっかり握っていてもらはなければ困るぞと切に思う。

 ブッシュ大統領が「グルジアには選挙で選ばれた唯一の政府がある」と強調している。それはその通りだが、パレスチナの選挙でも、ずっと前のアルジェリアの選挙でもアメリカに都合の悪い勢力が選挙で勝ったときには選挙はなかったような顔をする彼らのやり方を知っているだけにしらける面もある。BBCのレポーターもこれには説教くさいと言っていた。マケイン大統領候補が「ロシアをG8のメンバ-にしておいていいのか」というのは先走りで、票目当ての悪しき発言だ。

 これは森田の感想だが、サーカシビリ大統領は若く颯爽としているが、アメリカとの連携にのめり込み、虎の威を借るキツネのようにロシアを挑発する姿勢は賢明なものとは思えない。EUが停戦調停に当たるときに提案した「南オセチアの将来の地位については話し合いで」という一項は頑なに拒否したという。ロシアからの自由を叫ぶ一方で、オセチア人はずっと俺の言うことを聞けと言うのではダブルスタンダードと言われよう。

 アメリカの政権が「有志連合」などと言って「俺の言うことを聞く者だけには特に目をかけてやる」という外交姿勢だったことが今回の事態の根底にある。アメリカに国際協調派の政権が出来て、21世紀初頭の十年弱の軌道を修正する。オセチア問題、グルジア問題の解決はそこからようやく始まるのではないだろうか。

 わが国においても民主党などによって、ブッシュのポチになって尻尾を振って喜んでいた小泉・安倍政権の「米単独行動追従主義」と福田政権の全く不十分な修正に変わる、日本外交のフレッシュな路線が打ち出されることが切に望まれる。

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2008年7月18日 (金)

ロシアが四川大地震の被災学童1,000人をウラジオストックなどに招待

 NHK・BS1の2008年7月18日未明から朝にかけての枠で放送された中国中央電子台およびロシアRTRのテレビニュースで、中国の四川大地震の被災地の学童1,000人あまりがロシア政府の招待でウラジオストックやノボシビリスク州のキャンプ地への3週間ほどの滞在に招待され、17日に出発したという映像を流していた。

 内陸の四川省や陝西省、甘粛省出身の子どもたちは、海を見るのは初めてという子どもたちも多いそうで、張り切って飛行機に乗り込む子どもたちの明るい表情を見てほっとした。ロシア側も「中国料理を用意しているし、水温も海水浴にちょうど良い」と張り切っていた。

 これは良いニュースであると思うと同時に、ロシアもなかなかやるなと思った。ソ連崩壊後の極東アジアは経済停滞やインフラの老朽化などのイメージが強く、廃船になった原子力潜水艦の解体などは日本が資金面でずいぶん協力した。それが、ブッシュ政権のイラク戦争開始も関わるロシア経済の絶好調と、プーチン~メドヴェージェフ政権のAPECのウラジオストック誘致や極東ガスパイプラインの推進など、ロシアは「極東」地区を大いにてこ入れしているわけだが、このニュースは金額としてはそれほど大きな話してないにしても、そうした流れの中でのニュースであるとも受け取れる。

 「ロシアが中国の子どもを大事にするのはあたりまえではないか、ロシアだの中国だのはもともと仲間。ロシア・中国・中央アジアによる『上海協力機構』に見られるように、日米同盟とは別の側だ」という見方をする人がいるかもしれないが、その点、森田のこれまでの経験に基づく見方は異なる。中国のある知識レベルの人の外交面での日本に対する評価を一言で言えば「でも結局はアメリカに従うんでしょ」というものであるとするならば、中国のロシア観を一言で言えば「油断できない」というものだ。

 小さな行事だし、「宣伝」と言えばそれまでかもしれないが、ロシアは極東における中国の対ロシア観を改善する機会をうまく捉えたと思う。ロシアの東アジア政策にプラスになるだろう。それにひき換え、わが日本の政府は、対中国にせよ、対ロシアにせよ、何もよい知恵を出していない。それどころか、何の必然性もないタイミングで「竹島問題」を持ち出して、日韓関係を極端に悪化させることで外交の足下を自ら崩している。

 洞爺湖サミットにはやたらカネもつぎ込み、プレーアップに努めたけれども、自民党政権には外交に関して本当の意味での「やる気」が感じられない。

 四川の子どもたちのために日本政府も今からでも何か考えたらどうか。政府がダメなら、自治体や企業でもいいから。

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2008年5月21日 (水)

クラスター爆弾国際会議-NHK山澤記者のレポートに違和感

おととい5月19日(月)、ダブリンでクラスター爆弾の禁止を目指す「オスロ・プロセス」の最終合意をめざした会合が始まった。小型爆弾を多数ばらまくクラスター爆弾は、一昨年、イスラエルがレバノンに侵攻した際に使用され、戦闘が終わって軍隊が撤収したあと多数残った不発弾の事故で、多くの子どもたちが亡くなったり、手足を吹き飛ばされたりしたことで、かつての「対人地雷」と同様、人道的観点からの廃止論が高まった。

「オスロ・プロセス」は、対人地雷の時のカナダ政府の役割をノルウェー政府が買って出たもので、この「有志」のプロセスには対人地雷の時と同様に、アメリカ、ロシア、中国といった国々は参加していないが、志ある国々の政府と国際NGOが連帯して、具体的な措置を動かし、国際世論も動員することでこうした国々をも動かそうというものだ。

各紙で報じられている通り、一方ではアメリカ、ロシアなど禁止に反対でこのプロセスに参加していない国々があり、その反対にノルウェー、中南米諸国など全面廃止に積極的な国々、そしてその中間に「部分禁止」を主張する英仏独などの国々がある。

それでは、わが国、日本政府の立場がどうかと言えば、朝日新聞2008年5月20日付3面の記事では「日本や英仏独などは‥『信頼性が高く、正確なものは除外すべきだ』という立場を取る」と書いている。さらに毎日新聞の同日付は英独仏は「最新型」のみを例外とすることを主張しているのに対し、日本は現在保有するものを持ち続けることを前提に「不発率が実戦で10%以上もあるとされる現有の『改良型』の堅持を主張している。国連の軍縮関係筋は『日本の主張に同調しそうなのはフィンランドくらいだ。逆に、他の部分禁止派と全面禁止派の溝は狭まっている』」と報じている。

現段階での日本政府は、当時の小渕外相が政治決断する以前における「対人地雷」の時と同様、アメリカにおもねる外務省と、軍事力維持の面だけから廃棄に反対する防衛省が積み上げてきた、いわば霞ヶ関のお役人たちボトムアップで形成された政策を主張することに止まっている。自民党政権が長く続きすぎたせいか、そこに憲法第9条の理想などかけらも見あたらない。福田さんにも、せめて小渕さん程度の大所高所からの政治的な判断を期待したいものだ。

ところで、このことを報じた2008年5月19日放送のNHK・BS1の「今日の世界」(22:15~)において、スタジオからの原稿読み上げと字幕では、わが国が英独などとともに「全面禁止」には反対し、「部分禁止」を主張していることを紹介していたが、現地からの山澤里奈記者のレポートでは、わが国がどういう立場をとっているかという話がスッポリ抜け落ちていた。これでは極右の経営委員長とは逆の意味で「どこの国のニュース番組なの?」ということになってしまう。「合意をめざすノルウェー政府代表が部分禁止を主張しているイギリスやドイツの政府代表を訪ね、妥協点を探っている」というだけの原稿は、「日本は全面禁止に反対している」という事実の印象を、作為的に薄めようとしているのではないかと感じた。

NHKの国際部記者が、外務省の役人や自民党の一部政治家と良い関係を築いておきたいというのは処世術かもしれないが、あまりに「アメリカ政府に最大限に媚びを売り、日本国民にはそのことを最大限覆い隠しておきたい」一部外務官僚に操作されていることが見え見えで、その思惑通りの放送をしているのでは公共放送の使命を果たしていることにならないと思う。

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2008年5月 9日 (金)

メドベージェフ大統領はいつまでもプーチン傀儡ではないかもしれないというNHK石川解説委員の意見

ニュースが胡錦涛主席来日と重なったが、ロシアのメドベージェフ大統領の就任式があった。クレムリンの側で売られているプーチン・メドベージェフのツーショットの肖像を表面に描いているマトリューシカ(次々に中から小さなものが出てくる人形)を見ても、プーチン前大統領がやや前面に出ている様子をテレビでも紹介していた(NHK・BS1「今日の世界」)が、事実上、前大統領の指名による選出であり、「新大統領はプーチン氏の傀儡」という見方が多いようだ。

もっとも、「アジアクロスロード」(NHK・BS1)での石川解説委員は、そういう面は当初は否定できないにせよ、ロシアの大統領権限は極めて強大であり、首相に就任するプーチン氏に対して忠臣とはいえ世代による感覚の違いがあるメドベージェフ氏が、やがてフリーハンドを確保しようとする方向性が出てくるのではないか。その場合に摩擦が起こることも否定できないという見通しを語っていたのが印象に残る。

ブッシュのアメリカがイラク戦争にかまけているうちに、ロシアはチェチェンの人権問題などでの欧米の批判をすり抜け、豊富な産出を誇るエネルギー価格の上昇などで「勝ち組」の様相を示している。APEC開催地に決まったウラジオストックなど極東のインフラ整備も急速に進み始めたようで、温暖化問題でも大きな存在だ。日本の近隣外交という面からも再び目が離せない存在になってきている。領土問題など、歴代自民党政権のようなアプローチではなく、早めに「お互いの主張の真ん中あたり」で折り合うのが合理的な考え方のように思うけれど。

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2007年10月 4日 (木)

プーチン大統領、退任後は首相就任?

10月1日のロシア与党「統一ロシア」党大会に際し、プーチン大統領が12月の総選挙に与党名簿一位で出馬し、来年五月の大統領退任後は首相に就任するという考え方について「現実的」と発言したそうだ。

帝政時代のロシアは「皇位継承順位」について明確な原則が無かったため、結果として血で血を洗う歴史が綴られることになった。ソ連崩壊後の新生ロシアも、高齢・病身のエリツィン氏からプーチン氏への円滑な権力委譲がうまくいったことには、関係者の政治的判断力・能力が高かったこともあるが、偶然に助けられたこともあると思う。

憲法の規定で大統領を続けることができないプーチン氏が、政治上圧倒的に大きな存在であり、国内をまとめていくには同氏の存在が不可欠だという見方は強いのだろう。そのことと憲法上の規定が矛盾する現実iにより「強権的な憲法改正による独裁制の復活」「新しい権力者と、引退したはずのプーチン氏の権力闘争」といった状況が起こることを心配させる。

12月の総選挙に出馬、後継大統領には自らの意のままになる人物を指名し、5月までの大統領任期を最後まで務めた後は首相に就任して実権を握る。このシナリオは、プーチン氏が権力を握り続けることで政治の安定を確保するとともに、手続き的にも合法的、民主的な手段をとることになる。「狡猾」という人がいるかも知れないが、賢明な行き方だ。

「プーチン与党が圧倒的多数の議会」という現状の下では、プーチン独裁のバリエーションと見られても仕方がないが、将来、ロシアの民主主義が成熟すれば、プーチン氏がそんなことを考えているかどうかは別としても、「多元的な議会による議院内閣制」が次第に確立し、幅広い国民の声を汲見上げる民主的なロシアに進む可能性を開くものとも言えるだろう。

もっとも、そうなるにしてもそれはずっと遠い未来のことだ。「ロシアが欧米並みの人権重視の国になり、また外交面でも柔軟な国になってほしい」「なるといいな」という願望を持つのは自由だが、「民主的な手続きを最低限満たしながら、内実は強権的で、外交面でも強硬なロシア」の存在は「現実」であり、日本の対ロシア外交もそれを織り込んだものとしなければならないだろう。「領土問題が解決しないのは、全てロシアがこちらが望むような理想の国になってくれないのが原因だ」というのでは、非現実的な理想主義と言わなければならない。「価値観外交」だの、「平和と繁栄の弧」などと言っている場合ではないのだ。

政治も外交も結果だ。橋本・エリツィン当時のやり方で問題を解決できず、領土が戻ってきていないことについて、それを主導した丹波元大使ら外務省の人々は責任を負わなければならない。タフだがある程度合理性を重んじるプーチン大統領の時代に、だだただ時間を空費した小泉純一郎元首相、田中真紀子元外相といった人々の罪は一段と重い。

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